大瀬康一


 子供のヒーローシリーズを続けて大瀬康一を描いておきます。藤田進の場合とは違って、当時の人気を想像することは容易です。貴公子然とした顔と「月光仮面」「豹の眼」「隠密剣士」で主役を演じた実績を見るだけで、もう十分。それでもやっぱりリアルタイムで知る子供の話しを聴いてみるのは大事と「大瀬康一は人気があったんでしょう」ともっていったら、「一番かっこよかったんは『バックナンバー333』や」と想定外な答えが返ってきました。『バックナンバー333』?特撮ヒーロー史に出てこないタイトルで、そんな番組本当にあったのかとも疑ったのですが、後年、大阪で作られたテレビドラマについて調べていたときにポロッと『バックナンバー333』が見つかって「これかいな…」と思ったことがありました。
 月光仮面のおじさん祝十郎は、家に帰ると白いタイツを和服に着替えて、居間に座って煙草を一服。このとき大瀬康一さん21歳…渋い!最近の変身ヒーローは、まず煙草を吸いません。私の憶えているかぎりでは快傑ズバット早川健が最後です。アオレンジャー新命明も吸っていました。煙草を目の敵にする近年の風潮がいやなので、変身ヒーロー諸君に喫煙を奨励しようかとも考えたのですが、宮内洋は煙草が原因で閉塞性動脈硬化症になったそうな。
テレビ
「月光仮面」「遊星王子」「豹の眼」「隠密剣士」「バックナンバー333」
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藤田進


 本多猪四郎さんが円谷英二に出会ったのは昭和19年製作「加藤隼戦闘隊」。本多さんはまだ助監督。この映画を上映会で観た私は、ナレーションが平田昭彦なのが謎の一つだったのですが、なにより加藤戦隊長がヤマオカ長官だったことに驚きました。あんな無骨なだけの男が映画の主役になれる時代があったのか!と。細かい芝居もしなければ笑わせもしません。最近になって、「姿三四郎」を國民学校四年生で観られた小林信彦さんの書かれたもののなかの、藤田進は「戦時下の少年のヒーロー」だったという一文を読んで納得しました。「これは、リアルタイムで接した観客にしかわからないと思う」とも書かれていて納得せざるを得ませんでした。
 映画「加藤隼戦闘隊」が完成したすぐあとに、本多さんに召集令状が来ます。三度目の兵役でした。さて、前回書きましたように、第一聯隊はもう東京におりません。満州に行った第一聯隊は関東軍の旗下に入り、対ソ戦に備えていたのですが、盧溝橋事件の鎮圧に出動し、一旦朝鮮に引きます。ここで事変は終熄せず、一聯隊は大陸奥地の重慶をめざして進撃していきました。最初は北支事変と呼ばれていたのですが、それが支那事変になり大東亜戦争に呼称は変ります。昭和19年急遽南方に転戦し、フィリピン・レイテ島の攻防戦で全滅。しかし。本多さんは敗戦の日、揚子江の辺りにいます。令状を受け取ってすぐに原隊に復帰しようとしたのですが、フィリピン行きの船の出発に間にあわなかったのでした。
 映画監督を本志としていた本多さんは執拗とも思える招集にうんざりされていたのですが、帝国陸軍も本多さんを必要と考えていたのではないでしょうか。怪獣映画やSF映画などの特殊なものから「鉄腕投手稲尾物語」といったお仕着せ企画まで、スタッフ出演者を指揮してソツ無く水準作品に仕上げる才能は、状況が変化する最前線で小隊を率いて作戦を実行する能力と共通すると思えます。表題の藤田進はといえば、無難につとめれば誰でも一年半くらいで一等兵になれるところを二等兵のまま除隊させられ二度と招集されません。上級者を殴り返すような性格だったからです。真面目な人だったとは思います。真面目と言えば本多さんの真面目は有名です。軍隊としてもぜひ来てほしかったのでしょう。

 藤田、本多さんと同世代なのですが、黒澤明監督と伊福部昭さんはまったく兵役に就いていません。国家総動員法で表現活動は制限されるのですが、本物の才能は保護されたのでしょうか。
映画
「モスラ対ゴジラ」「宇宙大怪獣ドゴラ」「フランケンシュタイン対地底怪獣」
テレビ
「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「帰ってきたウルトラマン」

嵐寛寿郎


 宇宙船のインタビューで、石森章太郎先生は、仮面ライダーとキカイダーは自身でも傑作デザインだと思うが、嵐は失敗だったと語っておられました。原作漫画でも、主人公ハヤテは途中から嵐の姿に変身しなくなりました。私も口に鉄格子が嵌っているのがいやです。ものが食べられないし、お茶を流し込んでもむせてしまいます。テレビの方も路線変更や設定追加を重ねて方向性が定まらなくなってしまった憾があります。裏番組に「ウルトラマンA」があったために視聴率競争で苦戦をしいられたことになっていますが、実情は同時期の同系統の作品「快傑ライオン丸」に人気をうばわれたのだと思います。お家芸で東映は惨敗したのです。以後、東映は子供向け時代劇を作っていません。

