特警ウインスペクター


「宇宙船」Vol.53(平成2年8月)。カラー頁は「特警ウインスペクター」。宮内洋がひさしぶりにヒーロー番組に帰ってきました。宮内洋の歌う挿入歌が作られドラマ中にも流れました。続編「ソルブレイン」では宮内洋(役名正木俊介)のソフビが発売されます。レスキューポリスシリーズと呼ばれ三年続きました。宮内洋に始まり宮内洋に終ったシリーズだったのですが、どういうわけか私は熱狂できませんでした。私の精神年齢が成長したのか?それは無い…

 当時録画したビデオを見返してみます。第1話「赤ちゃん暴走!」…いきなり脱力です。赤ちゃんが暴走したところで被害は知れています。むろん、赤ちゃんがはいはいする話ではありません。悪い博士が、ノーベル賞を取ったライバルの博士をねたんで、その孫を誘拐し、ロボットの運転するタンクローリーに乗せて暴走させるのです。
 このサブタイトルから連想するのは「Gメン`75」第229話「暴走トラック殺人ゲーム」です。トラックを暴走させてはねる人数を競い合うゲームかと思ったら、まったく違って、島谷刑事(宮内洋)が麻薬ルートを潜入捜査する話です。宮内ファンは必見の回。
 さて、その赤ちゃんを暴走させた悪い博士を演じたのが、黒部進。いくら宮内ファンでも黒部進が逮捕される姿は見たくありません。初回から後味の悪さを感じました。別の回では二瓶正也がゲスト出演するのですが、これも良い役ではありません。逆に伴直弥とか荒木しげるといった東映ヒーロー出身の俳優は、ものすごく良い役でゲスト出演します。いやな番組だと思いました。なお、伴直弥が出るのは第9話「爆弾じかけの犬」。このサブタイトルから連想するのは「特捜最前線」第361話「警察犬イカロスの誘拐」。手強い犯人の役を演じるのは宮内洋。宮内ファン必見の回。

 本放送を録画しておくのが良いと思うのはコマーシャルが入っていることです。特撮ファンはCMとともに検証を愉しみたいものです。バンダイの玩具のCMは映像技術の宝物です。ウインスペクター標準装備デイトリックM−2を構えるのは外人の子供。プラスチックの銃でも外人に持たせると値打ちが2、3割増すようです。メタルヒーローから平成ライダーまでずっとスポンサーについているのが丸大ソーセージ。その映像が毎回凝っていて、ウインスペクターについては、バンダイ以上、あるいは本編以上にかっこいいのです。
 そして、日本船舶振興会のCM。その寄付金で運営されているというオーバーブルック盲学校を在りし日の笹川良一会長が参観されています。

 笹川良一。戦時中は国粋大衆党の代議士として大政翼賛会を批判して投獄され、戦後は特攻艇でモーターボートレースを始めて大成功した人です。しかし、この人の人生のクライマックスは終戦直後。進駐軍と東京裁判を批判する演説をやり、戦犯として逮捕されます。その目的は巣鴨プリズンに潜入して、囚人になっている人に裁判のやりかたをアドバイスすることでした。特に「臣節の保全」が口癖の真面目人間、東條英機が心配でした。言葉を間違えると天皇陛下を法廷に立たせることになりかねません。どうせ死刑はまぬがれないのだから開戦の責任は自分にあることにしろと、笹川良一さんは東條を納得させたのです。結果、東條英機は陛下の意思に逆らって、さらには国民を誤った方向に指導して戦争を遂行したことになりました。総理大臣としてギリギリまで対米戦回避の努力を続けてきた東條としては心外です。日本の歴史の人柱にさせられたのです。靖国神社に祀られることをもって瞑すべし。靖国神社には軍人ではないのに快傑ハリマオも祀られています。
 ここで私が魅かれるのは、東條英機ではなく笹川良一さんです。忠実に職務を実行する人も立派ですが、自分の意志と責任で正義を断行する人の方が面白い。こういう男を“快傑”と呼ぶのではないでしょうか。
 現行の警察で手に負えない事件を強化服を着て解決する…ここまではウインスペクターも、かつて私が熱中した快傑ズバットも同じ(どちらも装着タイムは5分が限界)なのですが、ウインスペクターは警察組織の中にあって法律の範囲から出ません。対して、ズバットは目的のためには警察も法律も無視して行動します。私がウインスペクターをもの足りないと思ったのはこのあたりが理由のような気がしてきました。
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薙羅


 宇宙船Vol.52(平成2年7月)。特集「ウルトラQザ・ムービー星の伝説」。佐々木守脚本、実相寺昭雄監督。難解というか難物な映画でした。ストーリーはいたって単純です。縄文時代から地球に住みついていた宇宙人が、現代人による自然破壊に辛抱できず宇宙に帰っていくというだけ。ああそうですかと言うだけです。実相寺監督も、テーマは自然への畏敬だと仰っています。しかし……どうも、それだけではないような気がしませんでしたか?

