アイゼンボー


「宇宙船」Vol.43(昭和63年7月)。特集「慶雲機忍外伝未来忍者」。ナムコの北原聡さんが企画し、雨宮慶太さんを監督に抜擢して作られたオリジナルビデオ作品。慶雲とはパラレルワールドの日本における架空の元号。未来とも過去とも区別がつかない戦国時代を想定した美術設定がものすごく楽しい。移動要塞に瓦屋根が乗っていたり、ブラスターに木製部品があったりします。「仮面の忍者赤影」へのリスペクトの延長線上に存在することはあきらかで、牧冬吉さんも出ています。もう一回観ておきたくなりました。

 作品研究は円谷プロの「恐竜探検隊ボーンフリー」「恐竜大戦争アイゼンボーグ」「恐竜戦隊コセイドン」。恐竜三部作とよばれていますが、三作に連続性や統一感はありません。むしろ、ここに「科学冒険隊タンサー5」と「極底探検船ポーラーボーラ」を加えて一つのカテゴリーとして整理しておくほうが特撮ファンとしては便利です。怪獣ブームが過ぎた後の特撮技術者の離合集散のなかで産み出された作品群です。
 怪獣から恐竜に向うことは、イマジネーションの退潮のように思えますが、円谷プロとしては次なる高みをめざしていたにちがいありません。プロレスからショー的要素を排除して格闘の原点を追求したUWF運動とあい通じる気概です。ところが、よりリアルで確かなものだと思った恐竜が、かなり不確かなものだったのです。恐竜三部作の恐竜は尻尾を引きずって歩いていますが、その後の研究で、尻尾はピンと張って、頭部とのバランスを保ちながら軽快に走っていたことが定説になりました。恐竜表現の分岐点とも言うべき「ジュラシックパーク」にしても、いくつかの場面が指摘されています。私が一番感激した場面は、ブラキオサウルスが後脚で立ち上がるところで、レーザーディスクを買って何度も再生しました。しかし、後に出た研究書では、ブラキオサウルスの骨格構造では後脚で立てないとされていまして落胆しました。恐竜の研究が進んで、なにが一番がっかりかと言えば、ティラノサウルスに毛が生えたことです。ふさふさとした体毛に覆われていたというのです。歴史の真実を正視するというのが私の立場ですが、これは目をそむけたくなる見苦しい姿です。

 恐竜三部作が作られていた昭和50年代の円谷プロの仕事のエポックとしては、堺正章主演のドラマ「西遊記」の特撮だと思います。わたの上に孫悟空の人形を乗せて飛ばすような、ウルトラマンシリーズならゆるされないチープな特撮が、伝奇世界によく融合したのです。まだ、宇宙船も創刊されておらず、特撮ファンというものもいなかったのですが、第一世代が大人になり、SF作品としての視点からのウルトラマンの再検証が始まりました。ビデオソフトの普及していない時代なので、この人々は、テレビ局に再放送の嘆願書を送り続けたと云います。その結果、ウルトラシリーズをリアルタイムで知らない小学生以下の世代に大反響があり、当然のことながら新シリーズを熱望する気運が高まります。それに応えて円谷プロが送り出したのがアニメーション「ザウルトラマン」でした。これも「ボーンフリー」「アイゼンボーグ」での経験を経過しての、その時点での回答であったと考えられます。
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ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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