シーモンス・シーゴラス


 上原正三特集3回目。帰ってきたウルトラマン13話「津波怪獣の恐怖・東京大ピンチ」14話「二大怪獣の恐怖・東京大竜巻」。
 開巻は、夜の海を航行する貨物船。「ゴジラ」以来の正攻法の怪獣映画です。こういう船が無事に日本に帰港できたためしはありません。次に来る惨事も知らず、甲板では宴が催されています。
 船名は海神丸。船長高村の役は小林昭二。怪獣ドラマの御膳立ては整いました。
 高村船長は哀調を帯びた不思議な歌を歌います。
 昭和19年、ニューギニア戦線に兵員を輸送する船に乗り組んでいて、アメリカ軍に撃沈され、流れ着いたイリアン島(ニューギニア)の原住民から教わった歌だといいます。

 北原白秋の詩「砂山」を逆読みして、モスラ風の歌詞に仕立てているのですが、上正さんのシナリオには、原住民の歌とだけ書かれていて歌詞は書かれていません。冬木透さんが作られたのでしょうか?
 また、小林昭二は昭和5年生まれ。昭和19年では、まだ14歳。実年齢より上の人物を演じています。

 そうこう言っているうちに、シーモンス出現。角がピカッと光り、海神丸は沈没。
 この前後編が本格的な怪獣映画仕様になっていると評価できるのは、シーモンスの行動理由が説明されているからです。
 海神丸が襲われたのは積荷である宝石の原石が目当てでした。この後、日本に上陸しセメント会社の敷地に居座り、その原料を食べます。産卵が近づいているため、頑丈な卵の殻を構成する物質を欲したのです。こう言われても納得できない人もいるかも知れませんが、怪獣映画の理由づけとしては丁寧過ぎるくらいです。

 雌怪獣シーモンスを攻撃していたら、雄怪獣シーゴラスも来日します。
 その際、大津波を発生させます。フィルムを何重にも合成し編集した、ウルトラ史上屈指の名特撮シーンだったのですが、満点の迫真性があだになり、東北大震災以後の再放送で、シーモンス・シーゴラス編が見合わせられる羽目になりました。
 津波の迫力もさることながら、これをウルトラマンが押し返すのです。

 この怪獣夫婦…日本に被害や大損害はもたらすのですが、どことなく憎み切れません。今回、自衛隊とMATの連携が最後まで上手くいかず、処置が後手にまわったり、作戦が裏目に出てばかりです。
 結局、怪獣界のおしどり夫婦シーモンス・シーゴラスは、角を折られただけで海へ退散していきました。こういう平和的な終り方も、怪獣映画の王道です。

 特撮大会で、ゲストの佐原健二に「これからの怪獣映画はどうあるべきでしょうか?」と質問した人がいました。
 佐原健二は、奇をてらう必要はなくて、怪獣は南の島から来るのが一番良いんだと答えていました。

 怪獣映画を娯しむという行為は昭和三十年代の子供の夢を追体験することだと思っていましたが、どうも…もっと、古めかしい流れにつきあわされていると感じてきました。
 それは当然のことで、作っているのは戦前に子供だった人たちです。

 戦前の子供の夢といえば、のらくろみたいに軍人になって手柄を立てて出世するのが一般的ですが、「のらくろ」に次ぐ人気漫画に「冒険ダン吉」がありました。子供が南の島に漂流して、原住民や猛獣と戦い王様になる話です。「のらくろ」と「冒険ダン吉」を読めば、戦前の子供が、南の島から攻めてくる怪獣と戦争したがるわけがよくわかります。

 海神丸の甲板で…「シーモンスの歌」と共に歌われていたのが「酋長の娘」。〽わたしのラバ(Lover)さん、酋長の娘~色は黒いが~南洋じゃ美人…荒俣宏さんの解釈の受け売りですが、オセアニアの娘と交配して遺伝的に強い子を産ませろという国策が歌われているそうです。
 南洋進出は子供の夢であると同時に国策でもありました。
 子供の夢と国策といえば…寝る間も惜しんで模型飛行機を作っていた円谷英二の小学生時代の日記を読むと、将来飛行家トナリテ必ズヤ国名ヲアゲン…と決意をしるしています。日本の航空政策と子供の夢が完全に合致しています。

 子供の夢が国策になり、大東亜戦争に突入。プルトニウムみたいな副産物として生まれたのが怪獣映画だったのではないでしょうか?

