狙われた女


 帰ってきたウルトラマン石堂淑朗選集最終回第47話「狙われた女」(監督佐伯孚治)。「帰ってきたウルトラマン」のヒロインといえば、主人公郷秀樹の恋人・坂田アキ=榊原るみ。少女モデルとして芸歴も知名度もあった人。その演技も山田洋次監督に認められて、寅さんのマドンナに抜擢されたほどの実力者。ただし、隊員ではなく民間人です。事件に積極的に関わるジャーナリストでもありません。全シリーズを通じても、希有な位置に置かれるヒロインです。

 では、МATに女子隊員がいなかったのかといえば…怪獣ハウスの読者にことわるまでもなく、丘隊員がいました。しかし、榊原るみの陰に隠れて、フジ隊員やアンヌ隊員ほどの存在感がありません。下町の太陽のような榊原るみと、海底基地で通信機とレーダーを監視する丘ユリ子隊員=桂木美加……。

 その桂木美加の丘隊員がクローズアップされるのが、47話「狙われた女」。榊原るみ降板後のエピソードですが、サブタイトルだけを聞いて、その女が丘隊員だとは予想出来ません。あいかわらず存在感は希薄で、狙われる理由がわからないのです。
 で、どこのストーカーが狙ったのかと思ったら、怪獣フェミゴンでした。丘隊員は、フェミゴンにウルトラマン方式で憑依されます。そして、大怪獣と化して石油コンビナートを大炎上させます。女優としては、ことわりたいような役です。

 榊原るみ降板の理由は「気になる嫁さん」に集中するためでした。ずっと、気になっていた作品ですが、後年、全話視聴する機会がありました。
 主役は石立鉄男。榊原は弟の嫁さんなのですが、第一話でその弟が死にます。しかし、榊原るみは、そのまま家に居続けるため、独身の石立は気になってしかたがないという話です。
 石立鉄男の姉の役で、水野久美も出ています。怪獣映画で宇宙人や原住民を演じきれる女優です。ホームドラマの小姑なんて朝飯前の仕事でしょう。

 結論だけ言うと「気になる嫁さん」は面白いドラマで、「帰ってきたウルトラマン」と二者択一を迫られたとき、本人も周囲もそっちを選ぶであろうことは納得できました。しかし…しかし、榊原るみの長女の名前が“めぐみ”。これは、「気になる嫁さん」における榊原の役名です。こっち側としては、“アキ”ではないのかと、寂しくなります。

 ウシ年ということで、オクスターから始まった石堂淑朗特集。思い返せば、絶対的マジョリティの阪神タイガースファンを俗物めと軽蔑し、いまはなき近鉄バファローズを応援していました。
 近鉄バファローズ最後の抑えのエースは、大塚晶文(あきのり)。いまから24年前のウシ年に、長男が誕生しました。大塚は、その子に“虎之助”と名付けました。なぜだ!と寂しくなりました。
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魔神 月に咆える


 帰ってきたウルトラマン石堂淑朗選集8回目第43話「魔神 月に咆える」(監督筧正典)。МATの伊吹隊長は、家族を連れて夫人の実家へ。長野県へ向かうのですが、カーラジオから流れてくる歌は、何故かペギー葉山の「南国土佐を後にして」…
 休暇というか、藪入りというか、石堂さんの脚本では、防衛チームの隊員が、よく墓参りや親戚まわりをします。科特隊のフジ隊員は、公休日でも都内のデパートで買い物するくらいでした。また科学特捜隊員については家族が登場することはありませんでした。
 ウルトラ警備隊は、フルハシシゲルのお母さんとアンヌの親戚が出てきます。そういえば、アンヌとダンは、非番日を合わせて、よくデートをしていた気がします。

 今回の敵はコダイゴン。信州諏訪湖の御神渡り(おみわたり)からの発想です。寒い夜に、湖面に張った氷が膨張し轟音を立てて割れる現象を、地元の人は神様が渡られるのだと信じています。劇中では信州の架空の湖・蓮根湖なのですが、ウルトラファンの中ではゴッチャになっている人も多い。

 御神渡りの信心に着目したグロテス星人は、蓮根神社の御神体を巨大化させ実際に湖上に出現させて見せます。石堂宇宙人は、あいかわらず何が目的なのか分からないのですが、おそらく、地元の人は大喜びだったと思います。そして!ここに大魔神対ウルトラマンの夢のカードが疑似的に実現しました。

 しかし、相手が曲がりなりにも神様なので、ウルトラマンも攻撃に遠慮がち。後ろで操っているグロテス星人をやっつけることで決着がつきます。
 ここまで、ドラキュラ、雪女、神様と、非科学的なものをモチーフにした怪獣が登場しましたが、すべて、宇宙人の仕業というSF的理由付けが施されています。神仏対ウルトラマンのシングルマッチは「ウルトラマンタロウ」のエンマーゴ戦まで待たねばなりません。そのときの脚本も石堂淑朗さんです。
(あと、古いファンなら…実相寺昭雄さんがタロウのために書かれた脚本「昇る朝日に跪け」を、いたはししゅうほうさんの漫画で読んでいます。大仏様が立ち上がる話でした。)

富士に立つ怪獣


 帰ってきたウルトラマン石堂淑朗選集7回目第43話「富士に立つ怪獣」(監督佐伯孚治)。戦前に書かれた白井喬二の時代小説で、何度か映画化もされた「富士に立つ影」をもじったサブタイトル…なのですが、戦後生まれの子供にはパロディの元ネタが分からなかったかも知れません。

