加藤保憲


「宇宙船」Vol.40のつづき。この号で大きく取り上げられている新作映画が、荒俣宏原作、実相寺昭雄監督の「帝都物語」。日本映画史中におけるこの作品の位置づけはともかくとして、私にとってはいろいろと考えさせられる映画でした。映画館等に貼られた宣伝ポスターは加藤保憲役の嶋田久作の顔だけがデカデカとレイアウトされたものでした。こんな長い顔が本当にあるのだろうかと訝しんだのですが、本物でした。そのとき特撮ファンらしからぬ疑念がよぎりました。どんなによくできた仮面も特殊メイクも、本物の顔には敵わないのではないか?と。

 さらに顔について。日本人の顔はSFにむかないと言う人がいました。日本人の顔で宇宙船を操縦したり、光線銃を撃っても似合わないと言うのです。さらに、日本語はSFにそぐわないとも言うのです。それが真理だとしたら、日本の特撮映画の将来に希望はありません。SF映画を作りたければアニメにするしかなくなります。実は、このVol.40には、新作としてもう一本、アメリカ、ハンナ・バーバラプロとの合作アニメ「ウルトラマンTHE ADVENTURE BEGINS」が紹介されているのです。
 しかし「帝都物語」のように時代を過去に設定すれば、SFと日本人の間に隔たっている違和感を消すことが出来るような気がしたのです。特に明治から昭和前期は急速に科学技術が進歩した時代です。また、超兵器の研究等は意図して国民に隠蔽されました。ここに鉄人28号や轟天号、あるいはメタルダーのようなファンタスティックな空想のつけいる場所があります。「帝都物語」の中でも、実際はカラクリ人形のような物であったろう学天則を強力なロボットとして登場させる楽しい解釈があります。

 荒俣宏さんの原作小説は後で読みました。関東大震災も2.26事件も東京大空襲も、東京を襲う災厄の裏には、いつも加藤保憲がいるという物語です。そして、各々の時代の実在人物が科学知識や霊能力で加藤と戦います。戦後の全学連や赤軍派のゲリラ活動の裏にもやはり加藤保憲がいました。この時代に、加藤と対決するのは小説中では三島由紀夫なのですが……。
 ここで、また真偽定かならざる話を書いておきます。世界反戦デー10月14日。この日は必ず「反戦」を標榜して左翼ゲリラが大規模な暴動を起こしました。荒俣さんも小説中で“反戦”と“暴動”の矛盾に疑問を感じています。毎年起こる暴動に苦慮していたとき、知恵のある誰かが、昭和49年のこの日を長嶋茂雄の引退の日に決めたのです。シーズン終了前。対中日ダブルヘッダーの第一試合と第二試合の間の中途半端な時間。実は、デモ参加者が国会前に集結し始める時間だったのです。「読売巨人軍は永遠に不滅です」夕暮れの後楽園球場に長嶋が立ったとき、日本国民は、デモも暴動も反戦もそっちのけでヒーローを注視したのです。以降、年中行事のようにあった世界反戦デーは廃れました。長嶋とは、現実に日本の国家体制を救ったヒーローでもあったのです。
スポンサーサイト
プロフィール

ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

カテゴリ
リンク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブログランキング

FC2Blog Ranking