ウィンダム


 上原正三のウルトラセブンについて考えるつもりだったのですが、宇宙船文庫「24年目の復讐ー上原正三シナリオ傑作集ー」(昭和60年3月)には、「セブン」からは三本しか選ばれていませんでした。
「悪魔の住む花」お話も映像も面白かったのですが、これはアイデアとして「ミクロの決死圏」に永久に勝てない悲しさがあります。
「1万5千人の侵略(あなたはだあれ?)」地球人がすべて、昼に活動して夜に寝ていると思って侵略計画を立てたフック星人の事前調査は、メトロン星人より杜撰でした。
「300年間の復讐」一旦、ボツになったあと、実相寺さんに見せたのですが、やっぱり理解されなかったというシナリオです。上正先生には思い入れが深いらしく、セブンのために書かれた他のOK脚本、NG脚本を押しのけて、この文庫にも入っています。そして平成5年になりNHKドラマ「私が愛したウルトラセブン」の中でついに映像化されるという執念のシナリオです。文字でしかなかったトーク星人も実体化しました。

 今回のイラストはそのトーク星人を描こうとしたのです。アンヌを妹とまちがえて拉致したのですから人間と同じ顔だと思いますが、NHKドラマ中に登場するトーク星人はゴース星人とフック星人を併せたような顔でした。成田ー池谷ラインから外れないものをという忖度だったのでしょう。森の中の洋館に住んでいると書かれてあるので、貴族のイメージがわきました。馬に乗せたくなったのでメカウマのデザインくらいは自分で考えてみようと思ったのですが、成田ー池谷ラインに沿ったものをと忖度していたらウィンダムみたいになってしまいました。ウィンダムにトーク星人を乗せるのは不自然なので、そのままウィンダムにしてしまいました。今回は最初からグダグダです。

 グダグダなまま、表題作「怪奇大作戦/24年目の復讐」を見てみます。戦争中、爆雷を受けて沈んだ潜水艦の中で生きていた兵士が、薄い酸素でも呼吸できる水棲人間になり、横須賀に駐留する在日米軍に復讐するという話。水棲人間の謎解きよりも、戦争を忘れてはならないという部分にテーマが置かれています。水棲人間の役は天本英世。天本さんも徴兵されましたが、内地にいたので実戦経験はありません。
 日本の女とデート中のアメリカ兵が狙撃されます。沖縄出身の上原さんが見せつけられた光景だったと思います。その関係が恋愛であれ売春であれ強姦であれ、日本男子としては面白いはずはありません。なお、この時点で沖縄はまだ返還されていません。

 そして、この5年後、フィリピンのルバング島で小野田寛郎少尉が発見されます。その任務は残置諜報員。かりに今回の戦争で負けたとしても、現地情勢の調査を続行し、日本軍が再びルバング島に上陸したときに情報を提供し協力せよという命令。補給が断たれたら自給自活。連絡系統が断たれたら独断専行。選抜されて中野学校で教育を受けたというくらいですから、かなり優秀な軍人だったことは間違いありません。水棲人間ではありませんが、30年間も緊張状態にあると体質も変化したそうです。夜でもジャングルの中で行動できるようになるし、凄いのは、飛んでくる銃弾の軌道が見えるようになったといいます。その線を避ければ弾に当たらないのです。

 昔の上官だった人が出て行って命令解除を通達し、小野田元少尉はようやく帰国します。日本国民はとまどいました。一人で戦争を継続し、日本軍の再起を信じていた小野田さんから見れば、戦後生まれも含めて全員裏切り者です。
 元中尉坂井三郎さんも動揺しました。プロフェッショナルの軍人として旧敵アメリカ軍からも尊敬され、水棲人間がつけ狙った横須賀の在日米軍の司令官も、着任時必ず表敬訪問するという人です。こんな理想的な関係すら裏切りになるのか。「丸」編集長高城肇さんと対談した当時の感想が「続々・大空のサムライ 撃墜王との対話」(光人社)に収録されています。
 小野田さんの言い分には非の打ち所が無いが、それでも疑問が残る。命令だけで三十年間も戦い続けられない。本当のことを黙っている。日本軍を裏切り、部下を殺したフィリピン人への復讐ということなら納得できると坂井三郎は言うのです。

「300年間の復讐」「24年目の復讐」「復讐鬼ヤプール」…上原正三は復讐の作家とも呼ばれています。  つづく
 
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わたしも読み返しております

こんにちは。

ハヌマーンさんの更新に合わせるかの如く先日の金城さんのシナリオ集に続いて上原さんの本も本棚から引っ張り出してきて再読しております(^_^;)

今回こうして続けて読んでみるとなんとなく上原先生のホンの方が自分の好みに合っているような気がしましたね~。

で、「300年間の復讐」なんですが、うろ覚えで恐縮なんですけど確かかなり前の「テレビくん」で居村眞二さんがコミカライズ版を描かれていたのを読んだ記憶があります(単行本もそのときのテレビくんも手許に無いので確証は無いのですが)

あのときになんだか作品供養じゃないけどNGシナリオがこういう形で日の目を見たのはよかったなあという気分になったような気がしています(ああ、でもトークを居村さんがどう描いたのか、これも全然憶えてないんですよね・・・)

悪鬼

ありました。思い出しました。

「てれびくん」では読んだ記憶が無いので、居村眞二先生の単行本に収録されていたような気がします。大都社の「ウルトラ超伝説」だったか?……私もボケてきているのですみません。「私が愛したウルトラセブン」に出なかった巨大悪鬼
も描かれていました。

居村先生の「決戦!ウルトラ兄弟」を学校で没収されたことをついでに思い出しました。
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Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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