コメットさん


「宇宙船」Vol.9(昭和57年2月)。第一特集はハリーハウゼンの「タイタンの戦い」公開にあわせて、人形アニメ。第二特集がSFXヒロインのパートⅡ。今号、その両方で取り上げられているのが「コメットさん」。過言ではなくテレビドラマ史上に残る名作でした。企画のヒントはメリーポピンズです。ただし、メリーポピンズが魔法で古い因習から子供を解放してやる物語だったことに対して、コメットさんは、解放され過ぎた現代の子供を魔法でこらしめるお話にすることが企画会議で確認されました。第20話「おもちゃの反乱」では、どんどん買い与えられ、壊され、捨てられていくおもちゃがコメットさんの魔法で子供に戦争を仕掛けます。「物を大切にすること」「節約」がテーマになっているのですが、説教じみた辛気くささはありません。おもちゃの師団を前に、司令官のコメットさんが悲愴な顔で訓示を垂れたり、腕白坊主側が、家の見取り図の上に碁石を配置して反撃作戦を棋上演習したりする本格的な戦争ごっこです。楽しくて仕方ありません。おもちゃの軍団は人形アニメで動かされます。同じアイデアの「アンドロイド0指令」より、断然「コメットさん」が勝っています。
 解放されすぎた日本の子供と対峙する一方で、いまだ解放されざる子供がいたことも記録されています。第65話「ハチの子を救え」は、花の季節に合わせて日本列島を移動していかなければならない養蜂家の子供の話でした。

「コメットさん」は原作横山光輝となっていますが、事実はテレビ先行企画で、番組宣伝のために横山先生に漫画化が依頼されたのです。掲載誌は週刊マーガレット。メリーポピンズは住込みの家庭教師だったのですが、日本の慣習になじまないということで、お手伝いさんに設定されました。少女漫画については門外漢なのですが、この時代の少女漫画の主人公はお手伝いさんである場合が多いようです。私はずっと、昔はお手伝いになる人が多くて、少女漫画というのはそういう人に読まれていたのだろうと思っていました。家事を魔法で片付けられればというのは読者の夢だったのではないかと……。
 つい最近、昭和三十年代から昭和四十年代にかけて、まさにコメットさんと同時期、丹波の中学校を卒業し京都で住込みのお手伝いさんをやっていたという人の話を聞きました。一例だけなのですが実話です。まず、掃除、洗濯、炊事、介護と大忙しで漫画を読む時間なんてなかったと。最初の月給は500円。これは10年後に5000円になったのですが、週刊漫画雑誌を購読する余裕はありません。年金も雇用保険も引かれずにこの金額です。健康保険はどうだったのかというと、住み込んでいる家が医者だったので医療費はタダだったそうです。
 また、田舎の学校を卒業して、お手伝いさんになる人は多かったのかというと、クラスの中で一人だけだったといいます。賤業とされていたようです。このことは呼称がコロコロ変わっていったことからも推察できます。「おなごし(女子仕?)」から、本来武家の奉公人をさす「女中」になり、その呼称にも蔑視が込められるようになると「お手伝いさん」になります。ちなみに漫画版「コメットさん」では女中、テレビ版ではお手伝いさん。ドラマの中でコメットさんが自分の職業を言うときはメイドでした。
 桂米朝師が古典落語の解説で、長く勤めたおなごしが結婚するときは奉公先が嫁入り道具を揃えてくれる例があったと言われていましたが、この人も、箪笥から着物から揃えてもらって輿入れしていったそうです。
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ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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