ジャイロック


「宇宙船」Vol.36(昭和61年5月)。特集「突撃!ヒューマン‼」。設定資料、夏夕介インタビュー、最終回台本等と「ヒューマン」に関しては十分と言える充実した内容。ありがたいのは、全怪獣がカラー写真で掲載されていることです。13回で終了した番組なのですが、毎回2種類の怪獣が登場するので頭数は多いのです。また、ザリゾンが3体、ゲジルが2体、シビレッタが6体以上造られていたことも確認できます。
 失敗作としてTVヒーロー史上に記録される「ヒューマン」が無視されないのは、成田亨さんの仕事だったからです。Vol.36にも成田さんの回顧録があります。宇宙人ヒーローとして不本意のまま世に出したウルトラセブンの完成型がヒューマンだったということです。天才芸術家の仰ることですからその通りなのでしょうが、私はセブンの方が好きです。と言うより、この世界のあらゆる顔の中で一番好きな顔がウルトラセブンです。

 このブログは特撮ファンに向けて書いています。「ヒューマン」が評価不能の作品であった理由をここで繰り返すことはしません。それでも、このタイトルはいけません。「突撃!ヒューマン‼」短いセンテンスの中に!マークが三つも入っています。幼稚であり下品です。また「突撃」とは、大砲と機関銃を並べて構築された陣地や要塞に、損耗率50%を覚悟して飛び込んでゆく日本陸軍の戦法です。それ以外それ以上の意味を私は知りません。わが民族史上の凄惨にして崇高な瞬間を、公民館の茶番劇が僭称してよいはずがありません。そして「ヒューマン」…なにをか況や。語源を同じくするキャラクターに星飛雄馬がいます。不本意ながら漫画原作者という職業にあまんじていた梶原一騎が、文藝小説に劣らない人間ドラマを漫画でやってやろうという意志を込めて創造した主人公でした。その漫画「巨人の星」は社会現象になるほどの話題になりました。日本の漫画表現を進化させたことはもちろん、日本野球のレベルアップにも貢献しました。多くの人の人生に影響をあたえたであろうことについては検証の必要もないでしょう。はたして、「突撃!ヒューマン‼」は掲げたその高邁なタイトルに恥じないほどにドラマの中で人間を描ききれたのか?「巨人の星」と並記するには懸隔の差がある知名度が結論だと思います。なお、商業誌である宇宙船は、時代を先取りし過ぎた番組だったと好意的な言い回しで締めています。(ちなみに、成田亨さんの構想にあったタイトルは「さすらいの宇宙人マヤラー」。日本テレビの白井荘也プロデューサーの企画案では「強人!スカイダー」。私はこのスカイダーが良かったと思います。)

 「突撃」を命令するとき、陸軍の指揮官は50%の損耗を覚悟すると書きました。緒戦でシンガポール、ジャワ、コレヒドールの大要塞をあっというまに陥落させていったのですが、守勢に転じてからも、この戦法は有効で、アメリカの大軍相手にフィリピン、マリアナの小島で何ヶ月も抵抗を続けることができました。こんな戦い方をしていたら全滅してしまったのではないかとぞっとします。
 大東亜戦争で戦死した陸軍兵士は143万9千人。終戦時の内外の員数は547万人。海軍を加えると終戦時の総兵力は789万人。支那事変からの参加将兵を1000万人弱とすると、損耗率は約20%となります。日本とドイツを相手に戦ったアメリカの戦死者も200万人くらいです。日本の場合は空襲などで非戦闘員も40万人死んでいるのですが、軍民あわせて1000万人を超える死者を出したソ連とかドイツに比較すると少ないとも言えます。なお、8年間で費やされた軍事費用は1650億円。終戦時に日銀と国民のてもとに残っていた総額は2000億円。数字で見る限り余力が残っています。賢明なところで降参していたのでした。          つづく
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ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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