萩原佐代子


 宇宙船文庫「スーパーギャルズメイト37」(昭和60年1月)。「バトルフィーバーJ」から「宇宙刑事シャイダー」までの東映特撮番組に出演した女優の図鑑。これを見て懐かしいと思う人もいるのでしょうが、我々特撮ファンはこの本に載っている人々を忘れたことはありませんので、特別な感懐は起こりません。続巻も増補版も出ていないので、年を経るごとに資料性が半減し、いまとなっては意味不明な本。
 萩原佐代子を描いときました。ウルトラマンと戦隊両方に変身した女優はこの人だけのはずです。

「超光戦士シャンゼリオン」(平成8年・東映)という番組がありました。井上敏樹脚本、長石多可男監督。現在に続く平成ライダーの原点となった作品です。フィルムからビデオ撮影に移り変わる技術的端境期で、CG映像がいま観ると辛い。無論、それは納得するしかないのですが、わからないのが女優の顔です。最近の平成ライダーに出てくる人と比較して圧倒的に地味です。
 遡って、やはり井上敏樹さんの脚本で「鳥人戦隊ジェットマン」(平成3年)に出てくる二人のヒロインも貧相な顔をしています。ブラックコンドル結城凱は女好きのワルというキャラクター設定だったのですが、ちょくちょくひっかける女が女優とは思えない顔をしていました。裏方さんか?アクションスタントの人か?いやいや、凱さんくらいのアニキともなると我々とは感性が違うのだろう……と思っていたら、結城凱の死後を描いた「海賊戦隊ゴーカイジャー/翼は永遠に」(平成22年・井上敏樹脚本)では、誰が見てもすごい美人の演じる女神をだまして天国で酒を飲んでいました。客観的な結論として…ある時期の東映特撮ヒーロードラマにキャスティングされていた女優は地味で貧相な顔をしていたとは言い切れるのです。

 「鳥人戦隊ジェットマン」は本当は女優が重要なドラマでした。番組開始前の構想として、井上敏樹さんは恋愛をテーマにしたいと意気込みを語っておられたのです。若い男女が出ていながら、いままで恋愛が描かれなかったことが不自然だったと。
 では、誰が恋愛を書かなかったのかというと、お父さんの伊上勝さんです。けっして堅物ではなく、家に愛人を連れてくるような人でした。それでも、子供番組の中では、ヒーローは女を好きにならないという型をつらぬきました。

 ならば、その型を作ったのは誰か?日本独自のものという気がします。アメリカのヒーローにはだいたい恋人がいます。嵐寛壽郎の鞍馬天狗。この人だと思います。長くシリーズを続けているとマンネリになってきて監督やスタッフは、恋愛やラブシーンを入れたほうが映画に深みが出ると説得するのですが、葉村家の御大はカメラが回ると女優には見向きもしません。周囲の人には、それが不思議でした。アラカンさん…私生活では、女に惚れて、だまされて、フラれて、全財産渡して、淋病もらって、睾丸抜いて、二階の窓から逃げ出して、電信柱から落ちて…というようなことを三百回繰り返して結婚五回(重婚期間あり)。

 「鞍馬天狗」の名前が宮内洋さんの芸談に出てきたことがありました。この人は、ファンにたいして、けっして奥様や子達の話をしません。改造人間は結婚して子供をつくらないのです。そして、妻子や恋人のために能力を発揮すると、正義に翳りが出るおそれがあります。日本のヒーローは、鞍馬天狗以来子供をつれていますが、血縁関係はなく、ほとんどがみなしごです。みなしごと言えばタイガーマスクですが、社会福祉をテーマにしたというより、鞍馬天狗伝来のヒーローの型を踏襲しただけです。

 最近の仮面ライダーやウルトラマンは恋愛も結婚も解禁されています。しかし、鞍馬天狗が世間的幸福を手にしてはならない本当の理由がありました。それは、大勢の人を切り殺してきたことです。天の摂理においては、殺してよい生き物は自分が食べる分だけで、殺してもよい人間は自分を殺しに来る者だけ。怪獣や怪人を殺すことは人間社会の正義であっても、自然界の掟には合致しません。私怨で殺すより正義のために殺すほうが罪は深いのです。その罪を一人で負う人がヒーローです。ジェットマン結城凱は天国へ行ってはならなかったのです。

 いま、ふっと思ったのですが、伊上勝(本名・井上正喜)の伊は、不世出の脚本家と呼ばれた山上伊太郎の伊ではなかったのでしょうか?鞍馬天狗第一作の脚本を書いた人です。
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必殺仕事人

鞍馬天狗が世間的に幸福を手にしてはいけない理由に大勢の人を斬り殺してきたことが書かれてありましたが更に殺してもよい人間は自分を殺しに来るものだけとも書かれてあり、それは鞍馬天狗と同じ時代劇の「必殺仕事人」の中村主水(藤田まこと)にも当てはまります。
中村主水は「必殺商売人」において妻のりつが待望の子供を身ごもり、ようやく跡取りが出来て喜んでいましたが最終回で死産という悲しい結末となりました。中村主水は、これまで裏稼業において悪人とはいえ多くの人の命を奪った因果が自分の子供に報いてしまったという気持ちが現れていました。
ヒーロー番組では「鳥人戦隊ジェットマン」の結城凱も最終回で死ぬ運命となったのは、これまで平和を守るためとはいえ敵のバイラムの命を奪った因果が彼自身にあのような末路となったのでしょうか・・・?

ジェットマンと仕事人

仕事人はお金をもらって、悪人ながら自分とは利害関係の無い者を殺します。正義感とともに罪悪感が常にあり、地獄に堕ちる覚悟を持っています。

もっと罪が重いのは、法律に準じて人を殺し報酬を受けることです。ゲシュタポも新選組も法に基づいて人を殺しました。軍人もそうです。結城凱は本来自由人だったのですが、なりゆきで職業軍人になります。そして、人類が存続するために他種族バイラムを全滅させました。このことは感謝されこそすれ咎められることはありません。
しかし、結城凱は死にます。それは、その手で葬った者達への償いであり、同罪である竜と香の幸福と引き替えに命を差し出したのです。これが私のジェットマン最終回の解釈で、私の考えるヒーローの美学です。

サイボーグ009等を読むと、石ノ森章太郎先生のヒーロー像はさらに先鋭的です。人間の自由と正義を神が制限するのなら、その神に戦いを挑んでゆきます。もっとも、これはキリスト教国にアジア民族が支配されたことへの反抗だったかも知れません。

必殺シリーズは詳しくないのですが、仕事人の子孫達が現代を舞台に活躍するスペシャルを観たことがあります。とゆうことは主水にも子供が出来ていたのではないでしょうか?
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ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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