ノンマルト


 前回、宇宙船別冊ウルトラブックスを出してしまいましたので、宇宙船文庫も取り上げて、より完全を期します。「ノンマルトの使者ー金城哲夫シナリオ傑作集ー」(昭和59年9月)。巻末の竹内博さんの解説によると、昭和52年にアディン書房より「金城哲夫シナリオ選集」が上梓されていたのですが、そこには円谷プロ作品が三本しか入っていなかったそうです。朝日ソノラマの「金城哲夫シナリオ傑作集」は全部円谷プロ時代の仕事。「WOO」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「マイティジャック」「戦え!マイティジャック」「怪奇大作戦」。「WOO」はもちろん未映像化企画なのですが、「セブン」の未使用シナリオ「認識票No.3」もおさめられています。登場する怪獣はジャッキー。池谷仙克さんの気持ちになり切ってデザインを考えてみると愉しくなります。『う〜ん、成田さんの物からあまり離れてはいけないし、かといって同じようなものでもいかんし、どないしたもんや……』

 表題作「ノンマルトの使者」。監督の満田さんと酒を飲んでいて思いついた話だといいます。かつて地球に先住民がいて、後発で進化した人類こそ侵略者だったとしたら?宇宙からの侵略者に毎週攻撃されている地球人が、侵略者でもあったという視点は、満州やベトナムに進出した結果、世界戦争に敗れた日本民族としての記憶からの発想です。
 太古の昔、剽悍で狡知に長けた人類に圧迫されたノンマルトは海に逃れ、海底に独自の文明を築き上げました。ところが最近、地上にあふれた人間は、海に居住地をもとめて海底開発計画を進め始めました。おとなしいノンマルトも、ついに生存権を賭して人類に逆襲してきました。
 壮大無辺なアイデアです。30分では収まりません。いや、収拾はついたのです。ノンマルトを全滅させるという一番安易で合理的な方法で。ノンマルトを地球史から消してしまいました。金城さんも満田さんも、こんな結末になるとは、最初、考えていなかったのではないでしょうか?人類の目指すべき理想を提示するのが「ウルトラセブン」の方向性だったはずです。

 物語の中で決断するのはキリヤマ隊長でした。海底都市を眼前にして、知性を有する地球生物である可能性は考えたのですが、戦闘を続行します。最前線の指揮官として、この決定はまったく正しい。状況を迅速に終了させ部下の損耗を少なくすることが第一義です。じっくり考えたとしても、海上交通、海底資源、水産物の供給をノンマルトに遮断されたら日本人は滅亡するしかありません。
 ならば、ウルトラ警備隊のノンマルト殲滅作戦に加担したセブンの決断はどう判定されるのか?ウルトラセブンは地球民族同士の戦争に立ち会った第三者です。

 本質論として、ウルトラセブンは最初から最後まで明確なものではありませんでした。ウルトラ人としては青年期ですが、年齢20000歳。20000年分の知識と経験があります。人類が宗教や哲学の体系を完成させるより長い年月を生きています。身長40メートル。大脳容積は人間の10000倍。戦闘力は地球防衛軍並かそれ以上。これは、もう神です。しかし、ウルトラセブン=モロボシダンが老成した人物として描かれていたかというと、地球人が造った戦艦マックスを見て「かっこいいなあ。乗ってみたいなあ」と目をキラキラさせている、むしろ幼稚なやつです。北海道出身のフルハシとか九州出身のソガよりも純朴な青年です。
 モロボシダン=ウルトラセブンとは誰だったのでしょう。ゴジラを見た三島由紀夫は、あれは戦争で死んだ兵士の霊が日本に復讐に来たのだと思いました。セブンもやっぱり戦争で死んだ兵士の魂のような気がします。ゴジラとは逆に、恨みを残さずに死んでいった、ひたすら純粋で勇敢な若者が日本を救うためにウルトラセブンとして甦ったのだと思えるのです。おそらくアメリカ兵もドイツ兵も勇敢であり純粋だったと思いますが、セブンは日本人にちがいありません。出撃直前なのに友達と肩を組んで何の疑問も無くニコニコしている若い特攻隊員の写真の顔がウルトラセブンです。

 最終回「史上最大の侵略 後編」中のソガの科白。「ダンは死んで帰っていくのだろうか。だったら、ダンを殺したのは俺たち地球人だ」これは金城さんのシナリオの中に書かれていません。どの段階で出てきたのかわかりませんが、つき刺さるような科白です。純粋で勇敢な青年達を殺したのは、軍部とか資本家とかいう実体のあやふやな他者ではなく、全ての生き残った日本人です。

 次回は宇宙船文庫「24年目の復讐ー上原正三シナリオ傑作集ー」を取り上げます。また、ウルトラセブンの話になると思います。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

こんにちは。

過去何冊も処分してきた特撮本ですが、さすがにこれは手元に置いてありました。シナリオ集というのは或る意味ドラマの設計図みたいな物ですし、読めば読むほど完成映像とは違う面白さがありますよね(「狙われた街」みたいに全然別物になっちゃうケースもあったりしますし)

それと上原先生の本もまだ残っていたので次回ハヌマーンさんの更新が楽しみです(^^)

宇宙船文庫

昔、この本持っていたというかんじで懐かしがっていただければと思います。

上原正三シナリオ傑作集はいまから読み返します。「MJ」の準備で金城さんが忙しくなったので「セブン」の文芸は上正さんが仕切っておられたはずですが、この文庫には三編しか入っていませんでした。「地底GO!GO!GO!」すら入っていませんでした。記憶違いでした。

人間が悪役となった作品

「ノンマルトの使者」はシリアスなストーリーで地上の人間が悪役の立場となり、この作品に登場した謎の少年は、この世の者ではなく3年前に既に亡くなっていたというゾッとするラストでしたが、この「ノンマルトの使者」と同じ様に人間が悪役の立場となった作品が「帰ってきたウルトラマン」の「怪獣使いと少年」でした。
この二つのストーリーは視聴者が救いようのない、やりきれない思いをさせられる内容で人間の歪んだ心や醜さが大いに見せつけられた気がします。

怪獣使いと少年

「怪獣使いと少年」。人間と一口で言うけれど、様々な人種民族がいて、差別しあい対立しています。国家間、宗教間で戦争も絶えません。この愚かで醜い種族を、はたしてウルトラマンは救済する理由があるのか?絶望的な問いかけなのですが「怪獣使いと少年」は私の好きな回です。ワクワクしてくるのです。

No title

早々の返信ありがとうございます。
「怪獣使いと少年」のイラストもいつか描いて欲しいです。それはハヌマーン&さとるさんの気が向いた時でよろしいですので別に急ぐ必要はありません。
前回、書き忘れましたが暴徒と化した群集が悪魔のように見えたのとは対照的にパン屋のお姉さんが天使というか女神のように見えました。

キミがめざす遠い星

いま「上原正三シナリオ傑作集」を読み返しているのですが、「怪獣使いと少年(キミがめざす遠い星)」も入っています。これは避けて通れない気もしてきました。佐久間良を追いかけてきて、パンを売ってやるのは脚本ではパン屋の娘ではなく、坂田アキです。
プロフィール

ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

カテゴリ
リンク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブログランキング

FC2Blog Ranking