マグネドン


 宇宙船文庫「帰ってきたウルトラマン怪獣事典」(昭和61年3月)よりマグネドン。じつは「タイガーマスク研究会」から怪獣ハウスへ飛ぶバナーのシルエットもマグネドンです。
 昔……ポピーから「キングザウルス」というシリーズでウルトラ怪獣のソフビが発売されていました。おもちゃ売場で見ていたら、背後から母が「一つ買うてやるで」と言ってきました。そんなことを言われたのは初めてで驚きました。このアホには勉強せえと言ってもムダだと見限られたのかと背筋が寒くなりました。それはそれとして、せっかく買ってくれると言うのです。買ってもらおうではありませんか。
 ところがです。この中から一つだけとなると、どうにも選べないのです。レッドキングにしよか…いや、もっと珍しいやつにすべきか…グズグズ迷っていたら、小さい子供が来て「あっ、これもの凄うカッコいい」と即決でマグネドンを持っていったのでした。

 マグネドン。デザインはプロデューサーの熊谷健さん。素人だと甘く思ってはなりません。「帰りマン」最強の人気怪獣ベムスターも熊谷さんのデザインです。顔の位置が低いのでMATが地上戦をするときに目線が合います。その際、首の後ろの絶妙な位置から生えた角が威圧し圧迫してきます。名前の通り強い磁力で飛行機の計器類を狂わすため、高空からの攻撃が無理なのです。

 マグネドンが登場するのは第20話「怪獣は宇宙の流れ星」このサブタイトルでは宇宙から来た隕石怪獣かと思いますが、地球の怪獣です。『いや、校庭に落ちた隕石を次郎が持って帰ったら怪獣になったような記憶がある…』という人がいると思いますが、それは前の回のサータンです。では出身地はどこかといえば、北極の地底!氷の中ということでしょうか?その下は海なので、さらにその下ということか?そして、どんなコースを通って日本に来たのか?理由は?
 脚本は石堂淑郎さん。脚本家として既に映画界に重きをなしていた人です。晩年は時事評論を連載して日本の御意見番と呼ばれていました。最晩年は“賢人”の称号で紹介されていました。しかし、ウルトラファンにとっては、永遠のバカライターです。とりあえず雑。

 とにかく雑。マグネドンはダムに迫り、チョコっと穴を穿ちます。水が漏れてきたところで郷秀樹がウルトラマンに変身。ウルトラブレスレットをペチャっと貼りつけてダムの穴を応急処置。そうしておいてマグネドンと戦うのですが、こいつがなかなか強い。地球の無限の磁力をエネルギーにしていることに気づいたウルトラマンは、地上から離して宇宙へ連れ出そうと思いました。ダムの穴をふさいでいたウルトラブレスレットを戻します。へ⁈(°_°)当然ながら、また水が漏れ溢れてきます。
 ウルトラマンはブレスレットを光のロープに変えマグネドンを縛り上げます。そして、宇宙へ。その後のダムの描写は無し。

 さて、宇宙へ出ました。この時点で普通の動物は死にます。死なないまでも事態は解決です。しかし、ウルトラマンは引力がありそうなどこかの星に着陸。引力があるということはマグネドンの喜ぶ磁力もあります。ウルトラマンはわざわざ不利な状況を作って仕切り直し。格闘再開。またまた苦戦。結局ブレスレット頼みで辛勝。マグネドンは粉々になりました。その粉砕されたマグネドンのかけらが地球に降りそそぎ、大気圏で燃えます。ここでサブタイトル「怪獣は宇宙の流れ星」の意味がわかります。まて⁉(`o´)やっぱり納得できません。よその星で砕けた肉片が地球に降ってくるなんてことはありえません。これが、石堂脚本です‼

 石堂さんの次作が第23話「暗黒怪獣星を吐け!」。さらにひどい問題作なのですが、石堂さんが参加してから、20%を切りかけていた視聴率が恢復したというのです。以降のシリーズでも、視聴率が下がってくると石堂さんに脚本を頼みに行きました。「ウルトラマン80」の最終回も石堂淑郎脚本。「あ!キリンもゾウも氷になった‼」というサブタイトルで、昭和のウルトラエピソードの掉尾を見事に辱めてくれました。
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佐久間良


