陽炎


「テレビジョンドラマ別冊 仮面の忍者赤影」(昭和61年/放送映画出版)。表紙になっている赤影の写真は宇宙船Vol.11の赤影特集や講談社特撮ヒーローマガジンの赤影の表紙にも使われました。「赤影」のスチール写真は少ないのかといえば、けっしてそんなことはありません。ただ、当時のことですから白黒フィルムで撮影されていたのです。このテレビジョンドラマ別冊には他の本で見ることのない貴重な現場写真が沢山収録されています。
 写真集のような本ですが、一つだけ「歌舞伎と赤影」と題した短い試論が掲載されています。前回予告して、私が今回書きたかったのは、この小論の受け売りで、「赤影」をより娯しむためには歌舞伎を識るべし。特撮ファンのたしなみとして歌舞伎鑑賞の推奨論だったのですが、自身がさほど歌舞伎に詳しくないことに気づきました。「赤影」について書こうとすると毎度しりごみしてしまいます。稀代の傑作「仮面の忍者赤影」について、いまさら言うべきことは無いのかも知れません。

 小心者のヘタレな私が勇気をふりしぼり、全特撮ファンを向うにして(なおかつ匿名のブログで…)特撮ヒロインナンバー1はアンヌではない。菱見百合子ではないと言い続けてきました。ナンバー1は「赤影」の陽炎です。以下、ぐだぐだとそう思う理由を述べていきます。
 ヒロインが最高であることの前提条件はヒーローが最高であることです。最高の男を相手にした上で負けない女でなくてはなりません。世間の例として、日本一かっこいい男キムタクの嫁があれでいいのかとか、世界最強の高校生範馬刃牙の彼女があんなくだらない女でよいのかと他人事ながら不満になります。そういえば、我々の世代はコロコロコミックやテレビくんに洗脳されて、セブンがウルトラ最強のファイターという認識を刷り込まれてきましたが、虚心坦懐にファーストセブンを見直すと、モロボシダンというのは、けっこうたよりない男です。アンヌみたいなぬけた女がお似合いかも。なるほどベストカップルでした。
 赤影は完璧に近い男です。この男に何をもって対抗するのか?忍術者として同等の技倆を有するというキャラクター設定も考えられますが、それではストーリーを破綻させます。電波人間タックルなど失敗例は枚挙に暇がありません。陽炎はといえば戦闘においてはほとんど無力です。
 地位や財産でヒーローを上回るという手段もあります。「あしたのジョー」の白木葉子のパターンです。しかし、地位ということで見れば影一族の頭領の家に生まれた赤影は、青影の姉陽炎より身分が上です。赤影と、青影、白影は仲間ではなく主従なのです。
 劇中、陽炎に付与された特性は盲でした。怪獣の胃袋の中も透視する眼力を持つ赤影に対して、陽炎は盲。サンヨー電機がスポンサーになりカラーテレビを普及させるために作り上げられたという極彩色の世界にあって陽炎は盲なのです。色即是空。無限変幻多彩の赤影忍法も亦空とする絶対真実。また、盲であるということは、男ですら見とれてしまう赤影の美しい顔が見えないのです。もったいないと思うのは凡俗の妄念。盲の陽炎にして、外見に迷わされず赤影の美しい心を知ることができるのです。
 その最終回。超人、怪人、怪獣入り乱れての無差別級バトルロイヤルを勝ち抜いて忍者の頂上を極めた赤影は、チャンピオンにのみ許される黄金の仮面を着けます。しかし、そこは魔界の入り口であり到達点でありながら通過点です。これより人の住む場所まで降りてきて武芸の道は完成します。赤影を、その場所まで間違いなく導いてくれるヒロインこそ陽炎だと思うのです。
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蟇法師


★特撮ひっかけクイズ第2問。霞谷七人衆で赤影と最初に戦ったのは誰でしょう? 答 鬼念坊。第一話のサブタイトルになっている蟇法師ではありません。ということで「宇宙船」Vol.11(昭和57年8月)は「仮面の忍者赤影」大特集。全四部の忍者と怪獣が完全に紹介されたのはこれが初めてだったといいます。作品資料やインタビューとともに、「赤影」がそれまでの忍者映画と忍者漫画の集大成であったことを表すために作成されたチャート図が興味深い。「赤影」と直接的に関係のある漫画は「伊賀の影丸」(横山光輝)と「ワタリ」(白土三平)なのですが、杉浦茂さんのナンセンス忍者漫画も確実に参考にされています。

