伊賀電


 現時点でも降り続いている大雨で、生家の近隣(京都府)が被災したようです。片づけの手伝いに帰らなければならないかも知れません。それにちなんで、滅びた故郷の星を再建するために帰って行った男「宇宙刑事シャリバン・SEKISHA!」(昭和60年・徳間書店)。宇宙船文庫かと記憶していたのですが、アニメージュ文庫でした。このレーベルで実写を取り上げるのは異例だったと思います。私は特撮ファンなので気がつかなかったのですが、アニメファンからも注目されていた作品だったのでしょう。

 シャリバンはコードネームで本名は伊賀電。おそらく伊賀忍者の子孫という設定が企画段階にあったと推察できます。前作の主人公ギャバンがバード星人と地球人の混血児だったので、続編の主人公は地球人にするはずでした。それも、森に住んで、樹木やウサギを愛するコテコテのザ・地球人。メインライターは上原正三さん。
 はじめは、基本設定に則って書いていたのですが、途中で、地球人ではないかも知れないことを示唆します。そこから物語は急展開を見せます。伊賀電はなんと、大昔に滅んだイガ星人の末裔だったのです。宇宙刑事の職責に、イガ星の謎解きがサイドストーリーに加わりました。最終回は銀河連邦警察に依願してイガ星目指して旅立って行きます。
 イガ星とは、あきらかに、上原正三さんの故郷…沖縄です。

 上原正三さんの沖縄への思いは、そのまま畏友金城哲夫への思いです。死んだ友との約束のために戦う男の物語「宇宙海賊キャプテンハーロック」は、上原正三のアニメにおける代表作です。ハーロックもまた、地球に失望し宇宙へ漕ぎ出しながらも、故郷への思いを断ち切れない男でした。
 キャプテンハーロックの失望は、地球が繁栄し人々が堕落したことでした。上正さんも沖縄に失望していました。
 上陸してきたアメリカ軍に対して、沖縄の人は女学生から老人まで、苛烈な抵抗戦を繰り広げました。県民の四人に一人、十五万人が戦死しました。ところが、戦闘が終結すると、敵の宣撫工作にころっと恭順してしまいました。これを賢明と言うのか、それとも卑屈と見るのか、あるいはテーゲーなのか。
 上原正三さんは、沖縄の現状現実を直視しつつ、大昔、薩摩の侵略に空手で抵抗したという、日本の歴史教科書に書かれない琉球の英雄達に理想像を結びました。金城さんにしても、沖縄というより琉球王国にアイデンティティーをもとめていました。

 松本零士先生もまた、少年の目で日本民族の勇敢さと卑劣さを見つめていました。勇敢な日本人は戦って死に、卑劣な者だけが生き残ったのです。堕落した日本人に失望し、かつて存在したはずの真の男の姿をキャプテンハーロックに託しました。

 さて、ここで私が出てきます。私もまた、故郷を無くした男、祖国に失望した男、シャリバンやハーロックに強く共感しました。では、どれほどの体験があったのかというと、通っていた小学校の木造校舎が取り壊されコンクリートになったのです。はげしくがっかりしました。
 明治時代に建てられて百年経った校舎には、絹産業で町が栄えていた頃の栄華と戦前の記憶が刻まれていました。失望させられたのは、その価値を理解せず、子供も大人もコンクリートの新校舎を喜んでいたことです。これを見て暮らすくらいなら、町を出ようと思いました。星のかけらになろうとも!異土のかたいとなるとても…帰るところにあるまじきと。特撮ファンになった理由は時代の流れに乗れない性分からかも知れません。

 いまは大阪に住んでいますが、故郷に失望しながらも郷土愛を持つ男というキャラクターは続けています。人工的に小ぢんまりと整備されていく町にがっかりしながら、ふるさと納税したりしています。
 ちょっと前、駅前の再開発計画にひっかかり、家を立ち退きさせられた同級生がいました。特撮ファンの私を笑わせようと、
「霧の童話みたいやったで」
 と語りました。「怪奇大作戦」のこのエピソードも上原正三さんの脚本でした。ダム計画で沈む村の住人が工事を阻止しようと叛乱を企てる話です。私は、
「ほんで、立ち退き料なんぼもろたん?」
 と、キャプテンハーロックらしからぬことを聞いてしまいました。
 雨の中で昔のことを思い出しています。
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ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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