浅倉威


 践祚まぢか!集中企画「平成ライダーの戦い」5回目、戦わなければ生き残れない「仮面ライダー龍騎」。「クウガ」「アギト」では現実世界に仮面ライダーが存在するシュミレーションを模索していたのですが、「龍騎」以降は仮面ライダーありきで世界設定が再構築されます。
 鏡の中の世界で13人の仮面ライダーが戦い、生き残った一人の願いが叶うというゲームのような非現実的な物語。宮内洋さんは「ライダー同士が戦いあうなんて認めない」と全面否定されていました。

 前二作においてはドラマ中に“仮面ライダー”の呼称が使われなかったのですが、3作目にして、ようやく主人公が仮面ライダーと呼ばれます。そのかわり、「龍騎」以後は主題歌の歌詞から“仮面ライダー”が消えます。
 主題歌を歌うのは松本梨香。仮面ライダーの主題歌を女の人が歌ったのは初めてです。メインライターは小林靖子さん。これも初の女流メインライターです。脚本は井上敏樹さんと交代で書かれています。小林さんが基本設定を拵えたからなのか、ヒロインがストーリーの中心に存在します。また、喫茶店の主人もおやっさんではなくおばさん(角替和枝)です。この流れで、藤林聖子さんの功績にも言及したいところですが、「龍騎」にかぎって藤林さんは関わっておられないようです。

 さて、登場する13人の仮面ライダーなのですが、誰一人「世界の平和」とか「人間の自由」といった理想を口にしません。「金」「名誉」「永遠の命」など、ごく個人的な欲望ばかりです。もともとライダーに選ばれたのは欠陥のある人間か狂気を帯びた者でした。そういう『バカ』でないと、このバトルゲームのルールが信用できないのです。

 その極めつけが、浅倉威です。あさくらたけし。たけしの名を継ぐ蛇の仮面ライダー。凶悪犯として収監されていましたが、独房で変身能力を獲得して脱走しました。はっきりした願いは無く、ただ、闘争本能のままに戦っていられれば満足という純粋に恐ろしいやつです。子供の頃から現在まで、気に入らないやつは殺してきました。はっきりした理由も無く、その時の気分で殺すのです。
 先代“たけし”藤岡弘は「仮面ライダーを冒瀆するもの」と激怒したそうです。宮内洋の盟友、長石多可男監督は、仮面ライダーの名を冠する者が悪人だとは思えず、本当はいいヤツという演出をしてしまいます。すると、また小林さんや井上さんが悪人に戻すので、浅倉威はさらに複雑で魅惑的なキャラクターになってゆきました。

 極悪ライダー浅倉とそれを演じた萩野崇に対しては、番組に多くの苦情が来たそうですが、実は一番人気がありました。視聴者の支持もさることながら、共演したほかのライダー俳優が憧れたと云います。男の理想の生き方ではあります。かと言って中途半端に感情移入しようとすると斥けられるのです。子供の頃、家に火をつけて家族を焼き殺しました。中学生くらいの頃ならそんな気持ちになることもあるので、ここまでなら共感も出来ます。しかし、浅倉は、この火事から弟が救出されたことを知ると、それを捜し出して殺します。理解するのが無理で、もう尊敬するしかなくなります。

 井上敏樹さんは、よく食事や料理の場面を書く人です。それでは、脱獄囚で浮浪者の浅倉は何を食って生きているのか?トカゲを焼いている場面がありました。そのへんの虫や草を食べているようです。とことん腹が減ったら土を食ってまぎらわす方法も知っています。一目置く客にはカップ焼きそばを出します。仮面ライダーの力があれば、豪勢な食品を奪うことも簡単なのですが、そういう気は回りません。戦うことに徹しているのです。格闘用の筋力や持久力をつけるために食べ物を考えるということもスポーツ的で軟弱な発想なのです。
 「龍騎」にはゴロちゃんという人物が登場します。弁護士ライダーゾルダの秘書兼用心棒。不良少年あがりで格闘技もマスターしているのですが、浅倉に勝てないのは、料理が得意という人間的弱みがあるからです。ゴロちゃんは本当に良いやつだったのですが、浅倉に殺されます。

 浅倉も最後は、警察に隠れ家をつきとめられ、狙撃隊に射殺されました。なんと、主人公・龍騎も最終回を待たずして死ぬのです。カードゲームの発想から始まった「仮面ライダー龍騎」は壮絶な終り方をしました。前作「アギト」との物語上の連続性はありませんが、人間が仮面ライダーの力を得たらどうなるか?という「アギト」の問いに対して「ろくなことにならない」というのが「龍騎」の答えです。現実的過ぎます。        つづく

