王女ラブ


「特撮秘宝」vol.3(平成28年2月)を買ったら、王女ラブ役滝沢れい子のインタビューが載っていました。すでに素顔で活動していたタレントさんで、ラブはほんのアルバイトのつもりでやったとのこと。まったく忘れていて、完成したパイロットフィルムも観ていなかったといいます。写真を見せられて、ようやく長い人生にこういう扮装をした瞬間の記憶がおぼろげによみがえってきました。拍子抜けするインタビューではありましたが、ほっとしました。女優の卵みたいな女の子があの恰好をさせられ、新番組「シルバージャガー」が始まるときをずっと待っていたとしたら、それは罪深い……いや、やっぱり「ゴジラ対メカゴジラ」に出演したベルベラ・リーンや「キングコングの逆襲」に出演したリンダ・ミラーのように、日本滞在中の最高の感激的な思い出ですといった、胸の熱くなるようなリップサービスはできないのでしょうか?

 特集1は「スペクトルマン」です。一箇所気になったのは、公害Gメンが、スポンサーのクレームで怪獣Gメンになったという話です。本当でしょうか?戦時中、英語が禁止されて、ストライクが「よし」にボールが「だめ」になったという笑い話を連想しました。実際は英語も野球も禁止されていません。顛末を簡単に記しますと、国家を挙げての総力戦を完遂するために経済統制がなされました。野球のボールを作る皮革は軍需物資でもあります。日本野球聯盟(職業野球)が皮を分けてもらうために興亜院に提出した書類の中に、野球用語の言い換えがあったのです。当然、学生野球では「ストライク」「ボール」のままでした。なぜ、こういうウソが実話のように伝えられたかというと、対米戦争をしていたのだから、アメリカの国技である野球は目の敵にされたはずという、戦後の思い込み史観と被害者史観です。
 被害者史観という言葉はいま私が勝手に作りました。公害問題において加害者と被害者があったというのは後世の視点であって、本来両者の境界線は曖昧です。自動車部品を作っている人が自動車を運転して大気汚染に苦しんでいたとしても、この人に加害者の意識はありません。「スペクトルマン」のスポンサーといえばロッテですが、ロッテに公害の加害者側という自覚があったのでしょうか?大東亜戦争に負けたときでも、極東軍事裁判で死刑にされた人々に責任を押し付けて、生き残った日本人は被害者のつもりになりました。無理に思い込んだのではなく、なんの疑問ももたず信じたのです。規制が強化されて、公害問題は表面上終熄しました。じつは、規制の無い国に工場を移転して、その国の環境を汚染し現地の人の健康を蝕んでいたのです。この事実に対して加害者意識を抱く日本人はいるのでしょうか?古い話ばかりしましたが、東日本大震災でも、東京電力を加害者に仕立てて賠償金を請求する人に疑問を持ちました。東京電力も被災者です。極論ですが、発電所を糾弾できる人は電気の供給を受けていなかった人だけです。

「スペクトルマン」から話がそれましたが、公害怪獣だけではストーリーが制約されネタが尽きてきたので、怪獣問題全般を扱う怪獣Gメンになったと考えるほうが自然です。スポンサーからクレームがあったとしたら、「宇宙猿人ゴリ」という番組名についてだろうと思います。これを「宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン」にされ、さらに「スペクトルマン」にされたことは、原作うしおそうじさんにとって身震いするほど悔しいことだったと思います。
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シルバージャガー


 「宇宙船」Vol.20(昭和59年9月)。ゴジラ復活!新作「ゴジラ」撮影開始!最高の朗報と同時に、とんでもない悲報が……平田昭彦、逝く…なにやってんねん!特撮ファンをふくめた当時の特撮界の間の悪さに腹を立ててしまいました。
 特集は「シルバー仮面」。三国志の時代に「人あるところに人なし 人なきところに人あり」という格言がありました。日本にあてはめるなら、京や大坂の人口密集地にこれといった人物はおらず、足柄山の山奥や、葛城山系の谷間にこそ、熊を投げ倒す怪童がいたり軍学を極めた兵学者が棲んでいるという話です。何が言いたいのかというと、かけ出しの特撮ファンだった頃の私は、本当に凄い作品は理解されることなく埋もれていったのでないかという幻想を信じていたのです。実相寺昭雄監督が中心になって企画され、放送されるや裏番組の「ミラーマン」に視聴率争いで負け、2クールで終了した「シルバー仮面」こそ私が希求する本命穴馬でした。どんなことがあっても全話観たくて、プレミアがついていたLDボックスを買いました。
 低視聴率の重圧に負け、途中から巨大化しシルバー仮面ジャイアントになるのですが、この変節については唐突な感はなく、物語は円滑に進みます。肯定できないのは、松尾ジーナの降板です。五人兄弟の一人が缺落することは、基本設定に反しますし、テーマにも觝触します。「シルバー仮面」はその完結性において失敗作であったと判定しました。同時に、「ウルトラマン」「ウルトラセブン」を超えるものはこの世に無いのだ…という諦観に至りました。同好の日本特撮ファンの意見を求めます。

 ピープロの「シルバージャガー」が日仏米合作でスタートするというニュースが載っています。それを記念して、プロモーションビデオが発売されるという広告でもあります。疑問符がいくつもつきます。「シルバージャガー」については宇宙船創刊号に新作として紹介されたまま、ずっとなりをひそめていました。邪推ですが、パイロットフィルム製作に携わった人々に報酬が支払われていないため、製作中止とは言えないまま、プロモーションビデオ発売というその場しのぎでごまかしたのではなかろうか?
 このプロモーションビデオは、最近、CSの番組「特撮国宝」で世界的作曲家鷺巣詩郎さんの私物として放送されました。故鷺巣富雄社長が出演して、これからは宇宙SFの時代であり、「シルバージャガー」こそがその本命穴馬であるというような内容を熱弁されているのですが、結局ポシャった顛末を知っているのでインチキくささ満点です。これが自分の父親だったら恥ずかしいなと思っていたのですが、世界の詩郎さんにとっては、やっぱり好きで好きでたまらない人だったのでした。司会の樋口監督との対談でもお父様への深い思いを語っておられました。
 今回のイラストは、マンドラーに攫われた王女ラブを奪回して、シルバージャガーがネコ族の王になるという結末を空想して描きました。
プロフィール

ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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