ガス人間


「本多猪四郎全仕事」(平成12年・朝日ソノラマ)竹内博さんの編集。俳優に演技をつけたり、円谷英二と打ち合わせをしている貴重な写真が満載で、前々回取り上げた「写真集 円谷英二」といっしょに並べておきたい本多監督の写真集です。
 全仕事ということで、特撮怪獣もの以外の映画も扱われています。サラリーマン映画や青春映画などジャンルの幅は広いのですが、筋の通った大作はなさそうです。機会があれば観ておきたいと思うくらいです。
 こんな、どうでもいい映画群よりも、私などは、やっぱり本多さんの戦歴にこそ価値があったと考えます。盧溝橋事件が勃発した瞬間から、大東亜戦争終結の日まで、第一線で戦闘をしていた人は少ないと思います。本多さんの戦場は、満州から中支あたりだったので、日本軍は最後まで優勢だったのですが、それでも戦死する確率はあります。本多さんが監督した戦争映画は「さらばラバウル」と「太平洋の鷲」だけ。両作とも海軍の話で戦域もまったく違います。本多さんは、ついに戦争体験について語り残すことをされませんでした。同世代の有川貞昌特技監督には「敵兵を狙った銃口の先に、黄色い可愛い花が咲いていて、引き金を引けなかった」と話したといいます。特攻隊員でもあった有川さんは、この人は嘘を言っていると思いました。戦場を知らない人が共感できそうな話を作っているのだと思いました。東宝の戦記映画も敗戦後の風潮に迎合してストーリーが作られています。本多さんは機関銃中隊でした。一度引き金を引けば、何十発もの弾丸が発射されます。この操作を昭和12年から昭和20年まで繰り返していたのです。

「ゴジラ」が製作されたのは終戦から九年後。人々に空襲体験があるので、避難場面が真に迫っていると言われますが、本多監督自身は逃げたことがありません。日本軍に追われ荷車に家財道具を積んで逃散していく現地民の様子を見下ろしていました。本多監督の視点はゴジラだったのです。
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ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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