デボノバ


 「宇宙船」Vol.18(昭和59年6月)。今号より隔月刊になります。巻頭カラー頁はJAC。練習風景の取材とメンバーへのインタビュー等。東映ヒーローが日本特撮のスタンダードになっていく徴候がはっきり顕われてきました。ゴーグルブラックでようやく我々がその名を知る春田純一は、なんと「柔道一直線」「仮面ライダー」にもスタントマンで出ていたという……!
 特集は1957年ハマープロ製作の「吸血鬼ドラキュラ」。ドラキュラス、ドラキュラン、ヒルドラキュラ等、ドラキュラを剽窃した日本の怪獣、怪人をいくらでも挙げることができるのですが、原典を知らないのは知識として畸形だと恥じて、ブラム・ストーカーの原作を読んでみたことがあります。ものすごく厚くて活字が小さくて、読了するのに半年ほどかかったような記憶があります。面白いとか怖いとかというよりも、東ヨーロッパの風景が想像できないので、ただ羅列された活字を辿っただけでした。特撮ファンとして一つの苦行を修したという事実だけは残りました。それにしても、ヨーロッパの景色というのは想像しにくいものです。「アルプスの少女ハイジ」にしても青森県の山奥に棲むほっぺの赤いペチャッとした顔の女の子の話だと無意識下で思っていたようです。外人の少女が演じる実写のハイジを観たとき、ものすごい違和感がありました。

 第二特集は「悪魔くん」。これは平山亨さんが初めて手がけた特撮番組であり、もちろん大傑作であり、「ウルトラQ」と並ぶ歴史的重要な作品ですが、私個人としては思い入れがありません。よく出来すぎた優等生のような印象があります。
 高山良策怪獣製作日記は昭和47年4月1日から6月5日。「シルバー仮面」「快傑ライオン丸」そして、池谷仙克さんが持って来たと思われる「ダイゴロウ対ゴリアス」。今回はその中からデボノバを描いてみました。両眼があるように見えますが、実はタイタンのような一つ目にまぶたが垂れ下がっているのです。ここぞという時に、巨大な目を見せて驚かせるはずだったのですが、そのギミックが仕掛けられた頭は造られなかったようです。ゴースン党の幹部怪人として登場したデボノバだったのですが、個性的な一匹狼型怪人に人気をさらわれ、強敵というより人望の無い管理職のような立ち位置になってしまいます。「悪魔くん」について語るには、私はその任にないのですが、「快傑ライオン丸」の話ならもっともっとしたいのです。
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ゴースン


 「快傑ライオン丸」は全54話なのですが、大魔王ゴースンは第27話で姿を見せます。怪獣のような巨人でまったくかないません。以降のストーリーはゴースンの秘密を探す旅になります。魔界の王をなのるゴースンですが、もとは人間だったことがわかります。ジャラモンの妖術を会得するために海を渡った七人の日本人の一人でした。七人のうちに果心居士もいました。(ゴースンの人間体を演じるのは天津敏)獅子丸らは一人一人を訪ね歩き、ゴースン唯一の弱点は巨大化したときに胸に顕われる紋章であることを知ります。ただし、これは象牙の槍でのみ突き破れるのですが、そこまで獅子丸に伝える前にゴースンの実兄桃雲斎は逝きます。タイガージョーは象牙の槍のことだけ知り、胸の紋章の急所は知りません。視聴者は、この二人が最後に力を合わせてゴースンを倒すのだろうと予想し、またそれを望みます。しかし、最終回はそうなりませんでした。一人でゴースンに挑んで敗れたタイガージョーは瀕死の重傷を負い、ガンドロロになぶり殺しにされます。ライオン丸はゴースンの口から体内に飛びこみ自爆しました。
 タイガージョー、ライオン丸、ネズガンダ、ムイオドロ、トビムサシ、ガマウルフ……そして、ゴースン。自分だけの美学に命をかけて、強烈に生き、無様に死んでいった男たちの物語です。熱い感動が胸にこみあげてきます。ただし!これを女に観せると、不細工なぬいぐるみ劇と笑われて終りです。