 この脚本は、じつは「ウルトラマン」のために書かれたものでした。昭和57年ATGで企画され実現しなかった映画「元祖ウルトラマン怪獣聖書」。「ウルトラマン」からウルトラマンを抜いて「ウルトラQ」にしたのです。試みに「星の伝説」にウルトラマンをあて嵌めてみると納得できなかった部分の辻褄が合います。
 怪獣薙羅が出現して暴れるのですが誰にも攻撃されないまま退場しました。怪獣が出た以上、なんらかの決着がつかないと観客はすっきりできません。もしウルトラマンがいて、これを退治していれば、現代人に最後の抵抗をして敗れ、あきらめた宇宙人は地球を去っていったことになります。
 また、女宇宙人(高樹澪)が古代からの経緯(と心情)を、あなたにならわかってもらえる気がすると万城目淳に告白するのですが、柴俊夫演じる万城目淳は凡俗にしか見えません。映画版での職業はテレビディレクター。なぜ、この男が地球人の代表に選ばれたのか疑問だったのですが、その役がハヤタであったら万人が納得します。

「怪獣聖書」は「佐々木守シナリオ傑作集 ウルトラマン怪獣墓場」(昭和59年/大和書房)に収録されています。その脚本と実相寺監督と佐々木守さんの対談、そして佐々木さんによるあとがきを併せて読んだとき「怪獣聖書=星の伝説」の裏にあった主題が見えてきます。
 まず「怪獣聖書」が書かれたのは昭和57年なのですが、物語の時代設定は昭和42年秋になっています。この時期の日本にウルトラマンはいなかったのですが、佐々木さんとしてはその時でなくてはならなかったのです。猛烈な文化大革命の時代。ベトナム戦争反対運動に呼応して、日本でも学生運動が盛んだった時代。若者が共産主義革命の実現をめざしていた時代。古代から住んでいたという宇宙人のモチーフは「アイアンキング」で佐々木さんが書いた不知火一族や独立幻野党と同じく共産ゲリラだったのです。地球に失望して故郷の星へ帰るという結末は、よど号をハイジャックして北朝鮮へ亡命した赤軍の行動と一致します。
 共産主義革命に敗北した後に掲げるテーマは、自然への畏敬、自然保護くらいしかなかったのでしょうが、日本の国家体制への批判は、平成二年の「星の伝説」にもくすぶっています。

 私は共産主義を勉強したことはないのですが、自然保護とは直結しない思想だという気がします。労働者が尊ばれる社会だということですが、農業にせよ工業にせよ、その行為は自然破壊です。直接、自然に接触することの無いテレビディレクター等の職業にしても、農産物や工業製品の恩恵に浴しているかぎり同罪です。共産主義から派生した主体思想も人間を中心にするもので、自然あるいは神を人間の上におきません。
 そういえば「星の伝説」に出て来る宇宙人も日本人に紛れて日本社会で生きていました。自然破壊の加担者です。自然破壊の当事者が自然保護を訴える映画が「ウルトラQザ・ムービー 星の伝説」という結論になりそうなのですが……

 ならば、佐々木守さんが戦っていた相手は何者だったのか?それは天皇です。国民学校三年生の夏に終戦。小学校に改まった五年六年の担任だった宮本博先生に教えられたのが民主主義。輝くような素晴らしい社会が到来するはずだったのに、あいかわらず天皇がいたのです。天皇とは天界地界冥界の王にして、すべての神々と全人類とあらゆる動物、妖怪までも統べるもの。そんな人が民主主義国家や共産主義国家に存在するはずがありません。人の上にいるのですから、当然、人間の作った法律を超越しています。これでは法治国家でもありません。こんなはずではなかったと、佐々木守さんは「アイアンキング」でも「星の伝説」でも大和朝廷が成立する前の縄文時代に先住民族がいたことを主張して、皇統の正当を否定していたのです。


 怪獣映画やヒーロードラマでは起きる事件がでかいので、しばしば国政体制を揺るがすような騒動になります。それでも、やっぱり皇室は聖域で「超光戦士シャンゼリオン」でも「シン・ゴジラ」でも、国体に言及することはありませんでした。つい最近、天皇陛下はどうなったんやろと心配したのが「仮面ライダービルド」です。