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ヤモリ地獄


今回は木戸健吾さんのリクエストにお応えして、ザカゲスター第3話「怪盗紅ヤモリ追跡大作戦!」から、ヤモリ地獄の場です。詳細は前々回のコメント欄の木戸さんの解説をお読みください。

 カゲスターのネーミングの由来は「影法師」を「影・星」ともじっただけなのですが、相方の名前がなぜベルスターなのかが謎でした。
 後年知ったのですが、アメリカ開拓時代に実在した女アウトローの通り名でした。小説や映画に登場するときは、ビリー・ザ・キッド、あるいは快傑ハリマオのように針小棒大なエピソードが盛られます。
 無法者の名をヒロインに受け継がせるところに「ザカゲスター」の教条主義に逆らう心意気が伝わってきます。……よく、異色のヒーロー番組という言い方がなされますが、あの時代の作品はだいたい異色です。

 特撮イラストのリクエストはうれしいので、もっといただきたいと思います。あなたの思い出の場面を、まがまがしいイラストにしてさしあげます。

ΑGITΩ another


 改元目前!緊急企画「平成ライダーのあしあと」4回目。「仮面ライダーアギト」稲妻よりも疾く駆け抜けろ。
 第35話から登場する4人目の仮面ライダー。劇中固有の名称は無く、脚本には『木野アギト』とだけ書かれていたそうです。怪獣ハウスもそれに倣いますが、私個人としては“真アギト”と呼びたいほどです。

 変身者の木野薫はブラックジャック的な外科医。ついでにバイクの修理もしてくれます。武道の達人でもあるようで、その強さは圧倒的。単純な津上翔一や氷川誠はかんたんに尊敬してしまいます。ひねくれ野郎の葦原涼ですら「すげえな、あんた」と、この男としては最大級の絶賛とともに感服しました。ところが…風谷真魚や小沢澄子ら女登場人物には好かれず、かえって警戒されます。
 自分一人の腕で人間を守ると言い切り、薄く笑うイヤなやつ。木野薫という複雑な役を演じたのは菊池隆則。当時43歳。第一期シリーズの頃には中学生だったので、仮面ライダーは興味の対象にはなりませんでした。予備知識無しで役に入っていったことで新鮮さがありました。
 当時の「宇宙船」に菊池隆則のインタビューが載っていました。アメリカ留学して演技の勉強をしたという本格的な俳優さんなのですが、びっくりしたのは、あのジョー樋口の息子だったということです。レフェリーとして何十年も「1、2、3!」とマットを叩いていたら手のひらが固まってしまって箸や鉛筆が持てなくなったという…あのジョー樋口です。

 そして、木野アギトのデザインは出渕裕さん。商品化する予定が無いと言われて自由に描かれました。ソフビ化前提の先行3ライダーとは異質なスタイルです。出渕さんは思いを込めて『仮面ライダールデス』と勝手に名前をつけていたそうです。
 自由勝手に描かれたデザインなのですが、作品テーマには忠実過ぎるくらい沿っています。本当は触角にしたかったのでしょうが、額にはアギトの象徴である6本角がついています。歯牙と小さい羽根はアンノウンの特徴です。イラストを描くために映像を再確認したのですが、目は複眼ではなく単眼です。これは昆虫人間ではなく、バッタの天使なのです。

 バッタの天使???作品中で、神様とか天使とは明言されていませんが、「仮面ライダーアギト」は、仮面ライダーが神と戦う物語です。
 黒い神様がヒトを作ります。しかし、白い神様がヒトのDNAに進化するプログラムを仕込みました。それから何万年……ヒトがアギトに進化し始めます。神様に代わって、アギト化する兆候を見せたヒトを、天使が殺しに降りてきたのです。天使が動物の姿をしている理由は、ヒトが神に似せて作られたように、各種の動物昆虫等は、それぞれの天使を模した子なのです。
 この裏設定を知った上で、第1話から見直すと痛快です。怪人だと思ってブチ倒していたやつらが、実は天使。最終回は、神様に渾身のライダーキックを蹴り込んで大爆発させます。主要登場人物はアギトの謎を知らないままでした。

 「仮面ライダーアギト」は、神が人を試す古典劇の形式です。深刻な場面、荘厳な演出も見られるのですが、全体的な感想はホームドラマでした。食事の場面がやたら多く、太一とか尾室みたいな俗物や凡人が活き活きと記憶に残っています。葦原涼が、警視庁対策班に「手を引け」と忠告したとき、小沢澄子は「最後に勝つのは、ただの人間よ」と予言めいた口答えをしました。
 神とアギトと人間の戦い。本当に人間は勝ったのでしょうか?      つづく