 
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松本三郎


 上原正三の偉業2回目。帰ってきたウルトラマン16話「大怪鳥テロチルスの謎」17話「怪鳥テロチルス東京大空爆」。
 前後編。登場する怪獣テロチルスは強敵で、空中戦ではMATもウルトラマンもかないません。生態も厄介で、夜行性で騒音が嫌い。そして、巣を作るときに吐く綿状のものが硫黄を含んでいて、これがガソリンエンジンが排出する亜硫酸ガスと混合すると失明するほどの猛毒になります。自動車を使わず、夜になったら眠る原始生活なら問題無いのですが、現代の都市機構はテロチルスと相容れないのです。なお…私は「テロチルス」と言うと口の中を噛むので、「テロチロス」としか発音できません。

 大怪鳥テロチルス襲来!!国難的怪獣騒動の陰で、それに比べればささやかな事件が起こっていました。
 秋田県から上京してきた幼なじみの松本三郎と小野由紀子はYM工業に就職します。二人は工場で働いていたのですが、美人の由紀子は会長の目にとまり秘書室に引き上げられます。そして、息子の二代目社長の婚約者になりました。

 二代目社長・横川は、金持ち友達を集めてヨットを出し、夜の海上でパーティーをします。貧しい農家の娘だった由紀子は「夢を見ているみたい…」とうわついています。
 その、真っ暗な海を泳いでヨットに近づいてきた男は松本三郎。船腹に手製の時限爆弾を仕掛けました。
 この爆弾の威力はたいしたことなかったのですが、静かな夜の海で音楽を鳴らしてドンチャン騒ぎをしていたために、怒ったテロチルスに襲われヨットはバラバラになりました。

 松本はすぐ逮捕されます。
 船上パーティー参加者のうち三名は死亡したのですが、小野由紀子は救助されました。その由紀子から、怪獣を見たという証言を得た郷秀樹は、松本に接見します。松本も怪獣を見ているのですが、そのことよりも由紀子がまだ生きていることが重大でした。
 松本は留置場を脱走します。
 入院しているベッドから由紀子をさらい、ダイナマイトを腹に巻いて、テロチルスが巣を作るビルに立てこもったのです。ビルの周りは自衛隊とMATの他に警察まで出てきました。怪獣退治か人命救助か犯人逮捕か。優先順位が決められません。

 ビルの中では…松本と由紀子は、「ナマハゲは怖かったな」とか子供の頃の話をしたりしています。これからどうするつもりだったのか…気がすんだ松本は、由紀子を解放し自首することにしました。ビルの下にいる警察に呼びかけようとベランダに顔を出した途端、狙撃されます。
 山際永三監督。

 松本三郎を演じたのは石橋正次。「アイアンキング」では静弦太郎。特撮史上最強の男。私は、実写映画「あしたのジョー」も印象に残っています。矢吹丈はこんな感じの人なのだろうという実感がありました。
 矢吹丈、松本三郎、静弦太郎。心のねじくれた戦闘的な男ばかりです。しかし、嫌いになりません。憧れです。三人とも破滅に向って突っ走って行きますが、その軌跡が希望です。ドヤ街の汚い子供がジョー兄いについていった気持ちが分ります。逼塞した世界に風穴を開けてくれそうな強い光を放っていました。

 予備知識として、石橋正次という人が新国劇出身で、「飛び出せ青春」で人気者になり、「夜明けの停車場」でレコード大賞を獲得した経歴は承知しております。スターです。「帰ってきたウルトラマン」は、こういう人材をキャスティングして製作されたドラマでした。
 

デスパー・シティ


 5G技術によって、これからは住民を完全管理・完全監視するスマートシティというのが作られてゆくそうです。古い特撮ファンが想起するのは、「イナズマンF」のデスパーシティ。今回からは、先月2日に亡くなられた脚本家上原正三さんの特集を始めます。1回目は、イナズマンF第12話「幻影都市デスパー・シティ」。

 デスパーシティとは、天才超能力者ガイゼルが作り上げた地下都市。人口太陽で環境がコントロールされているので、住み心地は地上と変りません。地上からさらってきた5万人の人間を住まわせています。家族単位で拉致することで都市としての再現性も高めています。
 人間は労働力であり、サイボーグ化して兵力にもなります。