 富士山のてっぺんに、遠くからでも見えるほどの巨大な怪獣が立っていて大騒ぎになる話です。
 実は普通サイズ(80m・49000t)の怪獣パラゴンを、太陽光線を屈折させる宇宙人ストラ星人が富士山上に映写していたのでした。富士山にかかるレンズ雲の“レンズ”という語感からの発想かと思います。ミニチュアや合成等の高度な特撮技術で映像表現がなされます。
 しかし、静岡県や山梨県の人には、その大きさを想像出来るのでしょうが、私は劇中人物の驚いている理由がわかりませんでした。そもそも怪獣とは大きい物だし、ジャックさんは、もっと大きいバキューモンもやっつけています。

 パラゴンについては、顔つきが人間臭くて、全体的に生物感の無いイヤなヤツだと思っていましたが、この姿を『生物の常識を超えた神獣とも呼ぶべき神々しさがある』と評する人がいました。
 その見解のほうが正しいと気づき、このイラストのパラゴンは、動物にあらざる怪獣をコンセプトに描いてみました。神獣というのは難しいので、デーモンの妖獣を意識したアレンジを加えています。

幻の雪女


 帰ってきたウルトラマン石堂淑朗選集6回目第40話「幻の雪女」(監督筧正典)。これも面白くない回です。金城哲夫x円谷一による名作「幻の雪山」とは比較するもおろか。
 まず、土星からブラック星人がやってくるのですが、土星人かブラック星に統一して欲しい。こういうところで引っかかると、ストーリーに入っていけません。
 このブラック星人の棲む土星は、労働力が不足していました。そこで、スキー場の客から新婚カップルを選んで拉致する計画を開始します。

 なんと迂遠な策略でしょうか。察するに、土星では新婚さんのために、プライバシーを確保した住居を用意しているのでしょう。ブラック星人には人類の繁殖力について調査不足だと助言せずにはいられません。
 とりあえず、大きめの宇宙船でやってきて、新婚未婚と選別せず、手当たり次第に男女数百人をかっさらって行けばよいのです。飼育はパンダより手がかからず、何でも食べて、勝手に殖えてゆきます。奴隷としてコキ使うつもりでしょうが、うまく騙せば、自分らが奴隷労働をさせられていることに気づきません。

 では、時間と手間のかかるブラック星人の作戦は失敗したのか?あるいは無謀だったのか?というと、結果を見るかぎり、そうとも結論できないのでした。
 スキー客の中から新婚男女が失踪する事件は、やがて警察とМATの知れるところとなるのですが、既に数組は土星に搬送済み。奪還する方策はありません。成功ではないかと判定できます。

 そして、無謀では全くなかったのです。ブラック星人が連れてきたスノーゴンがもの凄く強い。ウルトラマンをカチンカチンに凍らせて、バラバラに砕いてしまいました!無謀どころか勝算が有り余裕も有ったのです。
 あとは、やりたい放題です。地球はブラック星人の植民地になりました。

 と、思いきや!ちぎれた左腕に嵌められていたブレスレットが光りました。すると、バラバラに砕かれた体がつながっていくのでした。ここから、ウルトラマンの大逆点となります。スノーゴンはまた冷凍線を吐きますが、ブレスレットを盾に変えて防ぎます。
 ウルトラブレスレットって何⁉対オクスター戦で、沼の水を干上がらせたときもド肝を抜かれましたが、今回も『えーっ』です。この空想力!このデタラメ!石堂淑朗こそウルトラブレスレット最高の使い手です。土星から来たブラック星人と言われただけで思考停止してしまう私の貧脳ではついていけません。

夜を蹴ちらせ


 帰ってきたウルトラマン石堂淑朗選集5回目第36話「夜を蹴ちらせ」筧正典監督。あまり面白くない回です。カーミラ星から来たドラキュラスという知能の高い怪獣が出てきますが、昭和46年時点でもドラキュラ怪獣というアイデアに新味がありません。ドラキュラを宇宙人とすることがSF的新解釈だと言うなら、伝説のロマンを卑小化するだけです。
 今回のイラストも劇中の1シーンではなく、夜という一語から、開田裕治さんがキングレコードのBGM集のために描かれた夜の帰ってきたウルトラマンを思い出して描きました。

 ところで、日本におけるドラキュラの権威といえば、石堂淑朗さんと生涯にわたり親交があった種村季弘さんです。「夜を蹴ちらせ」をご覧になったら忌憚の無い言葉で酷評されたに違いありません。
 ブラム・ストーカーの小説「吸血鬼ドラキュラ」が出版されたのが、1897年。翻訳書が今でも入手出来ますが、原作本を読んでこと足れりということではなく、その後の舞台化映画化の歴史がドラキュラの全体像なのです。マントの襟を立てる着方とか教養のある紳士という現在では常識となっている設定は舞台や映画の演出でした。架空の貴族ながら、ハマープロによる映画の大ヒットで1968年にエリザベス女王から勲章をもらったという話も粋です。

 岸田森がドラキュラを演じた東宝映画「呪いの館 血を吸う眼」の公開日を調べたら、昭和46年6月16日。「帰ってきたウルトラマン」放送開始直後です。この映画には吸血鬼の妻役で桂木美加も出ています。両作の撮影時期は同時だったと想像できます。どちらも東宝系列のスタジオで撮影されています。MATの丘隊員役に桂木美加がキャスティングされた理由は、そのついでだったからではないか?あるいは、その逆か?

 世界の怪奇小説や伝説を蒐集して翻訳された種村季弘さんは、もちろん、日本の怪獣映画も鑑賞されていました。ウルトラマンについても定見がおありで、これは、どこまでも謎の存在でなければならないと断じておられました。
 人間的な感情を見せないこと。あるいは、高所から人類に道徳を説いてはならない。まず、べらべら喋ってはいけないし、故郷や家族構成を明かしてはならないと。    次回、スノーゴン。
プロフィール

ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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