Braves in the Univers


 昭和50年代宇宙特撮大戦争!7回目、映画「8人ライダーVS銀河王」(昭和55年・東映)。
 超エネルギーΣの方程式が一匹の宇宙犬の脳に記憶させられます。この犬をめぐって、銀河王を僭称する機械生命体の一群とネオショッカーが動き出しました。超エネルギーΣを悪魔の手に渡してはなりません。宇宙の危機を救うために八人の勇者が集結。もう一つの宇宙版八犬伝。プロデューサー平山亨、総監督石森章太郎。

 南総里見八犬伝をスペースファンタジーに翻案した映画「宇宙からのメッセージ」は、八人の勇者の数奇な人生について語る時間が足りませんでした。「8人ライダーVS銀河王」においても、一人一人の仮面ライダーについて説明されず、作戦局面に主題歌のBGMとともに唐突に現れます。
 しかし…我々は知っているのです。本郷猛、一文字隼人、風見志郎、神敬介、アマゾン、城茂、筑波洋。この人たちが正義のために戦ってきたことを。過酷な運命に何度も負けそうになったことを。その姿は昆虫やトカゲに変えられようとも人間の心を失わなかったことを。宿命の星の命ずるまま、八人の仮面ライダーはいままた平和を破る敵の前に集います。
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 「8人ライダーVS銀河王」の外観を見てみます。総監督石森章太郎。Σエネルギーを開発する研究者の一人として出演もしています。宇宙ステーションとともに爆死。なお、監督は平山公夫さん。
 仮面ライダーでは初めて特撮監督がつきました。しかも二人。矢島信男、佐川和夫。セットの爆発や合成場面の多い映画なので、矢島さんがサガッチョに応援を頼んだのではないかと思います。かといって佐川和夫の名前を助監督というわけにはいかないので、特撮監督を連名にしたのでしょう。

 音楽も連名です。菊池俊輔さんと、もう一人は武市昌久さん。当時まだ少なかったシンセサイザーを扱える人材で、いちひさしの別名でアニメソングの作曲・編曲などに引っ張りだこの人でした。寛平ちゃんの「ひらけ!チューリップ」はこの人の作曲。「8人ライダーVS銀河王」では各ライダーのテーマ曲を電子音楽にアレンジして効果を上げています。映画全体が新しい感覚になりました。主題歌「輝け!8人ライダー」も作曲菊池俊輔、編曲武市昌久。仮面ライダーの主題歌はずっと短調だったのですが、初めて長調の主題歌です。そして、歌がささきいさお。宇宙映画にふさわしいスケールの大きな主題歌になりました。

 出演者では博士のバカ息子の役で中村ブン。「仮面ライダー」初出演ですが、実名で石ノ森先生の漫画にちょくちょく出て来る人。本業はシンガーソングライター。私的な交流があって活動を支援していたようです。石ノ森先生は人徳者の一面があり、駆け出しのころの梅沢富美男の面倒も見ていました。
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宇宙怪獣ガメラ


 大阪に来たばかりのころ…土地カンを得ようと「雨の御堂筋」の歌詞に沿って梅田から、本町、心斎橋とそぞろ歩いたら、馴れない革靴で靴ズレしてしまいました。尽くし足りない私が悪いと、翌日は「大阪しぐれ」の歌詞のごとく北の新地から四ツ橋筋を南に歩いたら、堂島あたりに大毎地下劇場という料金の安い映画館がありました。掲示板の上映予定を見たら『ガメラ大会』の最終日。昭和最後の珍品「宇宙怪獣ガメラ」をかけていました。

 昭和50年代宇宙特撮大戦争!6回目「宇宙怪獣ガメラ」。
 主役はもちろんガメラですが、人間側の主演は女子プロレスラーマッハ文朱。プロレス名鑑のバックナンバーをひもとくと、身長175cm、体重75kg。得意技は回転地獄蹴り、飛行機投げ、首4の字。
 柔道と合気道の素地があって中学卒業とともにプロレス界に入りました。当時の日本人女子選手は160cmくらいなので力負けすることはありませんでした。
 さらなる強さを追求するマッハ文朱は極真會館に入門します。大山倍達が面白がって直接指導したらメキメキ上達。組手になると男子を次々にノバしてしまう事態にまでなります。笑いごとではなくて、かつて芦原英幸とかいう伝説的大先輩は道場をひやかしに来た外人レスラーを半殺しにして帰しました。プロレスに負けたら地上最強の空手の看板を降ろさなくてはならないのです。

