ユートム


「宇宙船」について、しばらく書いていきたいと思います。三ヶ月に一回の刊行で、なおかつ購読者を限定する内容なのですが、この雑誌が世の中に及ぼした影響は小さくないのです。一例として、私は使わないのですが“着ぐるみ”という言い方も「宇宙船」が出所です。それよりも、創刊当時“特撮ファン”という存在が無かったのです。「特撮」という言葉も技術用語であって、現在のように国産怪獣映画・実写ヒーロー番組などのカテゴリーを想起させるものではありませんでした。アニメファンは既に勢力を持って独立しており、徳間書店の月刊アニメージュなどの専門誌も出ていましたが、特撮ファンは、まだ自覚すらしていなかったのです。「宇宙船」以前に出ていたファンタスティックコレクションを読んでみますと“SPFXファン”とも書かれていますが定着しなかったようです。

 それでは、創刊号(昭和55年・朝日ソノラマ)を見ていきます。巻頭特集は「SFファンによるオリジナルモデルコレクション 2Dを超えろ!3D.」SFイラストというジャンルは認知されていたので、「宇宙船」の独自色として選んだのが自作の立体造型物。企画者は聖咲奇さん。Vol.2以降、読者自作モデルの写真を募集したところ、ばんばん送られてきて、名物コーナーになりました。フィギュアとかディテールという言葉が一般的になったのも「宇宙船」の功績ではなかったか?コンテストなども催されるのですが、読者のなかには不器用な人もやっぱりいます。自分で造れないので譲って欲しいという手紙が増えてきます。モデラーは型取りして郵送してあげるのですが、これが、けっこういい商売になりました。趣味と実益を兼ねてホクホクです。そのうち、バンダイなどの玩具メーカーが、この人達に目をつけ、やがて日本経済の一翼を担うフィギュア産業に進展していくのです。

 現在、フィギュアは出来の良いものが簡単に購入できます。しかし、本当は、気に入ったキャラクターやメカを、自分で粘土やプラスチックで造って色を塗るものです。このことだけは強く言っておきたいのです。「宇宙船」の創刊当初のキャッチフレーズは『ビジュアルSF世代の雑誌』。SFといえば、ビジュアルとことわるまでもなく映画だと言う人の方が多いと思いますが、SFとは小説なのです。これが本当です。SF研究会に入って「スターウォーズが好き」と言ったら、たしなめられる時代があったことも併せて記録しておきます。   つづく
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アイアンロックス


「ウルトラセブンISM」(平成14年・辰巳出版)セブン正編、ファイト、ゲスト編、続編レオを網羅して、セブンの戦歴が俯瞰できる本。しかし、この本の真価ありがたさは、TVスペシャル二本とビデオ版の詳細が記録されていること。特にビデオは平成10年から14年にかけて途切れ途切れに発表されたので、それでなくても複雑な物語の全貌が把握しきれません。そんな平成ウルトラセブンが一冊にまとまっていることが私にとってはありがたいのです。こういうありがたくて便利な本を私は「ありがた本」と称して重宝しています。次回から「ありがた本」の特集をしていきたいと思います。今、急に決めました。

 ところで、歴史から消えそうなバップビデオの「ウルトラセブン」。必見とは言わずとも端倪すべからざる物です。ウルトラ警備隊役の出演者は固定されていました。つまり、この新レギュラーは四年間ウルトラ警備隊員であったわけで、オリジナルメンバーが制服を着ていた期間よりも長かったのです。忘れてならないのはカザモリ隊員です。モロボシダンからウルトラセブンを引き継いだはずなのに、「メビウス」以降のシリーズで無視されています。あいかわらず森次晃嗣がウルトラアイをつけています。
 また、カザモリ役の山﨑勝之は「仮面ライダー555」第4話で、ベルトを装着して一回だけ555に変身しました。これもまた重大なことではないでしょうか?

