ギタギタンガ


 長坂秀佳作品集さらば斗いの日々そして…二回目。ウルトラマンA第29話「ウルトラ6番目の弟」。「レオ」終了後の再放送で初めて見て、びっくりしたサブタイトルです。タロウ以外にそんなやつが存在していたことを知りませんでした。もちろん篠田三郎がゲスト出演した回ではありません。ウルトラ6番目の弟を自称する少年、その名もダン!混迷は深まります。しかも、南夕子がいなくなっての一回目。内勤が主務だった美川隊員が外回りをしています。脚本が書き始められた段階では、まだ夕子がいたのでしょう。
 準備稿のタイトルは「地獄からの招待」。地底人モノでした。今回の地底人の要求は、地下水をあまり汲み上げないでほしいという、交渉次第では、戦争を回避できそうなもの。ところが、完成作品では、ダン少年を新レギュラーにするための描写に尺を取られ、地底人との妥協点を探るというようなダルい段階はすっ飛ばして、エースとギタギタンガの対戦で決着をつけました。

 実は…「ウルトラ6番目の弟」の原案は、当時、特撮班の助監督だった神澤信一さんが提出した脚本でした。ウルトラマンシリーズによくある、ウソつき少年モノに分類することも出来ます。普段の言動が悪い問題児が、「怪獣を見た!」と言っても、初動段階では信用されず、後でやっぱり本当だったというパターンです。イソップ童話では、ウソつき少年は狼に噛まれて死ぬのですが、ウルトラマンシリーズでは助かります。
 しかし、神澤さんの脚本では、ウルトラ6番目の弟を僭称した少年は死ぬのです。これは、ウルトラマンの根幹の思想に触れる議題になります。
 子供の気持ちがウルトラマンのエネルギーに変換される「ティガ」の最終回、ウルトラマンが憑依する人間を乗り換えていく「ネクサス」を経て、弱虫の保母さんでも、ちょっと勇気を出したらウルトラマンになれるという「メビウス」において、ウルトラマンは誰でもなれるというのが、現状での結論です。それでも、現在特撮監督の神澤信一さんは、誰もがなれないからウルトラマンなのだという思想は変らないと言います。命を賭して国家や民族のために献身した人がヒーローと呼ばれるのですが、その身命を差し出してなお、なれないものがウルトラマンなのだと。

 そこまで敷居を高くするより、広く門戸を開いたほうが商品展開が有利なことはわかります。しかし、ゼットンを倒すために格闘技を始めたと公言する、北陽高校の前田日明大先輩は「最近のウルトラマンは子供に媚びとる」と怒っていました。
 私が一番しっくりくるのは、子供が怪獣で、大人社会の常識の体現者であるウルトラマンに懲らしめられるという実相寺昭雄さんや小山内美江子さんの見方です。実相寺監督の場合、だからこそ、窮屈な社会を怪獣的バイタリティーでぶち壊せというメッセージも込められているのですが、小山内さんのヤメタランスは、まったく母親的視点で、根気の無い息子の性根をウルトラマンさんに叩き直してやって欲しいという附託でした。
 その勉強しない息子とは、後の俳優、利重剛。母子の本姓は笹平さん。ヤメタランスに手を焼く宇宙人ササヒラーのネーミングの由来です。ついでに…ギタギタンガのネーミングの由来は、円谷プロと親交のあった劇作家唐十郎の息子で、後年俳優になりマルシアと離婚する大鶴義丹。
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美川隊員


 宇宙船文庫「ウルトラマンA超獣事典」(昭和61年3月)。いま、CSファミリー劇場で「ウルトラマンA HDリマスター版」を放映中ですが、古い友達からメールが来て『美川隊員は子供の頃おばちゃんに見えたけど、いま見たらものすごく美人。』と書いてきました。
 いまごろ何を言うとるんじゃいと、私はもっと前に気付いていました。やはりファミリー劇場で「ウルトラ情報局」というコーナー番組があって、美川隊員役の西恵子がゲストで出てきました。その時点で、四十代後半くらいだったと思いますが、あんまり奇麗でびっくりしました。司会の鈴木繭菓が別の動物に見えたくらい。鈴木繭菓とは「ウルトラマンコスモス」で女子隊員をやっていた人です。ピンクパンダというバンドもやっていました。

 おばちゃんに見えたと言いますが、実は、南夕子役の星光子と同い年。ちなみに、北斗星児は山中隊員によく怒鳴られていましたが、高峰圭二と沖田駿一は同い年で裏では仲良し。ついでに、近野隊員役の山本正明は森次晃嗣と同い年で仲良し。
 では、西恵子と星光子は仲が良かったのか?映画斜陽期に日活に入り、そのままポルノ女優にされるよりは、怪獣女優と呼ばれた方がましという覚悟の西恵子。劇団(四季)の紹介でオーディションを受け、まさか変身するとまでは思わず、ウルトラ女優と呼ばれる将来を不安に感じていた星光子。その視線は別々の方向を向いていたと思います。
 邪推ですが…関かおりが撮影開始早々骨折したとき、南夕子役を西恵子にするという選択肢もあったはずです。そうならなかったのは、やはり映画で裸になっていたからではないでしょうか。そんな想像をすると、また西恵子が気高く見えます。

「ウルトラ情報局」での回顧談。美川隊員と言えば第四話「3億年超獣出現!」。私服の青い訪問着ですが、あれはこの回のために自分でデザインして、仕立て屋だったお父さんに作ってもらったとのこと。ものすごく良い話で、そのお父さんをウルトラシリーズの隠れた功労者として顕彰したくなります。しかし…視聴者が感じる一つの疑問を繭菓が代弁して尋ねました。「スカートが短か過ぎませんか?」西「そういう時代だったのですっ」
「エース」といえば迷走している感想があるのですが、時代が、日本が、迷走していたのです。総理大臣は田中角栄、あさま山荘事件は「エース」放送中に起こりました。