 赤影の活動範囲は現在の滋賀県和歌山県あたりで、いま私のいる場所から日帰りで行けますが、第二特集は宇宙に飛び出す「宇宙Gメン」昭和38年日本電波映画製作。ビデオテープで見たことがあるのですが、カラー作品かと思うくらいフィルムが茶色になっていました。保存されている設定集や美術資料を見ると高い心意気が感じられますが、完成した映像はやや辛い。宇宙艇のコクピットが木製です。気密性に問題あり。宇宙艇と交信する管制室も木製品が多く、お好み焼き屋くらいの広さ。宇宙の覇権をかけて戦うストーリーではあるのですが、撮影場所は基本京都なので、「赤影」と共通する俳優も出ています。レギュラーでは織田信長役だった倉岡伸太郎。ちょっと検索してみましたら、昭和40年にブロマイド売り上げが一位になったほどの人気者だったようです。倉岡伸太郎で私の印象に残っている役は「あかんたれ」で大人になってからの丁稚音松。最後はこいさんの岡崎友紀と結婚しました。この岡崎友紀という人がマルベル堂のブロマイド売り上げ歴代二位だというのを聞いたことがあります。ならばオールタイム一位は誰かといえば、おそれおおくも軍神山本五十六。
 一度だけ浅草のマルベル堂へ連れていってもらったことがありますが、有名な老舗とは思えないほどの狭さに驚きました。ブロマイドといえば……子供の頃、通信販売で宮内洋のブロマイドを買ったのを母親に見つかって叱られた苦い記憶がよみがえりました。

金目像


 「仮面の忍者赤影」の怪獣について考えてみます。とはいっても、前回のコメントでトムさんが証言してくださいましたように、忍者ドラマに怪獣が出ることについて、年少視聴者ですら疑問を感じていたというのです。第三部以降ゾロゾロと現れた粗い造りの怪獣どもは、作品のクオリティーを下げたと見るのが結論でしょう。しかし、私のような怪獣バカには、怪獣の出ない「赤影」なんて考えられません。前半に登場する大きめのクモとかカエルが、忍者派と怪獣派の妥協点で、このへんでとどめておけばよかったのかと思います。
 先週買った「伝説の昭和特撮ヒーロー/宣広社全仕事」(コスミック出版)を読んでショックを受けています。「仮面の忍者赤影」の原点が宣広社制作「隠密剣士」であることは承知していましたが、白黒の地味な番組と見ておりました。ところが、これが当時、大人気番組で、一世を風靡するどころか後の忍者のスタイルを決定したというのです。認識不足と言うより無知でした。赤影怪獣をもっと描こうと思っていたのですが、やめます。

赤影・青影・白影


 むさぼるように特撮をみてきたら、怪獣ファンらしからぬ結論にたどりつきました。後世に残るものは登場人物が良いということです。怪獣の造型はすばらしいけど忘れられた作品については、また怪獣ハウスでとりあげて供養していくつもりですが、怪獣はまずかったけど、出演者が良く不滅の名作になった例として「仮面の忍者赤影」を挙げます。
 「仮面の忍者赤影」はアニメをふくめて三度リメイクされるのですが、オリジナルの魅力に近づくことはかないませんでした。技術が進みお金をかけても再現できないものは、東映京都撮影所が時代劇を作るために着物や小道具とともに保管していた役者の「顔」です。奇相鬼面の怪優たち。平成の日本で霞谷七人衆や根来十三忍を集めることは、もう無理でしょう。阿波地大輔とか小田部通麿とか泣く子も黙る迫力の面構えです。主役を演じた坂口祐三郎にしても、美形すぎて役にめぐまれず、漫画風の仮面で顔を半分隠してようやくテレビに受け入れられたというのですから、これも一つの奇相と言えます。初期の話数では仮面を取る場面もあるのですが、子供に不評で、後半は素顔を見せません。
 良い出演者とは有名スターという意味ではありません。坂口祐三郎、金子吉延、牧冬吉この三人のとりあわせが最強なのです。特撮は出演者で決まるという私の暴論は、しばらく続けていきたいと思います。
プロフィール

ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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