ギエロン星獣


「ウルトラセブン SFヒーローのすばらしき世界」(昭和54年・朝日ソノラマ)ファンタスティックコレクションNo.11。セブン本の決定版。その後、新事実が判明したり、新資料も発見されるのですが、この本に収録された池田憲章さんによる「総論」が「ウルトラセブン」の結論です。
 昭和58年「E.T.」が公開されて大評判になっていました。クラスの中にも「泣いたで」というやつがいたので、私も気になって観に行きましたが泣くことはありませんでした。偽物感とでもいう疑惑をわだかまらせて帰ってきて「泣くやつはアホじゃ」「泣かんもんは人間やないぞ」といった不毛な議論をしました。のちに、池田憲章さんが「藤子不二雄をこえるものではない」と喝破されているのを読んだとき、「E.T.」に感じた私の疑問は晴れました。べつにスピルバーグが偽物というわけではなく、自国に藤子不二雄という優れた漫画があるのに、その真価を知ることをせず、アメリカ製の大作映画を絶賛する風潮こそが偽物だったのです。爾来、私は憲章さんの言うことは信用することに決めています。
 その憲章さんが「映画秘宝」で日本の全SFテレビドラマの中で忘れ難い一本として選んでいるのは、丹波哲郎主演の「ジキルとハイド」。子供番組でないことが私としてはさびしいのですが、憲章先生が言うのならそうなのだろうと従います。

 ギエロン星獣。超兵器の実験で誕生したという伝統的本流出自の怪獣です。ビキニ環礁での水爆実験からはゴジラが生み出されたのですが、この水域の群島にのみ棲息していたとされるハナアルキが絶滅しました。小型の哺乳類で、スケッチは残っているのですが標本も写真も無いそうです。

ボーグ星人


「ULTRAMAN FILM BOOK ウルトラセブン」(昭和53年・小学館)別冊てれびくん②。小学生向けではありますが、ウルトラセブンのかっこよさを体現した本。かりにウルトラセブンを知らないという子がいたとしても、そんな者は無視する作り方。表紙はオープニングのセブンの横顔のシルエット。遠慮なくかっこいい。巻頭は「史上最大の侵略(後編)」のシナリオ完全掲載。私は映像作品のシナリオをここで初めて見ました。続くALL EPISODES OF ULTRASEVENというページがまた容赦なくかっこいい。フィルムからプリントした写真に説明をつけるのではなく、その回の名セリフが入っているだけ。宇宙人怪獣図鑑も手加減がありません。ゴシック体で英語表記されています。ALIEN PEGASSAとかぜんぜん読めないのですが、かっこよさだけは伝わってきました。

 かと言って、冷酷な本かといえば、むしろ親切過ぎるくらいな本。48話のあらすじに加えて未使用シナリオのストーリーまで紹介されています。制作No.、シナリオ原題、視聴率など、かゆくないところまでかいてくれるような放映リストも載っています。「ウルトラセブン」についてはこの一冊で十分かと思います。なお、裏表紙は広告なのですが、黒のボディーのランボルギーニ・カウンタックLP500Sのラジコンカー。これもかっこいい。

ギラドラス


 今回からウルトラセブン本を取り上げていきます。「ウルトラセブン研究読本」(平成24年・洋泉社)。壮絶のインタビュー集!これが最後のセブン本になるでしょう。この後に出た「ウルトラマン研究読本」になると当事者の記憶がヨレヨレになってきています。地下闘技場の最大トーナメントを前に五十五歳になった大山倍達が「よくぞ、まにあった」とつぶやく場面がうかびます。
 撮影当時十代だった人の記憶はやっぱりはっきりしていて、ピット星人役の高橋礼子の話はあまりに素晴らしかったので前に「怪獣ハウス」で引用しました。靴磨きのイタチ役で知られる山村哲夫はセブン当時中学生ながら、熱望して怪獣のぬいぐるみに入ったという人。貴重な証言が採録されています。高山良策さんの怪獣と言えば生命感のある表面のディティールしか知り得ないのですが、実は内側も丁寧に造られていたというのです。ボンドを使わずゴム糊でウレタンを貼っているので柔らかくて動きやすかったということ。針金で骨組みが形成されているのですが、中に入る役者に刺さったり痛くないようにと天竺木綿で内張りがされていたなど。心がこもった仕事です。そういえば、ずっと以前、海洋堂の現社長の宮脇さんが、現存する高山怪獣の内側を覗いて涙を流しておられたことを思い出しました。

 佐原健二と黒部進と森次晃嗣の対談も面白い。初の主役をチャンスととらえて張り切った森次晃嗣=モロボシダン、テレビの主役は映画スターの経歴に関係無いとわかっていながら「円谷のオヤジさん」の名前に瑕をつけてはならないと自覚していた佐原健二=万城目淳。そして、会社(東宝)の命令で否も応も無く引き受けた黒部進=ハヤタ。「五人の中で、なぜ僕だけが変身するのだろうと思っていた」という自覚の薄さ…。
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ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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