機動刑事ジバン


「宇宙船」Vol.49(平成元年8月)。巻頭カラー頁で紹介されるのは立体映画「仮面ライダー世界に駆ける」。ブラックとRXとロボライダーとバイオライダーが時空を超えて共闘します。敵はゴルゴムとクライシスの連合軍。高畑淳子も出演しています。仮面ライダー展とか石ノ森章太郎展で上映されるので私も二回観ているのですが、本来は夕張市の石炭と歴史村という観光施設の3D映写機のために作られたものです。
 炭坑で栄えた夕張は閉山とともに他聞にもれず廃れていきました。当時の夕張市長はやり手で「炭坑から観光へ」というスローガンをかかげて、遊園地を併設した炭坑史の展示館を作りました。それが「石炭と歴史村」です。また、市長はそのテの映画が好きな人だったらしく、国内外のB級ホラーやSF映画を招待する「夕張国際ファンタスティック映画祭」を始めました。これに便乗したのが…もとい!協力したのが仮面ライダーブラックでした。たびたびロケに行っています。映画の町夕張を宣伝し、ただで宿泊して帰ってきました。御存知の通り、バブル経済がはじけた後、夕張市はまっ先に財政破綻しました。

「世界忍者戦ジライヤ」の後番組は「機動刑事ジバン」なのですが、この作品はついに宇宙船誌上で特集されることはありませんでした。あきらかにロボコップの模倣で私も落胆しました。そもそもロボコップは、わが宇宙刑事ギャバンの真似でした。ギャバンのデザインにハリウッドがインスパイアされたということ。また、アメリカ側からの許可伺いを東映が快諾したという話に特撮ファンはわがこととして誇らしい思いになっていたのに…「ロボコップ」のヒットを見て、すぐに「機動刑事ジバン」が登場するとがっかりします。ジバン以前のシャドウムーンとロボライダーにもロボコップの影響は反映されていました。「ジバン」以降はずっとロボット刑事ものが続きます。ロボコップ自体面白いと感じなかった私には受難の時代の始まりでした。サイバーコップもロボコップにヒントを得た疑いがあります。

 ロボコップだらけだったあの時代、ディズニー映画が「ライオンキング」というアニメを公開しました。どう観てもわが手塚治虫先生の名作「ジャングル大帝」の剽窃です。全日本人がいきりたったのですが、ご遺族の方は著作権侵害というような問題にはしないと明言されました。これでみな冷静になり且つ感動しました。漫画やアニメは夢の世界なのです。俗世の法律や浮世の金銭に興味を持たないことが創造者本来の姿です。あるいは無頓着をよそおうことが戯作者の美学なのです。戦前、版権の無いのらくろの商品が日本中に出回りましたが、作者の田川水泡先生は周囲が注進しても訴訟問題にしませんでした。子供が喜んでいるのならそれでよいのだと。
……ところが、「ライオンキング」が評判になると、すぐさま「ジャングル大帝」の新作映画が製作されます。主題歌は松たか子でした。日本国民はひっくり返りました。あの清冽な感動はなんだったのか。

 話変りますが…劇団四季のミュージカル「ライオンキング」は登場人物が動物なので子供に喜ばれているらしいのですが、四季さんにこそ、どうせ同じことをするのなら「ジャングル大帝」を題材にして欲しかった。また、タカラヅカさんには「ベルサイユの薔薇」とか「スカーレットピンパーネル」をやるくらいなら「リボンの騎士」を歌劇にしてもらいたいと思います。あと…「機動刑事ジバン」のことを悪く書きましたが、敵の怪人(バイオノイドと呼ばれる)のデザインと造型は秀逸です。生物の特性を抽出し分解再構築しています。生物感の完全表現を目指したゴルゴム怪人の再進化でした。また、機動刑事ジバンを造る博士を演じたのが伊豆肇で、キカイダーファンならニンマリします。

サイバーコップ


 宇宙船バックナンバーですが、また間が空いてしまいました。目的は特撮史というよりも特撮ファンの濫觴胚胎から誕生進化の足跡を辿ることでしたので間を空けると意味が失せてしまいます。しかし、ゴジラがアメリカで作られるようになったりアニメになったりする時代を迎えて、その将来を予測するに、特撮ファンというのはいなくなるのかも知れません……ともかくもVol.48(平成元年7月)。

