ヤマタノオロチ


 「宇宙船」Vol.68(平成6年5月)。新作映画「ヤマトタケル」。ゴジラvsシリーズが好調の頃、特撮王国の復活を夢想し、東宝が社運を賭けて放つ大作。特技監督は日本のエース川北紘一さん。ヒロインに据えられたのは東宝カレンダーの一月を飾る看板女優沢口靖子。子供向け映画の超能力娘みたいな役を引き受けた沢口、ときに29歳……。

 沢口靖子といえば、二年くらい前に「校庭に東風吹いて」という映画がありました。学校で上映するような教育映画なのでご覧になった人は少ないかと思います。主人公を沢口が演じているのですが、五十代のベテラン教師というより、実年齢よりかなり若手の先生の役のようでした。そこでベテラン教師として出演していたのがひし美ゆり子。70歳。非常勤講師ならともかく、校長先生の役。ふつう退職しています。この映画の監督かプロデューサーがアンヌ隊員に思い入れがあったのでしょうか?『地球人だろうと宇宙人だろうと、ダンはダンにかわりがないじゃないの』50歳だろうと70歳だろうとアンヌはアンヌにかわりはないんだ!ってことですか。

「ヤマトタケル」が大作であることに間違いはないのですが、小ぢんまりとした印象になってしまうのは、過去に題材が共通する東宝超大作「日本誕生」(昭和34年)があったからです。この二作に共通する配役を対比してみます。
            「ヤマトタケル」   「日本誕生」
ヤマトタケル日本武尊  高嶋政宏     三船敏郎(須佐之男命)
オトタチバナ弟橘姫   沢口靖子     司葉子
景行天皇        篠田三郎     二代目中村鴈治郎
ヤマトヒメ倭姫     宮本信子     田中絹代
クマソタケル熊曾健   藤岡弘      鶴田浩二
 沢口靖子のデビューに際して、東宝はものすごい期待をかけて「原節子」という芸名を付けかけたという逸話が残っていますが、その原節子は「日本誕生」に天照大神の役で出ています。女優では、ほかにも、杉村春子、香川京子、乙羽信子など圧倒的な名前が連なっています。特技監督はもちろん円谷英二。「ハワイ・マレー沖海戦」とともに、この「日本誕生」を自信作に挙げています。特撮史上には重大な作品なのですが、怪獣ファンには人気がありません。それというのは、ヤマタノオロチがしょぼくて迫力が無かったのです。東宝というより、日本特撮の懸念であった八岐大蛇については、今回の新作「ヤマトタケル」のヤマタノオロチにおいて雪辱が果されたといえます。二人で入る全長10メートルの巨大ぬいぐるみが作成されました。次に造られる八岐大蛇はCGなので、このサイズのぬいぐるみは絶後でしょう。当時、ソフビ製のおもちゃも発売されていました。60cmくらいの大きさでかっこ良くて欲しいなとも思ったのですが、我が陋屋には置く場所が無いという理由で購入を断念しました。

 なお、それまでヤマタノオロチの映像表現について諸先輩方に絶賛され続けてきたのが、東映のアニメーション映画「わんぱく王子の大蛇退治」(昭和38年)でした。小林晋一郎さんも「もしあなたのお子さんにヤマタノオロチを説明するのなら、このオロチを示してあげるとよい」と書いておられました。このアニメ映画…いや、長編漫画映画のストーリーが「ヤマトタケル」に似ています。冒険の最初に海の怪獣をやっつけ、次に火の魔神を倒し、クライマックスが、ヤマタノオロチとの決戦。スサノオノミコトの業績をヤマトタケルに置き換えたのが「ヤマトタケル」です。置き換えてよいものではありません。
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怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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