 前回のつづき。宇宙船文庫「24年目の復讐ー上原正三シナリオ傑作集ー」から、「帰ってきたウルトラマン/キミがめざす遠い星」、放送タイトル「怪獣使いと少年」。

 シナリオを読んで、完成作品を見直し、確信に至ったのですが、ムルチはメイツ星人が連れてきた怪獣ではなく、地球の魚が水質汚染で畸形化したものです。あげくに、ウルトラマンに口を裂かれ、スペシウム光線で焼き殺されました。この悲しい物語の中の悲しみのアイコンです。「怪獣使いと少年」というサブタイトルはTBSに納品するときに内容をぼかすためにつけられたものだと思います。この題名だと、狡い宇宙人が少年を惑わすストーリーを想い浮かべます。また、メイツ星人が怪獣を伴って地球の調査に来たのなら、侵略行為と看做し地球人はこれを裁くことができます。

 この回は地球人と宇宙人の話ではなく、日本人と朝鮮人の話です。舞台となった川崎は、関東大震災のおり朝鮮人虐殺が行われた場所です。商店主やサラリーマンなど、善良な庶民が暴徒になりメイツ星人を襲撃する場面があります。棒、竹やり、鎌等、時代錯誤かと思える武器ですが、これは震災当時の自警団の得物です。メイツ星人は警官が発砲した銃弾二発で絶命するのですが、往時の朝鮮人は、農器具みたいな殺傷能力の低いものでメッタ打ちにされて死んでいったのです。これは残酷過ぎてテレビドラマでは再現できません。
 殺傷能力が低いと書きましたが、それでも被災全地域で、名前と場所が判明しているだけで、2613名の朝鮮人が虐殺されました。これに追加して、朝鮮人に間違えられて殺された日本人57名。支那人9名。自警団等による殺戮は震災が発生した大正12年9月1日から10月30日まで行われていました。警察も憲兵も庶民の暴動を抑えることが出来ず、新聞は『不逞鮮人、混乱に乗じて強盗、放火、井戸に投毒』というデマを記事にして広めたため、全国的な行動になってしまいました。

 戦後になっても、大阪の少年どもは「(朝鮮人)狩り」という遊びをやっていました。おそらく、川崎でもやっていたのではないかと推測します。かくも残酷で愚かな日本人を、ウルトラマンが救済する理由はあるのでしょうか?人種差別は世界中にあるし、日本人移民も海外で迫害されてきたと言うのは、論点をずらした弁解です。ウルトラマンが問い糾すのは日本人と朝鮮人の関係です。さらに、帰属集団から離れて『おまえは、どうなんだ』と詰問するのです。

 川崎の河原で穴を掘り続けている少年がいます。
 北海道の炭坑が閉山し、出稼ぎに行ったまま帰ってこない父を捜して、この河原でムルチに襲われました。助けてくれたのはメイツ星人でした。河川敷の廃工場で二人で暮らしていたのですが、宇宙人であることがばれて殺されてしまいました。少年はひとりぼっちになってしまいました。
 少年の名は佐久間良。
 学校へも行かず、勉強もせず、テレビも観ず、漫画も読みません。人間にも地球にも絶望しているので、ウルトラマンもいりません。金も無く、力も無く、知恵も無く、いじめられてもいじめられても耐え続け、地面にはいつくばり虫けらのように生きています。救いようのない話かと見える「怪獣使いと少年」に、たしかな答がありました。佐久間良の生き方こそ、美しくて凛々しくて、正しい。

アーストロン


「ウルトラ怪獣入門」(大伴昌司構成/小学館)初版は昭和46年9月10日。私が持っているのは昭和52年9月30日発行の第18刷。「レオ」も終了しているのですが、改訂加筆はされていないようで、「Q」から「帰ってきた」の1クールまでの怪獣しか載っていません。この間の昭和48年1月に大伴昌司さんは気管支喘息で永眠されています。しかし本当に面白い本で、ロングセラーになったのも当然です。怪獣図鑑のほかに怪獣仮想対決や怪獣撃退作戦などの読物があります。楽しいのは怪獣利用法です。怪獣を飼いならし災害救助に出動させたり、建設工事をやらせるという発想です。テレスドンやザラガスが火事を消したり、ガボラがトンネル工事をしているイラストが素晴らしい!