 密着取材/サイバーコップ。特撮ドラマがフィルムで製作されていた時代のビデオ作品なので、映像表現において技術的限界を露呈する場面も多いのですが、「電脳警察サイバーコップ」はテレビヒーロー史に特記すべき名作でした。
 キャラクターデザインは、のなかみのるさん。この名前をみて大いに首肯しました。かつてテレビマガジンに「宇宙刑事ギャバン」の漫画を描いておられたのですが、その連載第一回の絵が本当にかっこよくて私は一所懸命に模写したことがあるのです。
 主人公武田を演じたのは吉田友紀。人気ドラマ「あばれはっちゃく」をやっていた人で周囲でもあの子役が大きくなったことが話題になっていましたが、いかんせん私はその番組を一度も観たことが無いのでピンときませんでした。登場人物で注目したのは水本隆司演じる毛利。バンド活動と女の子には熱心だけど戦闘では引き気味というサイバーコップ。このヒーローは新しいと思いました。上杉役の千葉美加も良かった。芝居力は無いのですが、不良少女にしか出せない気合いと覚悟が伝わってきました。電脳警察という呼称はエリート集団を連想させますが、なぜか不良とおちこぼれと鼻つまみの集まりで、それがサイバーコップの持ち味なのです。ただ一つの汚点は主題歌を歌っていたのが西川弘志だったこと。西川きよしの息子では礼儀正し過ぎます。どうせなら横山やすしの息子一八だったら面白かったと悔やまれます。たしか、「サイバーコップ」放送中くらいに事件を起こしたはずです。

 当時聞いた話ですが……「サイバーコップ」は東宝とJACの協力で企画されました。ところが、東映が戦隊シリーズと似た番組だということで、JACのかけもちを許しませんでした。圧力に屈したJACは名前を伏せてアクションを担当したといいます。国際的スター千葉真一にしても自由が通らない業界なのかと思いました。

 それで…似た話を思い出しました。極真空手三段の千葉真一が大山倍達の許可を得て支部道場を出そうとしたら、真樹日佐夫に脅されて実現しなかったということがありました。人気俳優が道場を開いたら他の支部の生徒が取られるというのが理由でした。真樹日佐夫は極真会の人だったのですが、もともとケンカは強くてプロレスラーのバディー・オースチンとビル・ミラーに勝ったという逸話が残っています。さらには不死身の喧嘩師花形敬(グラップラー刃牙の怪物花山薫のモデルの人)とやりあって引分けたともいいます。「空手バカ一代」で名前を伏せて語られる東京一ケンカの強い男というのが実は花形敬です。
「空手バカ一代」で一番ケンカが強いのは芦原英幸ですが、実際は理論派で、この先生のところにはストイックな生徒が集まりました。対して真樹先生のところの生徒の中にはクズみたいな不良もいたような記憶があります。真樹日佐夫の名前は全国の不良のアニキ的存在で、言い方をかえれば誰でも受け入れる度量の広い人だったかも知れません。……今回はサイバーコップの話だったのに、またもや脱輪してしまいました。怪獣とか変身ヒーローとか大人げないことばかり書いていますが、ケンカの強い人への憧れもまだあります。

風魔烈風


「忍者キャプター大百科」(昭和51年/エルム)。古本屋で見つけたハードカバーの本。函入りだった可能性もあります。放送データに類する資料は無く、「大車輪花吹雪の術とは、野原に咲いている花にプラスチックを吹き付け手裏剣にして投げる」とか「土忍・黒川団の好きな食べ物はいなり寿司だ」というような劇中設定ばかり詳しく載っています。690円という定価は当時としてはかなり高い気がします。