タイガージョー


 虎錠之介は最強の剣士たらんとする志を立てました。そのためには他者を斬り続けなくてはなりません。戦国時代とはいえ、こんな者は人間社会からはみ出します。大魔王ゴースンは錠之介に目をつけ、タイガージョーへ変身できる魔剣「銀砂地の太刀」を与えました。現在のスポーツルールならドーピング違反になりますが、ナンバー1剣士になることとタイガージョーの能力を得ることは錠之介のなかで矛盾しません。極端に個人主義で連携プレーのできないタイガージョーはゴースン配下の怪人どもにも疎まれます。ただ一人、錠之介の心がわかる男がいました。獅子丸です。この時代には「自由」という言葉も概念もありませんが、二人は無意識下ではげしくそれをもとめて苛立っていたのです。獅子丸の自由を縛るものは師の遺言です。ゴースン打倒の使命は若い欲望に優先します。獅子丸がふと羨ましくも見る錠之介にしても自由ではありません。最強になるという自分との誓いが、現実世界と妥協を許さないのです。タイガージョーの剣は、やがてゴースンに向ってゆきます。無謀な暴走のように見えますが、自己撞着ではありません。この世で一番強い存在が大魔王ゴースンならば、それは倒さなくてはならないのです。自分が虎錠之介であることを証明するために。     つづく

ネズガンダ


 ライオン丸の戦う敵は怪人とよばれます。ゴースン直属の幹部的怪人と、日本各地に偏在し人間に畏怖されながら土着するゴースン党所属怪人とに大別することができます。土着型のものは民話の妖怪の概念で描かれます。妖怪対忍者。これほど相性の良い取り合わせはなく「快傑ライオン丸」の基本構造は盤石です。
 これが、第14話「さすらいの怪人ネズガンダ」で次の段階に進みました。ネズガンダはゴースン配下ではありません。手裏剣を発射する二丁拳銃が必殺武器のさすらいの殺し屋。契約してライオン丸と戦います。こういう職業が似合うのは開拓時代のアメリカしかないのですが、西部劇映画の要素を取り込んで「快傑ライオン丸」はさらに面白くなります。ネズガンダ以降の怪人は発想が自由になり、強烈な個性を持って登場してくるのです。野暮、無骨、偏屈、強いことはひたすら強い。

 そもそも妖怪とは、秩序に従えずに共同体から排除された者や、不具で生まれたことで山に捨てられた子供の暗喩でした。こういう人々が生きるために佶屈した精神と特殊な技術を身につけて法治社会に脅威をあたえるようになります。それを鬼とか妖怪になぞらえました。
 第24話「ライオン飛行斬り対怪人トビムサシ」。盲であるため村から捨てられた娘を拾い山小屋で一緒に暮らすトビムサシ。目の見えない女と怪人の間には深い愛情があるのですが、トビムサシはけっして女の手に触れることはありません。触れれば自分が人間でないことを知られるからです。哀愁がただよいます。リアリティーを超えたファンタスティックが「快傑ライオン丸」なのです。    つづく

オロチ


年頭に描いたライオン丸の記事が、なぜか藤山寛美の話になっていました。遺憾にたえ得ません。じつに、特撮ファンとしての私は「快傑ライオン丸」こそ昭和46年から大量に製作された子供番組群の中で、その完結性において最高傑作であると思っているのです。物語は、織田信長の使者を騙って飛騨山中に現れたオロチが果心居士を謀殺すところから始まります。時代は信長が覇権をつかむ以前です。織田信長、果心居士の名がファンタジーのリアリティーを支えます。そして、果心居士の弟子、獅子丸、沙織、小助は仇討ちの旅に出ます。果心居士と獅子丸らは、戸沢白雲斎と猿飛佐助の関係に相似します。原作者らの世代が馴染んだ立川文庫の王道セオリーにのっとってストーリーが開始されるのです。
 仇討ちということなら、オロチ一名を倒せば終るのですが、果心居士の遺言は「ゴースンを倒せ」。ゴースンとは日本中の怪人を支配する大魔王。戦乱の象徴のように提示されます。仇討ちよりも戦争の根源を断つというテーマにすれば、現代人でも共感できます。獅子丸ら三人は戦災孤児です。ところが、ドラマの中ではこの目的に共闘し旅に加わろうとする者は出てきません。怪人退治のために訪れた土地でも歓迎されず、むしろ迫害されます。旅の理由に疑問を持ち、くじけそうになります。忍者が活動する場合は大名などの政権のスポンサーがあるのですが、この三人にはありません。家族も縁者も無く、広い空の下に三人だけ。そんな寂寥感が「快傑ライオン丸」の雰囲気です。    つづく

プロフィール

ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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