 マッハ文朱は強いこともさることながら歌も上手でした。〽戦えガメラ火を吐けガメラ~という「宇宙怪獣ガメラ」の主題歌も歌っています。
 私はマッハ文朱のプロレスの試合を観たことがないのですが「とびだせパンポロリン」に出ていたことは覚えています。歌のおねえさんもこなしつつ、並外れた身体能力を活かさないテはないと体操のおねえさんも兼任していました。ロンパールームにもピンポンパンにもこんなおねえさんはいないでしょう。
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 観終わって外へ出たら雨が降っていました。
 うなだれながら歩く足下の先にカメがいます。偶然入った名画座で「宇宙怪獣ガメラ」を観て、その帰り道でカメを見つける。盲亀浮木とはこのことなりしか。光仁天皇は珍しいカメを見て元号を宝亀と改められたといわれます。それ以上の瑞祥かと思ったのですが…

 ガメラ大会は企画として簡単なのか、その後もあちこちで行われ、珍作「宇宙怪獣ガメラ」も何度も観賞する機会に恵まれました。
 そして、大阪はカメの多いところであることに気づきます。北摂から泉南、河内の寝屋川でも橋の上からのぞけばカメが泳いでいます。隣接する京都府では、保津川から由良川まで探したところで滅多にいません。大阪府のカメの多さは異常なのです。
 生活排水の流れ込む汚い川ほど多い。食料にならないし、飼うにしても臭いおしっこをするので子供も手をつけなくなった結果ウジャウジャと増え続けています。人間に実害が無いことも悪循環で、駆除の対象になりません。しかし、カメのせいで大阪の川は生物の種類が少ない気がします。カメを捕食する天敵はいないかと調べたらワニくらいでした。ワニの放流を大阪維新の会に提言します。

ここは惑星0番地


 昭和50年代宇宙特撮大戦争!第五回「ここは惑星0番地」(昭和52年~53年東映)。
 地球生物の標本として二匹の犬と二羽の鶏と十一人の人間がレバン星人の宇宙船に拉致されます。その途中で隕石に衝突!なお、宇宙船の中にはレバン星人は乗っておらず、ダブロンというロボットがいるだけ。航路を修復することが出来ず、どこともわからぬ惑星にハードランディング。これ以下は無いと言える絶望の状況設定から物語が始まります。

 音楽菊池俊輔、主題歌水木一郎、脚本も監督もいつものスタッフで作られた東映の子供番組なのですが変身ヒーローも怪人も出てきません。被り物キャラクターを出さないSFドラマもやらないと、これからの宇宙時代を乗り切れないと焦ったのでしょう。

 地球人のサンプルに選ばれた十一人は全員日本人。
 旅客機のパイロットとその妻、長女、長男(小学生)、次女(未就学児)。
 工務店の社長とその妻、長男(小学生)、次男(小学生)。
 工務店に下宿していた医学生とその姪(小学生)。
 オープニングで最初に名前が出るのがパイロット役の原口剛。宇宙船を修理することが出来たなら、この人が操縦して地球に帰れるかも知れないというのが絶望的な希望。
 原口剛は「大鉄人17」で隊長をやっていた人。ここでもリーダー的存在なのですが軍隊ではないので命令権はありません。いわば普通のお父さん。お父さんが主役の子供番組は珍しい。「天才バカボン」くらいです。

 実は「ここは惑星0番地」の企画の原点は1966年から1968年にかけて放送されたアメリカのテレビドラマ「宇宙家族ロビンソン」でした。西部開拓時代の家族の苦労話を宇宙開拓に拡げたサバイバル物語。昔のアメリカのテレビドラマはしっかりしたお父さんが主人公のものが多いようです。日本のテレビドラマのお父さんはなぜかたよりない。前掲「天才バカボン」しかり。
 近年のアメリカ映画の主役は離婚した子連れのお母さんです。
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 惑星0番地の家族はとりあえず自活の方途を探ります。探検車に乗って探し回れば、わりと都合よく、果実や水が見つかります。畑を作ったらこれも上手くいきます。
 たいした事件も起こりません。小学生男子が喧嘩するくらい。雅美という小学生女子は自分だけ両親と離れ離れになっているため、他の子供を妬んで淋しがります。そこでパイロットの妻がやさしくしてやったら、実子の次女が拗ねるとか…絶望的状況を忘れているかのように異郷生活に馴染んでいきます。これはリアルなのか?SFとして正解なのか?再検証の必要がある番組です。

Xボンバー


 昭和50年代宇宙特撮大戦争!4回目「Xボンバー」(昭和55年~56年)。第三次怪獣ブームに先駆けて「メガロマン」を世に放った池田公雄さんは、宇宙ブームにも乗り遅れてはなるまじと、宇宙番組を企画しました。
 池田さんの相談を受けた永井豪先生はアニメにすることを提案したのですが、アニメというのもそんな簡単なものではありません。かと言って実写宇宙特撮を作る資金はありません。苦肉の策で人形劇にした…という経緯を知った上で本作「Xボンバー」を観ると度肝を抜かれます。想像のはるか上を行きます。

