牢忍ハブラム


「宇宙船」Vol.47(平成元年3月)。すでに新シリーズ「機動刑事ジバン」はスタートしているのですが、特集は「世界忍者戦ジライヤ」。本当に特撮ファンに愛された作品でした。前の番組「超人機メタルダー」は特撮ファンという職業的視聴者には評判良かったのですが子供にソッポをむかれ打ち切りになりました。しかし「ジライヤ」は子供にもウケたと、吉川進プロデューサーもホクホクです。
 世界中に忍者が存在するという世界観…そんな発想がどこから出てきたのだろうととまどいながら観ていたのですが、考えるのをやめたら楽しくなりました。以前「怪獣ハウス」で「ジライヤ」を取り上げたとき、本物の忍者初見良昭さんが出演していることが、この作品の価値という書き方をしてしまいました。それも訂正しませんが、初見良昭さんのおじいちゃんとジライヤと高校生の妹と小学生の弟、この仲の良い小さな家族が力を合わせて正義を守るという雰囲気がとても好きでした。ジライヤは一昨年の戦隊シリーズ「手裏剣戦隊ニンニンジャー」にゲスト出演します。ものすごく興奮して、こんなにも私はジライヤが好きだったのかと自問自答しました。

 かといって…「世界忍者戦ジライヤ」を名作と思えないのは「仮面の忍者赤影」を知っているからです。子供向け時代劇がお家芸だった東映は昭和47年「変身忍者嵐」で視聴率的に失敗しました。以降子供向け時代劇は作らなくなったのですが、昭和51年「忍者キャプター」で、現代を舞台に忍者を活躍させる手法を見つけます。このやり方だと着物や小道具、ロケ地の選定に苦労がいりません。「ジライヤ」も「ニンニンジャー」も現代忍者です。これが忍者ヒーローの表面的な歴史なのですが、時代劇で勝負したら「赤影」に絶対勝てないというのが真相ではないかという気がしてきました。次回は「赤影」について書いてみたいと思います。日本の特撮は怪獣からではなく忍者から始まったのですから。なお「ジライヤ」とはもともと歌舞伎の演目です。忍者ヒーローを語るにはそこまで遡る必要があります。

 ジライヤ一家が狙われる理由は、パコという秘宝を代々守り続けているからなのですが、そのパコとは何かが思い出せないことにいま気づきました。最終回近くで聖徳太子が建立(製作でも建造でもなく大仏と同じく建立の語を用いる)した磁雷神という巨大ロボットが登場します。あれだったのでしょうか?でたらめも極まれりという展開でした。

 聖徳太子といえばお札の顔だったことを憶えている年代です。聖というよりも欲という字が浮かびます。国語の時間に、お札の顔が一新されるという新聞記事を読んで作文を書きなさいという課題が出されたことを思い出しました。子供の頃から世の中が変ることがいやな保守派だった私は、反対意見を書きました。聖徳太子と福沢諭吉では歴史としても人物としてもスケールが違い過ぎる。この差は日本人のスケールが小さくなったことを表すのではないか。それまでは政治家から選出されていたが、今回は文化人から選ばれたという部分にも反駁しました。普遍的な法則や真理を追求する学者が高尚で、ときに大衆の不定形な欲望利害と対峙しなければならない政治家が下賤であるとは思わない。政治家と学者、そして、軍人は国家の根幹であり、その重要性に上下は無いはず。第一級の政治家であり学者であり軍人でもあった聖徳太子こそ最高額紙幣の顔にふさわしいというような内容の作文を書きました。
 いま思えば、あの時期に聖徳太子の実在性を疑問視する学説が流行していたのでした。三經義疏、十七条憲法にしても聖徳太子が書いたという確証が無いというのです。法隆寺、四天王寺など聖徳太子の実在を毫も疑ったことの無い側から反論もあったはずですが、すると、空飛ぶ馬を持っていたとか前世の記憶があったという挿話を肯定するのか否定するのかという問題になります。部分的にでも否定すれば信仰が揺らぐのです。
 聖徳太子は民衆信仰の対象でもありました。天才で超人で慈愛の人。真相を解明し自説を発表するのもよいのですが、日本人が求めて作り上げた理想像として研究することの方が意味があると思います。これは特撮ヒーロー論の結論へつながる布石でもあります。
 とにかく、次回「仮面の忍者赤影」について書いておかねばならないと思っているのですが、「赤影」と「ジライヤ」、両方に出演しているものすごい芸歴の人がいました。牢忍ハブラム役の大前均です。
スポンサーサイト

磁雷矢


「宇宙船」Vol.41(昭和63年3月)。大特集・総決算!超人機メタルダー。特撮ファンに好評だった「メタルダー」だったのですが、幼年層の支持が得られず、金曜の夜から日曜の朝の時間帯に降格。そして、打ち切り。「仮面ライダーBLACK」も日曜の朝の番組としてスタートしました。爾来、特撮ヒーロー番組がゴールデンタイムに戻ってくることはありません。特撮ファンの失望と醒めた気分にむかえられて始まったのが「世界忍者戦ジライヤ」。
 「超人機メタルダー」やその前の番組「時空戦士スピルバン」の敵が全身に武器を装備した重厚なぬいぐるみだったのに較べて「ジライヤ」は敵も味方も忍者ということで軽装です。火薬の爆発や特撮合成ではなく生身のアクションを見せるというのですから、製作費も安上がり……とタカをくくっていたら、これが、また面白かったのです。世界中から国柄を特徴とする忍者が集まってきて忍術を競い合います。まず、世界中に忍者がいるという設定。その突飛な発想に意表をつかれて物語世界に引きずり込まれます。軽装で軽快で、メタルヒーローシリーズの重みをピョーンと跳び越えて行った感じでした。

 磁雷矢に変身する主人公の師・山地哲山という役で出演していた初見良昭さん。「ジライヤ」放送中は知らなかったのですが、UWFブームの頃に出ていた月刊誌「格闘技通信」(ベースボルマガジン社)で特集されていてびっくりしました。本物の忍者だったのでした。武號・初見鐵山。戸隠流忍法を含めた九つの古流武術の宗家の道統を継承するという凄過ぎる人だったのです。忍者の家に生まれ育ったわけではないのですが、大人になってから、忍術の修行を始めました。昭和六年生まれということなので、子供時代は猿飛佐助などの忍者文庫を愛読されていたと思います。そして、そのまま本当に忍者になったのですから、男として最高に幸福な人ではあります。もっと過去には、東映アニメ「風のフジ丸」の忍術解説コーナーにも出演されていたそうです。忍者のわりには、よくテレビに出演されます。忍びなれども忍ばざるとは、こういうことでしょうか?

 今号からの新連載。竹内博さんの「古今特撮映画の散歩道」。竹内さんが古書店、古書市を巡り歩いて集めた映画の本、雑誌を惜しげもなく紹介してくれます。「ゴジラも円谷英二も語るは易いが、その本来・土台を今のうちに研究しておかねば駄目だと私は思う……」という書き出しで、戦前、大正から始まります。このブログのテーマを特撮本、怪獣本にしたのですが、こんな良いことが書いてある専門書はありません。もしかしたら「宇宙船」のバックナンバーを全冊揃えておけば、特撮に関してはこと足りるのではないか?と早くも結論が見えてきました。
プロフィール

ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

カテゴリ
リンク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブログランキング

FC2Blog Ranking