 村野ユキは、すすんでサイボーグ手術を受け、ガイゼルに忠誠を誓いました。そして、食料供給担当の幹部に取り立てられます。デスパーシティでは、食料の自給自足が出来ず、地上へ買い付けに行くのです。
 しかし、村野ユキの本心はシティの住人の解放でした。ガイゼルの信用を得て地上に出ることにより、イナズマンと接触する方法を探していたのです。ガイゼルを倒しデスパーを壊滅させることが出来るのはイナズマンしかいません。そのときのためにレジスタンスも組織していました。

 苦労のかいがあって、ユキは、ようやくイナズマンをシティに導き入れます。叛乱計画を開始しようとした矢先のこと、レジスタンス分子の会合場所が摘発されます。仲間が処刑されました。
 この場所と計画を密告した者がいるのです。首謀者の自分が助かったことに、ユキは不審を感じました。密告者は弟のヨシオだったのです。ガイゼルに忠義を示して、自分も幹部になりたかったのだと言います。
 ユキは、この愚かな弟を容赦せず射殺します。
 そして、幹部会議を襲撃するイナズマンに呼応して、参謀ウデスパー兄弟を誘い出し、自爆したのでした。

 村野ユキを演じたのは、久真里由香。お姉さんの真理アンヌとともに円谷プロ作品の常連です。特撮ドラマに相性の良い姉妹。山奥で怪獣と暮らす不思議な娘というのが久真里由香の持ち役でした。上原正三脚本「怪獣シュガロンの復讐」は、足を怪我していたのでオファーを断ったのですが、それでも是非と頼まれ、足の悪い娘という設定に書き直されたそうです。

 ガイゼルがデスパーシティを作った理由は最終回に判明します。なんと一人娘のためでした。
 たとえば、保育園で習ってきた童謡を一所懸命に歌う幼女を見て、このままずっと純粋で変らなければよいが…と、男親なら誰でも思います。醜いものや怖いものは見せたくないと。
 ガイゼルは、それを実現しようとしたのです。事件も事故も災害も起こらない都市を作り上げたのです。自分の娘が安心して安全に暮らせる町。これがデスパーシティのコンセプトです。

 スマートシティが国境を越えて、スマートワールド、スマートプラネットまでに拡大していったとき…特権階級とその家族だけが、快適に暮らせる世界が実現します。

アルタシア姫


 今回のリクエストは「恐竜戦隊コセイドン」のアルタシア姫。
 恐竜戦隊といっても戦隊シリーズではありません。昭和53年から54年にかけて制作された円谷プロの作品。タキオン粒子とかエントロピーとか、SF物理用語がちりばめられた意欲的な設定。そして、破天荒な円谷作品の中でも次回の展開が予測不能だった波乱万丈なドラマでした。簡単に言えばタイムマシンものです。時空を超えるということは多元宇宙を行くことなので、支離滅裂なストーリーになったとしても、SF量子論上は説明がつくといえばついてしまうのです。

 時は西暦2001年(平成13年)。時間移動の手段を発見した人類は、タイムパラドックスを監視する法律を作り、タイムGメンを設立します。タイムGメンには担当する年代がそれぞれあり、主人公たちのチームは白亜紀です。恐竜しかいないような時代へ行ってすることがあるのかといえば、それが色々とあるのです。

 アルタシア姫とは何者かというと、故郷をゴドメス星人に滅ぼされ、白亜紀の地球に逃げ延びた異星の女王。恐竜とは仲良くやっています。
 リクエストを下さった木戸健吾さんのオーダーは、金髪を黒髪にして欲しいということと、恐竜界の優しい聖母のように描いてほしいということでした。円谷作品における恐竜は、いつも保護される生物として描かれます。恐竜戦隊コセイドンも恐竜とは戦いません。ならば、何と戦っていたのかということですが、それが色々とあったのです。(けむに巻くような書き方をしますが、戦国時代の落ち武者とかフランケンシュタインと戦っていたと言えば、見てない人は混乱するばかりです)
 私は、平和な雰囲気を出そうと、おとなしい草食系男子な恐竜を集めることにしました。プロトケラトプス、ノドサウルス類…あと一匹はハドロサウルス類の鳥脚目をと考えたとき、ふと、このブログの最初期に描いたゴモラザウルスのことを思い出しました。ゴモラの恐竜時代の姿です。