 実製作を請け負ったのはコスモプロ。宇宙時代を見越して三上陸男さんが起こした特撮美術の会社。三上陸男さんが総監督で、美術監督は高橋章さん。撮影は川崎龍治さん。生田スタジオで「仮面ライダー」を作っていた仲間です。
 「仮面ライダー」といえば肉体アクションばかり取り沙汰されるのですが、作品のクオリティを保証していたのが美術スタッフのセンスだったことを「Xボンバー」であらためて知る思いです。準備に要する時間や俳優への出演料がすべて特撮美術だけにつぎ込まれたら、かくも驚愕の映像が出来上がるのでした。本当に驚きますし、何度見ても驚くのです。
 キャラクターデザインは永井豪さん。これをコスモプロが三次元に直して人形にします。まず口の開閉に驚かされます。顔にラテックスが貼られていたというのですが、開閉時に不自然な皺ができずアニメのようにナチュラルに喋るのです。

 戦闘艦Xボンバーの模型は3mを超える物が造られました。これを格納庫のセットで囲み、人形の背中越しにカメラを回せば合成を使わずに巨大宇宙船を見上げるカットが撮れます。ミニチュアセットに人形を置く手法は人形だとわかると『特撮か』と思ってしまいます。しかし「Xボンバー」においては、人形であることがわかってもよいのです。これが人形劇特撮の有利なところ。
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 もう一つ有利なのは、人形なので本物そっくりのおもちゃが手に入ること。実物そのもの違和感の無いフィギュアを販売できます。
 このビジネスモデルを最初から狙って成功したのが「トイストーリー」。映画に登場するそのままのキャラクターがディズニーショップで買えます。いや…怪獣ハウスを見にくる猛者なら、やわなディズニーアニメなんかではなく、玩具ヒーローといえば「プラレス3四郎」だ!と言うかも知れません。

 「トイストーリー」の題名を出してしまいました。人形劇特撮のテクノロジーとしての効果はCGに駆逐されてしまいました。このさき継承する人もなく追及されることもないのでしょう。

スターウルフ


 昭和50年代宇宙特撮大戦争!3回目「スターウルフ」(昭和53年)。宇宙ブームに円谷プロも参戦。佐川和夫特撮監督が、ウルトラシリーズを経て洗練されたメカ特撮の極致を見せます。
 原案はエドモンド・ハミルトンの同名小説。原作ではなく原案とされているのは主人公を日本人に変更する根本的な改作がなされているからでしょうか。なお、エドモンド・ハミルトンは前年2月に没しており本作を観ることはありませんでした。

 そして、監修に日本のフォン・ブラウン、糸川英夫博士。戦時中は一式戦闘機「隼」の設計者として、戦後はロケット開発の先導者として子供にも知られる博士。死してなお小惑星「イトカワ」「はやぶさ」に名を残しています。番組に箔をつけるための名義貸しかと思ったらさにあらず。企画会議にもちゃんと出席して色々と提言をされたそうです。宇宙出発前に健康診断を受ける面倒くさい場面がありましたが、あれも糸川博士の意見かも知れません。
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 主人公・新星ケンを演じたのは東竜也。本名の村嶋修で前年の東宝映画「惑星大戦争」に出演、宇宙軍艦轟天に乗り組んでいました。役名は無くパイロットB。
 第3話には宇宙航行の管理官として平田昭彦が出演。この人が画面に映るだけでSF作品の説得力が変ります。1話2話の特撮シーンに圧倒されたところで平田昭彦が登場すると、もう作品世界に引き込まれてしまいます。バッカスⅢ世号のキャプテン・ジョー(宍戸錠)に困難な任務を依頼する役どころ。

 もう一人注目したいゲストは第19話の大山のぶ代。役名エルバ。惑星ジュノーを統括する局長。キャプテン・ジョーと過去に関係があったらしい女…ということでクルーも興味津々で、会ってみたら大山のぶ代さんだったという出オチ。磯野カツオの声は初代が大山のぶ代、二代目が高橋和枝、三代目が冨永みーな。みなさん円谷プロとは縁があります。ブースカの高橋さんは本作でもロボット・コンパチの声を演じています。
 バッカスⅢ世号とクルーたちの訪れる星々にも、池田俊介、佐藤蛾次郎、木田三千雄、斎藤浩子ら円谷プロ作品でおなじみの俳優が待ち受けています。そして、回を重ねるにつれて、宇宙人の顔が皆日本人で日本語が通じることが気になってきます。「スターウルフ」の宇宙人は「ウルトラセブン」のようなイメージの飛躍がありません。

 「スターウルフ」は昭和53年4月に始まって同年9月に終りました。その2ヵ月後11月NHKでエドモンド・ハミルトン原作の宇宙冒険アニメ「キャプテン・フューチャー」がスタートします。たしかに、当時の日本人は宇宙を目指していたのです。
 なお「キャプテン・フューチャー」シリーズは1940年から1946年にかけて書かれた古い作品でした。日本とアメリカが戦争している時期とまったく重なります。そこから30年、ハミルトンを超える宇宙小説は出てこなかったのか?
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ハヌマーン&さとる

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