 忍者キャプターのリーダーにして主人公出雲大介を演じたのは伴直也。宮内洋と並ぶヒーロー役者なのですが、私のお気に入りは潮建志が演った雷忍袋三郎兵衛でした。この人の個性がキャプターの魅力だったと思います。ただし、MVPは(成功したとは言い難い番組にMVPというのはおかしいのですが…)風魔烈風役の堀田真三です。26話で死んだ後、すぐ暗闇忍堂という別の役で登場するのです。たしかに七人ものキャプターを相手にして一歩も引かない迫力のある俳優というのは、なかなかいません。「快傑ズバット」には闇の黒兵衛という役で登場するのですが、威圧感がもの凄く、早川健も勝てないのではないかと心配したことがあります。
「忍者キャプター」の話は今回で終りますので、私の思う特撮悪役ベスト10を発表してみます。
第1位 天本英世 死神博士。受験勉強せずに東大に入り、つまらないからやめたという本物の天才。別にバカでも博士役は演じれるのですが賢い方が説得力があります。戦争末期不本意ながら徴兵され、自分より知能の劣る連中にいじめられた体験から日本の国家体制に恨みを持つ本物の危険人物。こんなすばらしい人が「仮面ライダー」に出演していたのかと思うときあらためて感動します。
第2位 潮健児 地獄大使。「ナショナルキッド」「悪魔くん」から出演している東映特撮最大の功労者の一人。なお、伴さんと潮さんはコロコロ芸名を変えるので要注意。「キャプター」のときは直弥と建志。
第3位 安藤三男 プロフェッサーギル。天本英世をさらに陰気にした感じの陰の極み。水分の少なそうな体質で、まさに血も涙も無い悪。
第4位 宮口二郎 ゾル大佐。栄光のショッカー大幹部一号。本来なら1位にしたいところですが。子供番組のレギュラーがゾル大佐だけというのが惜しい。
第5位 天津敏 甲賀幻妖斎。牧冬吉とともに昭和三十年代の宣広社作品にずっと出ています。また東映任侠映画では高倉健と対等の悪役として出演しています。ちょっと別格で子供番組の人ではない気がして順位を下げました。誰に対しても、ものすごく優しい人だったそうです。しかし、優し過ぎるというのも異常性格ではないでしょうか?逆に正義の赤影さんの人柄についてはあまり良い評判を聞きません。
第6位 高田宗彦 怪人ジェームス、荷蛭妖造博士、ブラックデビルと一つの番組「少年ジェット」の中で悪人を演じ続けた人。堀田真三、天津敏よりすごい。風貌が外人なので映画では外人役として重宝されるも、戦時中は敵国人と見られてひどい目にあったという過去も悪役の勲章。正義の日本人少年対悪い外人の大人というのが絶対的構図。
第7位 堀田真三 レギュラー幹部の役も多いのですが、トカゲロンの野本健みたいな単発ものも強烈に記憶に残る。堀田さんの話から始まったベスト10なのに、この位置…。申し訳なし。
第8位 石橋雅司 学生空手で敵無しになり、牛殺し大山倍達に入門。極真の看板を上げる前の超実戦道場で師範代を勤めたという本当に強い人。別に弱くても悪の幹部は演じられますが強いほうが説得力があります。千葉真一の空手映画で負け役をやってやっていますが本当は千葉真一より強い。言わずもがなながら、同時代のカラテスター、ヤン・シーとかブルース・リーよりも強い。ヒーロー番組にもよく出ているのですが、なぜか当たり役というものが思いつきませんでした。
第9位 汐路章 魔風雷丸。生理的に嫌いな人なのですが、その実績は無視しがたくランクインさせました。たぶん同性愛者だと思う。
第10位 曽我町子 へドリアン女王。この人については何位に入れてよいのか分かりませんでした。

 声だけの悪役なら、第一位は文句なしにハカイダーの飯塚昭三。二位はジェネラルシャドウの柴田秀勝。「太陽戦隊サンバルカン」ではヘルサターン総統の声が飯塚さんでしたが、最終回に出現したその上の存在の役を柴田さんが演じました。柴田秀勝といえば「タイガーマスク」のミスターXの声なのですが、ショッカー幹部のルーツはミスターXだというのが私の持論です。

忍者キャプター


「ジライヤ」と「赤影」について書いたので、その中間点にあった「忍者キャプター」もついでに描いときます。この作品は、なかなか熱心なファンが多いようですが、私はというと堀江美都子のカン高い叫び声の主題歌が耳に突き刺さる印象しかありません。しかたないので特撮本の紹介という怪獣ハウスの主旨に立ち返って、アニメージュコミックス「忍者キャプター」(昭和56年/徳間書店)を読み返してみます。
 キャラクターデザインを依頼された聖悠紀さん本人によるコミカライズですので、原作本と言ってもいいのですが、むしろテレビに忠実に描かれています。桜小路マリアから天堂美樹への花忍交替やキャプター少年隊結成といった現場的事情による設定変更まで漫画に反映されています。一応の原作者は八手三郎。有名過ぎる架空人物。ウルトラマン関連の音源を購入すると著作権が円谷音楽出版玉川静となっています。この玉川静というのもあやしいなと思ったことがありました。円谷家と玉川学園は深い縁があります。と思っていたら「トリビアの泉」にウルトラの挿入歌ネタの証言者として出演されていました。実在の人でした。近年、疑ったのは藤林聖子。平成ライダーシリーズの主題歌と挿入歌の作詞をずっと一人で手がけています。これも八手三郎みたいに複数の人間のペンネームではないかと思ったら実在人物でした。過激な歌詞を書かれますがふつうな感じの女の人です。