山本リンダ


 前回、ウルトラマングレートの話から必然的に京本政樹に言及することになりました。それで思い出したのが「京本政樹のHERO考証学」(平成4年・バンダイ)。B-CLUBの連載に補筆したものですが、写真が奇麗だったので買っておいたのです。
 探し出して開いてみました。写真もさることながら、時を経て価値を見出すのは、ヒーロー番組出演者へのインタビューでした。俳優が俳優にインタビューすることは有効で、同業者としての安心感もあるし嘘も言いにくくなります。黒部進、森次弘嗣、坂口徹郎、藤岡弘、伴直弥、団時朗、宮内洋……。佐々木剛には連絡が取れなかったのか、代わりに、何と!山本リンダに話を聴いています。この人の長い芸歴の中の「仮面ライダー」に出演していた半年間だけを切り取ったインタビューというのは後にも先にも無いと思います。

 山本リンダがレギュラーで出演していることについては、共演者ですら不思議がっていました。その謎が京本政樹のインタビューによってあきらかになっていきます。
 昭和46年春、リンダはミノルフォンレコードからキャニオンレコードに移籍するのですが、当時、レコード会社を移籍した場合、半年間は歌手活動ができない慣例がありました。会社としては、遊ばせているくらいなら女優でもやらせようということになります。リンダは「プレイガールに出たい」と希望を言います。それがなぜか「仮面ライダー」になっていたのでした。最終的な真実は両方の番組を担当していた阿部征二プロデューサーだけが知るところなのですが、キャニオン=リンダ側から申し出があったタイミングは、藤岡弘が骨折して急遽2号ライダーの準備をしていたときだと考えられます。
「どうにもとまらない」を発表するのは半年経って「仮面ライダー」を降板した後です。ここからが我々の知る破天荒な印象の山本リンダです。では、それまでの山本リンダとはどういう存在だったのか?想像しにくいのですが「こまっちゃうな」の一言で一世を風靡したというのです。言われてみると、ショッカーの攻撃に対してリンダ(役名マリ)は「こまっちゃうな」を多用しています。笑福亭松之助作の際物落語「仮面ライダー」の中でも山本リンダの「こまっちゃうな」がドラマの緊迫性を台無しにすると指摘されています。

 笑福亭松之助の「仮面ライダー」は当時、よほどウケたようで速記が残っています。私もそれで知るのみです。これを梅田花月の実演で聴いたのが奈良の高校を卒業して大阪に出てきた杉本高文少年。のちの明石家さんま。「一文字隼人たらゆう男がさとつぼみたいな面かぶって…」の『さとつぼ』に打たれて弟子入りを決めたといいます。真偽のほどはともかくとして、すばらしい言語感覚です。

 話がそれましたが…それでは「仮面ライダー」の中で山本リンダが浮いていたかというと、けっしてそんなことはなく、むしろH2Oの中に入れた砂糖の結晶のように親和していました。まだお元気そうなので、いま一度「仮面ライダー」に出てもらいたいと思います。こう書くと儀礼的にまとめたようですが、仮面ライダーファンは必ず大喝采で迎えるはずです。

ウルトラマングレート


「宇宙船」Vol.51(平成2年2月)。西暦1990年ということで世紀末特撮大画報と銘うって新作映画、テレビ番組を巻頭カラー頁に集めています。「ゴジラvsビオランテ」「JIPANG」「ウルトラQ・ザ・ムービー」「特警ウィンスペクター」「地球戦隊ファイブマン」「美少女仮面ポワトリン」「ウルトラマングレート」。
 この中から今回の画題に選んだのはウルトラマングレート。オーストラリアで製作されたウルトラマンでした。日本でのテレビ放送はなく字幕版と吹き替え版のビデオが発売されました。私もすぐに視聴したのですが、外人がウルトラマンに変身することとオーストラリア限定で活躍していることを寂しく感じました。計算したら移動速度マッハ3として活動時間3分間ではオーストラリアから日本まで飛んで来れないのでした。その逆もまたしかりで、案外、行動半径の狭いヒーローでした。
 しかし、この前見直して、ちょっと感動しました。私が見たかったウルトラマンはこれだ!と心の中で叫んだくらいです。ギンガ以降、あるいはもう少し前からゴチャゴチャゴチャゴチャしていく最近のウルトラマンに辟易していたのです。グレートは最初から最後まで(当然のことなのですが)外見がまったく変りません。そして、日本のぬいぐるみ俳優のようにチョコマカと跳びまわりません。ジャイアント馬場の如く緩慢な動きです。ウルトラマンというのはこれでよいのではないか。グレートに入ったのはスティーブ・アップスという現地の人。身長2mの巨人だったそうです。

