毒蝮三太夫

「宇宙船」Vol.68(平成6年5月)から、もう一本。「ウルトラセブン/太陽エネルギー作戦」。「ウルトラセブン」といえば、シリアスでハードなSFドラマ。ウルトラシリーズ最高傑作、とりもなおさず、特撮ファンにとって価値基準の最上位の聖域……であると、同時に『ウルトラセブン』といわれれば、なにかほっこりするものがあります。ずっと前ですが、ウルトラセブンのパチンコ機のテレビCMを見て、私の母が「ウルトラセブンは子供に良いことを教えなあかんのに、パチンコみたいな悪いもんになったらあかんやん」と憤慨していました。この感覚です。ふと考えたら、その母親よりもセブンの顔のほうがより強く深く心に刷り込まれている気がします。おもちゃのアヒルについていくヒヨコのように…ほっこりもするはずです。
「ウルトラセブン/太陽エネルギー作戦」は、ほっこり系のセブンです。通産省の太陽エネルギー利用促進のPRドラマ。フルハシがウルトラ警備隊の隊長。アンヌは退官してお母さん。このアンヌの住んでいる家が振興協会推薦の理想のソーラーハウス。電気もお湯もタダ。二酸化炭素排出ゼロ。年中快適の良いことづくめ。久しぶりに現れたセブンも窮地に陥るのですが、胸のソーラーパネルで太陽エネルギーを取り込んで大逆転。宿敵エレキングを倒します。万歳万歳、よかったよかった、ほっこりほっこり。
番組の最後に「提供 通産省」とテロップが出るのですが、そのとき私が思ったことは、ウルトラマンの版権は国が管理すべきではないかということでした。円谷プロが版権に関して急に厳しくなってきたのです。漫画のコマにウルトラマンを描いたり、怪獣を造って売ることを取り締まり始めました。鳥山明先生がペンギン村の住人の中にちっちゃいウルトラマンを紛れ込ませているのは楽しみだったし、下手ながら怪獣も造っていたので捕まるのではないかとハラハラしていました。販売の認可を受けようとするなら、原型を持って円谷プロに行き、手直しさせられ、あげく売り上げの40〜60%を上納しなくてはなりません。円谷プロがそういう商法を始めたことを知った成田亨さんは、実際にデザインした自分のもとに著作権料が入ってこないことを悔しがっておられました。法律とか契約については無知な私ですが、不条理と義憤を感じて、ウルトラマンもウルトラセブンも、もはや円谷プロのものではないと思ったのです。
そして……この頃、円谷プロはオーストラリア、アメリカについで、中国の制作会社と合作でウルトラマンを作ろうとしていました。ところが、寸前で共産党に中止命令を出され頓挫します。
では、それ以後、支那の国にウルトラマンはいなかったのかというと、むしろ増え続けていたのです。昨年ニュースになって日本中を騒がせたのが新作映画「再見奥特曼(さよならウルトラマン)」。寝耳に水!の円谷プロは抗議し訴訟を起こしましたが、独裁共産大国は中小企業の訴えなど取り合いません。謎のタイ人からウルトラマンの権利を買ったというのです。意外なところで「白猿ハヌマーン&ウルトラ6兄弟」が亡霊のように祟ってきました。云わんこっちゃない!尖閣諸島を国有地にしたようにウルトラマンの版権も国に預けておくべきだったのです。
最初に、パチンコウルトラセブンに対して、お母はんが面白いことを言ってほっこりしたと書きましたが、それで終りではありませんでした。そのパチンコウルトラセブンの開発費として計上されたのが100億円、最終的に200億円かかったというのです。昭和42年当時の「ウルトラセブン」一話分の製作予算を500万円として、掛ける49話。このパチンコ機が出来た平成17年の物価に換算したとしてもオリジナルの総製作費は5億円くらいではないかと考えられます。茫然としました。
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