「エース」のメインライターは市川森一さんなのですが、橋本洋二プロデューサーと意見が合わず、最初しか書いていません。そのあとは、いろんな脚本家が思い思いに書いていきました。
 特撮現場も殺伐としていました。当時の円谷プロは怪獣ブームでものすごく忙しく「エース」は東宝映像に下請けに出されました。しかし、もともと東宝の子会社だった円谷プロの仕事を下請けせざるをえなくなった東宝映像側の気持ちはどんなものだったのでしょう。実際に東宝側のスタッフの本心を聴いた竹内博さんは、円谷一という人は、そういうところに配慮が無く鈍感だったと責めます。特撮美術を担当した鈴木儀男さんなんかは東宝の特撮スタッフにいじめられたそうです。

 迷走の果て…最終回になって、橋本プロデューサーは市川さんに書かそうとしたのですが、最初の設定がみな変更されていて、どうにもならなくなっていました。子供らに「仲良くしろ」とだけ言って、帰っていきました。あれしかなかったそうです。

 北斗星児と南夕子の本当の最後はどうなるはずだったのでしょうか。
 また、ヤプールとは何だったのでしょうか。英語表記ではYAPOOLですが、ヘブライ語ではYがJになります。多元宇宙の日本人ということか?キリスト教徒である市川さんには意図するものがあったはずです。それでいながら、企画書にはウルトラA(ウルトラマンA)は菩薩だとも書いています。世界を終らせるような壮大な叙事詩黙示録になっていた気がします。

ベロクロン


「ウルトラマン大全集Ⅱ」(昭和62年・講談社)「帰ってきたウルトラマン」から「80」までの本。しかしながら「ザウルトラマン」の怪獣は無視されています。あと「80」のザタン星人も載っていません。

 圧巻は橋本洋二プロデューサーと上原正三さんと市川森一さんの鼎談。同窓会の類の座談はだいたい失敗話や笑い話でなごやかに終始するのですが、森一さんが橋本さんに対して昔の恨みを蒸し返して激論になります。テーマの無い脚本は採用しないと持論を曲げない橋本さんに、テーマを主張することが面白いのかと森一さんは反駁します。市川森一さんは「ウルトラマンエース」のメインライターを任されるのですが一話を書いただけで、橋本さんに切られました。
 森一さんは、橋本さんが金城哲夫さんともよく衝突していたことを憶い出します。金城さんは自分が作り上げた円谷プロの作品姿勢を、後から来たTBSのプロデューサーが変えようとすることに我慢がなりませんでした。最後に橋本さんは、沖縄出身なら対馬丸の惨事について書けないかとサジェスチョンを出したのですが「しかし、金城君は書けなかった」…あたかも、脚本家として力が無かったともとれる言い方をしたため、上正さんが畏友金城を弁護します。沖縄の子供はアメリカ軍によって強制的かつ巧妙にアイデンティティーを奪われた事情があると。本土では教えない薩摩による琉球支配の歴史ばかり刷り込み、アメリカ軍の位置は解放軍と認識させたのです。中学卒業と同時に東京に出て来て15年経った金城さんには現実の沖縄はありませんでした。そこを衝かれた金城さんは沖縄へ帰ってやりなおすしかありませんでした。
 森一さんが言います。「あの時代に沖縄へ帰ることは脚本家として死を意味する」。実際、沖縄へ帰った金城さんはアルコール依存症に陥り失意のまま死んでいきます。こころないことを言ってしまったと橋本さんは悔やみ詫びるのですが、森一さんは、また別のことを言います。沖縄に帰って数年後、ひょっこり金城さんが遊びに来たことがあったのです。そのとき、東京に家を建てた上正さんを羨んでいたと言うのです。上正さんには初耳です。だとしたら、金城哲夫は上原正三に負けて死んだことになります。…こんな泥沼のような話しが蜿蜒と続くのです。

ウルトラマンエース


 星の数より多いウルトラマン本について書いていきたいと思います。ブログテーマが「特撮怪獣本」だったことをすっかり忘れていました。コンビニエンスストアなどで1000円くらいのムック本を見かけて、つい手を出してしまいます。いまどきの本なので写真は奇麗なのですが、内容はスカスカで読むところがありません。毎度毎度桜井浩子のインタビューばっかりです。本棚に入れることもできず、かといって捨てることもできず…仕方がないのでブログでぼやいてやろうとしたのです。そんな中で役に立ったのが「大人のウルトラマン大図鑑第二期ウルトラマンシリーズ編」(マガジンハウス)でした。「帰ってきた」「エース」「タロウ」「レオ」までのシリーズに加えて「ミラーマン」「ジャンボーグA」「ファイヤーマン」が載っています。この選別はまったく正しくて、怪獣改造の変遷などを調べていくときは、ウルトラシリーズだけでなく同時期の円谷プロ作品も見なくてはなりません。

 なによりもこの本の真価は怪獣のデザイン画がカラーで掲載されていることです。第一期の成田亨さんの仕事は画集にまとめられていますが、この時期の作品群には固定されたデザイナーがいなくて、池谷仙克さん、井口昭彦さん他10人くらいの人が描いています。誰の手によるかわからないものがあるという研究報告に慄然とさせられました。そして、米谷佳晃さんデザインのアイアンを描いてみたことが、このブログを始めるきっかけになりました。
プロフィール

ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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