 また、この本はハードカバーの叢書でケース入りでした。最近は珍しいのですが、昔は漫画単行本でもこの形でした。戦前の「のらくろ」などは布張りの表紙で化粧箱入りです。しかも全頁色刷り。これで定価は1円。現在の貨幣価値に換算したら2000円くらいでしょうか?ただし、印刷などの工程に職人技が必要で2000円では復刻できないそうです。戦前の日本の豊かさがわかるのは、こんな豪華な漫画本や金属製の軍艦模型が農家の納屋などから出てくることです。かつては、どんな町にでも本屋があり、玩具屋があり、映画館がありました。いまは駄菓子屋すら無くなってしまいました。怪獣の居場所はまさにここなのです。田舎の子供が怪獣にふれる機会が無くなってしまいました。
 駄菓子屋すら無い田舎とは対蹠的に、都会ではコンビニエンスストアが乱立しています。私はこの状態を危機感を持って眺めています。そして、パチンコ屋とか学習塾といったつまらない場所は田舎にもあるのです。
 大伴昌司さんについて書くつもりが話がそれましたので、次回にします。

帰ってきたウルトラマン


 ミラーマンのところで円谷一監督の名前を出したので、怪獣ハウス仕切り直し第一回は、円谷一著「特撮のタネ本」私は伊丹グリーン劇場の特撮大会のオークションで入手しました。昭和45年芸術生活社刊。円谷英二が依頼を受けた仕事だったのですが、突然の帰天のため長男の一監督が引き継ぎました。内容は家庭用8ミリカメラで可能な特撮テクニックの解説書です。いまとなっては実用書としての役目を限りなく終了しています。しかし、手島増次著「アマチュア映画のトリック技術」という本が昭和13年に出版されていました。戦前から家で特撮映画を作っていた人達がいたのかと思うと、この民族のマニアックさに驚きます。

 特撮ファンにとっての「特撮のタネ本」の資料価値は、各所に挿入される実作での苦心談なのですが、そこに難点があります。この本は全章一人称で書かれているのです。円谷英二の仕事も一監督の仕事も「私は」で書かれるので混乱します。著者名義は一さん一人なのですから、そのまま読むと、引用される「ゴジラの逆襲」「空の大怪獣ラドン」「日本誕生」などの東宝映画の特撮まですべて円谷一監督の功績になってしまいます。父の遺稿を絶筆として手を加えることをしなかったのだと解釈してもよいのですが、本作に関わった東宝側の人からすれば看過できない記述です。一さんは東宝で特撮の仕事を手伝っていたのですが、映画の将来性に見切りをつけてテレビに行った人です。昭和45年ともなると映画とテレビの地位は完全に逆転していました。
 実は「ミラーマン」の解説文の中で、竹内博さんは、怪獣ブームの終焉が日本特撮の崩壊に直結したことは一さんの責任だったと糾弾しているのです。円谷一さんはそれほどの力を持っていたのです。

ベムスター


 ベムスターに負けたウルトラマンのために、ウルトラセブンがウルトラブレスレットを持って助けに来てくれます。第18話「ウルトラセブン参上」。しかし、「帰ってきたウルトラマン」という番組の主題を考えれば、その役どころはセブンではなくて初代ウルトラマンでなければなりません。勘繰るに今回が脚本初参加の市川森一さんは、帰ってきたウルトラマンと初代ウルトラマンを同一の者と思っていたのではないでしょうか?この時点ではゾフィーを長兄とするウルトラ兄弟の設定はまだ出来ていません。

 そこで前回の疑問のつづきですが、30歳未満の登場人物に第二次世界大戦の記憶がある「帰ってきたウルトラマン」を1970年以前の物語と考えてみます。「ウルトラセブン」の設定年代は放送時から20年後の1987年でした。「ウルトラマン」でジャミラの墓碑銘に刻まれた没年は1993年でした。これはどういうことかというと、地球人側から見た場合、初代ウルトラマンの方が帰ってきたウルトラマンになってしまいます。ややこしいけどそうなります。宇宙でブレスレットを渡したセブンは、この段階では地球に来ていません。
プロフィール

ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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