 しかし「変身忍者嵐」は重要な作品です。伊賀の頭領百地仙人役で嵐寛寿郎が出演しているのです。鞍馬天狗を演じて戦前戦中の子供の圧倒的ヒーローでした。竹中労さんの名著「聞書アラカン一代」の中に「鞍馬天狗以外に神は無かった。」という一行があります。あとの世代の想像しえない絶対的で切実なおもいが迫ってきます。鞍馬天狗をヒーローと呼ぶなら、戦隊や平成ライダーなどおこがましくてヒーローとなのれません。
 日本初のテレビ映画を受注した宣広社は、本当は「鞍馬天狗」をやりたかったのですが、予算の都合で現代劇に翻案したのが「月光仮面」です。宮内洋が仮面ライダーV3風見志郎役に選ばれたとき、演技プランの基本は鞍馬天狗だったと、これはご本人の口からうかがったことがあります。そして「変身忍者嵐」で百地仙人がハヤテに忍術大秘鑑天地之巻を託した場面こそ戦前と戦後の変身ヒーローのミッシングリンクが繋がった瞬間でした。日本一の人気剣戟役者でありながら、子供向け映画に多く出演していたことで評価されないという微妙なところも含めて、嵐寛寿郎を特撮俳優の列に入れたいと思います。
映画
「岩見重太郎 決戦天橋立」
テレビ
「変身忍者嵐」

安藤三男


映画
「月光仮面」
テレビ
「七色仮面」「河童の三平妖怪大作戦」「ジャイアントロボ」「仮面ライダー」「変身忍者嵐」「人造人間キカイダー」「イナズマンF」「仮面ライダーアマゾン」「秘密戦隊ゴレンジャー」「スパイダーマン」「電子戦隊デンジマン」「宇宙刑事シャリバン」

 別冊宝島「特撮ニッポン」の文章がひどかったといった話のつづき。去年の颱風18号で罹災した生家(京都府)のかたづけに帰ったとき、昭和16年刊「標準漢字必携」という小型の本を見つけました。字引かと思ったらこれが新聞校閲の本でした。序文で、わが國民は國語への尊重愛護の觀念が發達しておらず、國語國字の誤用に對しても独英佛にくらべて社會的制裁もゆるやかと嘆かれ、本分を読みすすめていくと、新聞記者や小説家でも正確自在に驅使しうる者もはや絶無ともあります。昭和初期でこんな状態ですから、戦後平成の出版物に正確な文章をもとめるのは無理かも知れません。記者の無知による拙文、誤文の例を列挙し、墓石の碑文の作法まで伝授し、最近の新聞記者には文章報國の熱意が缺けておると叱咤する一方で、この本の編者は日本語の簡略化を文部省に建白します。効用として、漢字の画数を減らせば、戦闘教育および作戦行動の時間短縮がはかれます。また、当時は横書きの場合、左と右が混在していたようです。これは左書きに統一すべしと提言します。大東亜圏南方の民衆に日本語を普及させるのに都合がよいからです。旧臘にCSで観た昭和17年の円谷特撮「翼の凱歌」のタイトルは左書きでした。
 さて、別冊宝島「特撮ニッポン」ですが、見出しにスターログについて書かれた章がありました。スターログは宇宙船より昔に出ていた月刊誌です。なかなかよいことが書いてあるので古本屋で見つけたら買うようにしていました。この雑誌の全貌について知りたいと思っていたのに、「特撮ニッポン」のその記事は、当時、読者だった人の記憶にもとづく感想が書いてあるだけでした。本当に役に立たない本でした。

岸田 森


 科学者とか謎めいた人物の役が似合う俳優さんですが、町工場の社長やカレーハウスのマスターのような生活者を、その風貌のままで飄々と演じる岸田森もまた魅力的でした。帰ってきたウルトラマン第34話「許されざる命」水野が持ちこんだ変な機械の溶接仕事を、はじめはめんどくさそうにしぶっていた坂田(岸田森)。しかし、この水野という男が郷秀樹の小学校の同級生とわかるや、コロッと態度を変えます。私の好きな場面です。そんな現実的な芝居から始まる第34話はシリーズ中屈指の名編になりました。
テレビ
「怪奇大作戦」「帰ってきたウルトラマン」「シルバー仮面」「恐竜戦隊コセイドン」「太陽戦隊サンバルカン」
映画
「ゴジラ対メカゴジラ」「血を吸う眼」「血を吸う薔薇」
プロフィール

ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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