 オリジナルゴモラは、大阪を破壊した暴れん坊でしたが、アメリカでリメイクされた「ULTRAMAN THE ULTIMATE HERO(ウルトラマンパワード)」のゴモラは、恐竜の生き残りという設定が拡大解釈され、絶滅危惧種のようにひ弱な生き物になりました。ほっといても死ぬくらいのひ弱さでした。ファンの間では便宜上パワードゴモラと呼ばれていますが、むしろパワーダウンしていました。

 白亜紀のアルタシア姫の傍に、ゴモラザウルスを立たせるイラストを描きました。はからずも、ウルトラ生物史とコセイドン史観を統一させたような達成感に浸っています。今回は自己満足です。前回の「キョーダイン」イラストの不本意と不評を雪辱したと思います。

白川エツ子さん


 今回のリクエストは、宇宙鉄人キョーダイン第5話「くだけ!不死身のダダ軍団」より。捕えられて改造カプセルに封じ込められた白川エツ子少尉。参考画像をもとに初めに描いたのが下のイラストですが、ダイキライとガトリンガーばかり目立って、肝心の白川少尉がどこにいるのかわかりません。苦肉の策で、目を開けて顔をこっちに向けさせました。その代償として黒コップさんが要求しておられる緊張感が無くなりました。
 しかし、この絶体絶命の状況から白川少尉がどうやって脱出したのかというと、急に「くだものやさいへんちくりん」というとぼけた歌を歌い出すのです。すると、ダダロイドどもの機能に変調が起こるのでした……「宇宙鉄人キョーダイン」とは、だいたいそんな番組でした。

 白川エツ子を演じたのは堀江美都子。演じたというより堀江美都子そのままです。(余談になりますが、以前、このブログで取り上げた漫画「ゴーゴー悟空」の一コマ。三蔵一行の前に現れた観音様を見て、孫悟空が「堀江美都子さんですか?」と、ボケます。実は、作者の成井紀郎先生が、「ゴーゴー悟空」の前にテレビマガジンに連載しておられた「宇宙鉄人キョーダイン」の白川エツ子少尉と同じ顔だったのです。)もちろん、本業は女優ではなく歌手です。

 堀江美都子さんといえば……特撮イベントのバックステージの準備を覗きにいったとき、いっしょにいた女の子が、『堀江美都子さん!』に気づきました。なんと、私のすぐそばの暗がりの中に立っておられたのです。眼鏡をかけた小さい女の人でした。
 昔…アニメ雑誌で見た、すごくかわいいお姉さんの面影は残っていたのですが、そのときの気分は、羽のボロボロになった蝶を見つけたようでした。

 こんなになるまで、何と戦ってきたのか?
 堀江美都子の歌には悲愴感があります。「超電磁マシーン ボルテスⅤ」の主題歌なんて悲壮の極みです。アメリカ軍に突撃していく沖縄の女学生部隊の絶叫にも聴こえます。
 アニメソングの女王と称されました。実力もあり、人気もあり、その座を脅かすものはありません。
 しかし、デパートの屋上に呼ばれていくと『キャンディ♡キャンディの堀江美都子来たる』と書かれています。全人格を否定されたような暗澹たる気持ちになります。セル画の架空人物に負けたのです。
 これが、キャンディ♡キャンディのいがらしゆみこ先生サイン会ならわかりますが、堀江美都子は「キャンディ♡キャンディ」の企画に関わっていないのです。

 そもそも、アニメ歌手になるつもりはありませんでした。日本コロムビアが育てようとした少女歌手でした。第二の美空ひばりになる予定だったのです。
 美空ひばり候補者は、他に吉田よしみ(天童よしみ)と嶋崎由理(しまざき由理)がいました。この三人で「ハクション大魔王」のOPとEDを歌っています。(美空ひばりになりたかった少女はあと一人いました。淡路島の橋本惠美子。大阪での準決勝で、八尾の吉田よしみに敗退し、漫才師になりました。海原千里。現在の上沼恵美子。)

 堀江美都子を美空ひばりにしなかったのは、アニメ歌手の地位にひきとどめ続けた自分のファンでした。複雑な戦いです。認識力の低い客をあしらいながら、自分の夢と折り合いをつけなくてはなりません。あのとき…キャンディ♡キャンディを歌っていなかったら、毎年の紅白歌合戦のトリは堀江美都子だったかも知れないのです。

 今回、「宇宙鉄人キョーダイン」の放送期間を再確認して驚きました。「キャンディ♡キャンディ」と重なっています。それも金曜7時の裏番組。さりとて…「宇宙鉄人キョーダインの堀江美都子来たる」は、無かったようです。
プロフィール

ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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