 便宜上グレートと書きましたが、宇宙船Vol.51発売時点では固有の名称はありません。オーストラリアで放送されたときの呼称もULTRAMANです。グレートは日本名で、命名者は京本政樹。吹き替え版ビデオで主人公ジャック・シンドーの声を演じ、日本版主題歌を歌いました。この頃の京本政樹はウルトラマン活動に熱心なのでした。もともと家柄が良かったのか人柄が良いのか人脈が広く仮面ライダー藤岡弘とも親交がありました。「ウルトラマングレート」のナレーションを藤岡弘に依頼しています。さらにその人脈を活用し、「ULTRAMAN-LOVE FOR CHILDREN」というマイケル・ジャクソンらが参集した「WE ARE THE WORLD」みたいなチャリティソングを作るのですが、ここにも藤岡弘を参加させています。現物のCDが今手もとにあります。チャリティソングを歌うウルトラ合唱隊のメンバーは黒部進、毒蝮、榊原るみらウルトラシリーズゆかりの人から…柳沢新吾、森田健作ら円谷作品と縁の薄い人…隆大介とか横山ノックとか後に犯罪者になった人の名前もあります。京本政樹を日本のマイケル・ジャクソンと呼んでもよいかと思います。なお、枝雀一門の人はマイケル・ジャクソンより桂枝雀の方が上だと主張していました。あと、開運!なんでも鑑定団の司会をしている今田耕司はマイケル・ジャクソンの物まねで出て来た人です。     京本政樹の話、次回に続く。

ビオランテ


「宇宙船」Vol.50(平成元年11月)。G警報緊急発令「ゴジラvsビオランテ」。前作から五年の時を経ての大朗報!いやゴジラが甦って日本国土に上陸するのですから悲報と訂正すべきか。とにかく平成帝の御代にもゴジラが出現しました。さらに危険な新怪獣ビオランテ誕生……怪獣バカは怪獣さえ見ていたらよいってなもんですが、実写映画である以上、出演俳優も気になります。本作の人間側主人公は三田村邦彦と田中好子。なぜこの二人が選ばれたのか?当時、それが一つの疑問でした。江戸時代の飾り職人の秀さんがどうして科学者の役なのか?田中好子はキャンディーズの頃から知っているのでおばさんという印象があり、当時の私には感情移入しにくい対象でした。前作のヒロイン沢口靖子の友達という設定があったようですが十歳くらい離れています。その前作の主人公は田中健だったのですが、その配役を知ったときも、なぜこの人が?という疑問をいだきました。「俺たちの旅」で中村雅俊のたよりない友達の役をやっていましたが、ゴジラに結びつきません。そういえば、前作「ゴジラ」で小林佳樹が演じた総理大臣の名前が三田村でした。そこから三田村邦彦につながったのか、まさか……。ちなみに…すぐ近所に三田村邦彦いきつけの焼き肉屋があります。

 敢えて、こんなことを書いてみます。前号から始まった、満田穧監督の新連載「ウルトラの星を見た男たち」。ウルトラシリーズと円谷作品の製作裏話。必読の内容で今号以降も続くのですが私はこれが読めません。何度がんばっても無理でした。ねちゃねちゃの御飯といおうか糖尿病になりそうなあまったるい文章なのです。
 もちろん「ウルトラセブン」最終回の功労者で、トークショーで証言されるときは快活にお話しされます。日本国民で満田監督の声を聴いたことがないという人はいないはずです。ウルトラホーク発進を指令する管制官の声が満田監督です。
「宇宙船」の連載で毎号熟読していたのは、このブログで何度か紹介した平山亨プロデューサーの「私の愛したキャラクターたち」。歯切れの良い壮快な文章でした。しかし、晩年の平山さんしか知らないのですが、お話されたら滑舌の悪い人でした。歯切れの良い文章といえば、司馬遼太郎ですが、やはり晩年の司馬先生の講演を聴きに行ったら、滑舌が悪く何を仰っているのかわかりませんでした。

「ゴジラvsビオランテ」のラストシーン。三田村邦彦がちょっとした大活躍を見せます。それを評してスーちゃんが「バットマンみたい」と同年の競合正月映画に例えます。この一言で全部が台無しになってしまいました。前回「ロボコップ」は面白くなかったと嘯いた私ですが、ティム・バートン監督の「バットマン」は悔しくなるくらい面白いと感じたのです。以降の「バットマン」映画もハズレがありません。それでも、バットマンが好きとは言えない日本特撮ファンの辛さを誰が知るのか。
プロフィール

ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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