 アニメージュコミックス「忍者キャプター」は古本屋で見つけました。奥付を見ますと放送当時の昭和51年にテレビランドとテレビマガジンに連載されたものを纏めて5年後の昭和56年に刊行されたことがわかります。買ってトクしたと思えるのは2巻の最後に、テレビマガジン昭和52年4月増刊号に発表された「快傑ズバット」が収録されていたことです。テレビマガジンに「快傑ズバット」の漫画が載ったのはこの一回だけです。テレビランドの方には連載されていました。漫画は細井ゆうじさん。
 こと「ズバット」に関してはテレビランドが力を入れていました。テレビでは語られない早川健の過去なども詳しく書かれていました。今年、佐藤琢磨が日本人として初めてインディ500レースに優勝したと騒いでいましたが、40年前、早川健がインディ500で優勝しています。これが日本人初ではないかと思います。

陽炎


「テレビジョンドラマ別冊 仮面の忍者赤影」(昭和61年/放送映画出版)。表紙になっている赤影の写真は宇宙船Vol.11の赤影特集や講談社特撮ヒーローマガジンの赤影の表紙にも使われました。「赤影」のスチール写真は少ないのかといえば、けっしてそんなことはありません。ただ、当時のことですから白黒フィルムで撮影されていたのです。このテレビジョンドラマ別冊には他の本で見ることのない貴重な現場写真が沢山収録されています。
 写真集のような本ですが、一つだけ「歌舞伎と赤影」と題した短い試論が掲載されています。前回予告して、私が今回書きたかったのは、この小論の受け売りで、「赤影」をより娯しむためには歌舞伎を識るべし。特撮ファンのたしなみとして歌舞伎鑑賞の推奨論だったのですが、自身がさほど歌舞伎に詳しくないことに気づきました。「赤影」について書こうとすると毎度しりごみしてしまいます。稀代の傑作「仮面の忍者赤影」について、いまさら言うべきことは無いのかも知れません。

 小心者のヘタレな私が勇気をふりしぼり、全特撮ファンを向うにして(なおかつ匿名のブログで…)特撮ヒロインナンバー1はアンヌではない。菱見百合子ではないと言い続けてきました。ナンバー1は「赤影」の陽炎です。以下、ぐだぐだとそう思う理由を述べていきます。
 ヒロインが最高であることの前提条件はヒーローが最高であることです。最高の男を相手にした上で負けない女でなくてはなりません。世間の例として、日本一かっこいい男キムタクの嫁があれでいいのかとか、世界最強の高校生範馬刃牙の彼女があんなくだらない女でよいのかと他人事ながら不満になります。そういえば、我々の世代はコロコロコミックやテレビくんに洗脳されて、セブンがウルトラ最強のファイターという認識を刷り込まれてきましたが、虚心坦懐にファーストセブンを見直すと、モロボシダンというのは、けっこうたよりない男です。アンヌみたいなぬけた女がお似合いかも。なるほどベストカップルでした。
 赤影は完璧に近い男です。この男に何をもって対抗するのか?忍術者として同等の技倆を有するというキャラクター設定も考えられますが、それではストーリーを破綻させます。電波人間タックルなど失敗例は枚挙に暇がありません。陽炎はといえば戦闘においてはほとんど無力です。
 地位や財産でヒーローを上回るという手段もあります。「あしたのジョー」の白木葉子のパターンです。しかし、地位ということで見れば影一族の頭領の家に生まれた赤影は、青影の姉陽炎より身分が上です。赤影と、青影、白影は仲間ではなく主従なのです。
 劇中、陽炎に付与された特性は盲でした。怪獣の胃袋の中も透視する眼力を持つ赤影に対して、陽炎は盲。サンヨー電機がスポンサーになりカラーテレビを普及させるために作り上げられたという極彩色の世界にあって陽炎は盲なのです。色即是空。無限変幻多彩の赤影忍法も亦空とする絶対真実。また、盲であるということは、男ですら見とれてしまう赤影の美しい顔が見えないのです。もったいないと思うのは凡俗の妄念。盲の陽炎にして、外見に迷わされず赤影の美しい心を知ることができるのです。
 その最終回。超人、怪人、怪獣入り乱れての無差別級バトルロイヤルを勝ち抜いて忍者の頂上を極めた赤影は、チャンピオンにのみ許される黄金の仮面を着けます。しかし、そこは魔界の入り口であり到達点でありながら通過点です。これより人の住む場所まで降りてきて武芸の道は完成します。赤影を、その場所まで間違いなく導いてくれるヒロインこそ陽炎だと思うのです。
プロフィール

ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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