クモ女


「宇宙船」Vol.64(平成5年5月)。特集「仮面ライダーZO」。オリジナルビデオ「真仮面ライダー」が評判良かったので、これを映画にして公開しようというところからスタートした企画。……でも、やっぱり新しいライダーにしようとなって、ここにまた仮面ライダーが一人増えました。仮面ライダー20周年の20をもじってZOと名付けられたのですが、Zは究極、Oは原点と意味が後づけされます。究極で原点……これって翻訳すれば“真仮面ライダー”になるんじゃないでしょうか?1号、アマゾン、スカイ、ブラック…真の仮面ライダーはいったい誰なんだ!
「仮面ライダーZO」とタイトルは決まったのですが、自信の無い東映は、東映スーパーヒーローフェアと銘打って現在時間で放送中の「五星戦隊ダイレンジャー」と「特捜ロボジャンパーソン」の三本立てで公開することにしました。こうなると、当然「ZO」の持ち時間は短くなります。最初の構想では、宇宙空間での戦闘シーンから始まり、ZO誕生までの経緯がじっくり描かれるはずだったのですが、その部分は省略され、朝、ZOが目を覚ましてから夕方までに事件を解決させる一日の話になりました。正味48分。一日だけ、48分間だけの仮面ライダーでした。
 この映画の評価についてはZO麻生勝役土門廣の好演に尽きます。五歳くらいの息子にせがまれていやいや観覧したお母さん連に注目されたのでした。「宇宙船」にも年輩婦人読者からの賞揚のおたよりが届けられ、私も、当時まさに五歳の男児の母親から「今度の仮面ライダーの人、カッコよかった!」という絶賛の声を直接聞きました。好感度ヒーロー土門廣はこの後ブルースワットに抜擢されるのですが、「ZO」の続編は作られず、やっぱり一回だけの仮面ライダーとなってしまいました。

 本多猪四郎監督の逝去が報じられています。「温容忘れ難く」と綴られる追悼文は竹内博さん。これから評価が高まる大人物と言われているのですが、その竹内さんも亡くなったいま、本多猪四郎を評価できる大人物はいないような気がします。
 本多猪四郎さんは運命の人でした。歴史の目撃者であり当事者でした。軍人として2.26事件に立ち会い、日本陸軍の最盛期から武装解除までを体験されました。映画人としてはゴジラの誕生に立ち会い、日本映画の黄金期と撮影所の解体までを目撃されました。語ることはいくらでもあると思うのに、日本人の美風を守る本多さんは、ご自身による著書や自伝は残されていません。たいしたことの無い経歴に尾鰭をつけて自慢話をする軽輩にくらべれば、その高潔な人格は尊とすべく、須く範とすべしなのではありますが、やはり私はもどかしくなるのです。

 映画を監督できるほどの特別な才能と権利を生得した人は自己を表現する使命があります。模型に耽溺し弄する技術に喜悦していたかのような円谷英二の絶筆は「日本ヒコーキ野郎」のシナリオでした。戦勝国に飛行機の研究開発が禁じられたことは涙をのんで忍ぶしかないけれど、明治から昭和にかけて雲の階段を駆け上がろうとした人達の夢と情熱は忘れられてはならない。それが、映画監督であり飛行機少年だった自分の使命だと思い定めていました。しかし、高価な軍用機の開発をやめたことで、民生の自動車が普及するようになりました。円谷英二の本当の夢は大衆への迎合ではなかったとも言えます。
 本多猪四郎監督の仕事に自身の体験に基づく戦争映画が無いのが残念です。歩兵第一聯隊は、2.26事件で叛臣の汚名を着せられたまま満州に移され、最後はフィリピンに送られ全滅しました。その生き残りである本多さんには、原隊の戦歴を映画にしておく使命があったと思います。
 晩年は黒澤映画に演出補として協力されていました。そのことで、本多さんの名はより知られるようになります。ただ、たとえ黒澤明であろうと、本多猪四郎の名前がその下風にあることは、特撮怪獣ファンにしたら、もどかしかったのです。

「宇宙大戦争」(円谷英二/本多猪四郎・昭和34年)で強く心に残った演出があります。大気圏内に侵入してきたナタール人の円盤群を地球の戦闘機隊が邀撃に上がる場面。激しい損耗戦の終りに戦闘機隊から司令に無電が入ります。「現在、わが方三機。ただいまより最後の攻撃を敢行します。伊豆半島上空、高度12000」この連絡に対して、基地司令(高田稔)は、もはや戦闘指揮官としての役目が終ったと頓悟し、口調を変え「ご健闘、感謝します」と応えます。このやりとりが淡々と行われるだけに万語の思いが伝わってきます。上空12000m…誰も見ていないところで、祖国と同胞のため勇敢に使命を全うして死んでいった人の心が偲ばれます。 成否を誰か論らふ 消えざるものは只誠
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怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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