 ここまでに登場した、仮面ライダーらしきもの…クウガ、翔一アギト、G3、G3-X、G4、G3マイルド、ギルス、木野アギト、雪菜アギト、可奈アギト。
 参考…戦士クウガ、ズ・バズー・バ、ゴ・バター・バ、V-1システム、G5。

ΑGITΩ


 ありがとう平成臨時企画「平成ライダーをふりかえって」3回目。目覚めよ、その魂!「仮面ライダーアギト」。クワガタの顎(あぎと)とラテン語のAGITO(覚醒)をかけた名前だそうです。三人の仮面ライダーの物語です(ただし、本編中に仮面ライダーという言葉は使われません)。

 津上翔一=アギト。前作の五代雄介も変り者でしたが、今作の主人公も不思議なヒーローです。家出少年を見つけて帰宅するように諭します。この行動は普通なのですが、少年が「なんとなく遠くへ行きたくなったんだ」と心情を話すと、「その気持ちが全然わからないなあ」と理解を示しません。そして、世界なんてどこへ行っても同じだという意味のことを言います。
 諦観ともいうべき真理なのですが、変身ヒーローの言葉ではありません。クウガの五代雄介は冒険を求めて地球を旅行することが生きがいでした。困った人ですが、子供番組の主人公ならスタンダードです。地球はおろか、進め!銀河の果て超えてと煽るのが特撮ヒーローではないでしょうか。

 では、津上翔一がふだん何をしているかというと、美杉教授の家に居候をして、料理、掃除、日曜大工、家庭菜園…もちろん、アンノウンが出たらオートバイで出動しますが、現金収入は0。清廉質実な生活ではあります。
 かといって、信念に基づいて生きているわけでもなかったようで…年長者の木野薫に「自分の人生を狭くしないほうがよい」と言われると、素直に聞きます。美杉家を出る決意をし、調理師学校時代の講師が開いたレストランに住み込み、1年間みっちり修行。そして、レストラン「アギト」を開店。これが最終回のラストシーンでした。こんな終りかたをする「仮面ライダー」は前代未聞です。

 氷川誠=G3。津上翔一がアギトになったことも、レストランを開いたことも成り行きまかせだったのに対して、氷川誠の戦いは強い意思と使命感に基づきます。職業は警察官なのですが、それよりも高い人間としての責任を果たそうとします。氷川誠は人間で、G3は強化服に過ぎないのです。毎回、体力と精神力と装置の能力の限界をふりきってアンノウンに挑みますが、いつも負けて、アギトに助けられます。
 真面目で優秀で、努力家であるだけに悩みます。アギトの正体が津上翔一だと知ると、さらに劣等感に苛まれます。

 主人公の引き立て役で損な役どころなのですが、G3のメカメカしい外観が男子の心をとらえました。専用バイク・ガードチェイサーに乗ると完璧なカッコよさです。G3‐Xにバージョンアップするとカッコよさは倍増。なにより、氷川誠役の要潤が婦女子の人気をかっさらいました。ああいう似顔絵の描きやすそうな顔が良いのでしょうか?(チッ)なお、地道にがんばっても成果が上がらない氷川誠のキャラクターは大人男子に共感されました。また、G3班はことあるごとに焼肉を食べに行きます。制作側のギャグのつもりだったのですが、当時、狂牛病の風評被害に泣いていた食肉協会から表彰されました。

 葦原涼=ギルス。アギト亜種。人工機械のG3と真逆。人間の中の獣性を解放して変身します。葦原涼の彼女は、ギルスに変身して戦う姿を見てしまうと「ついていけない」と言って別れます。この、あっさりした展開は新しいと思いました。昭和の梶原一騎劇画や東映任侠映画の女なら、危険であればこそ、ヒーローの戦いに積極的に協力し、身代わりになって死んだりします。(昭和のライダーガールは、来るなと言ってもシャシャリ出て、人質になるパターン。)
 葦原涼もまた、変身ヒーローらしからぬセリフを吐く男でした。陸上選手として期待されていたのに、ケガをして走れなくなり「夢が無くなった」とやけっぱちになる水原リサには「夢なんか無くても生きていける」と言います。子供番組のヒーローなら「夢を持て」とか「夢をあきらめるな」と言わなければなりません。普通に生きたらいいと言うのですが、葦原涼自身は野獣の本能が制御出来ない体質になってしまったため普通のコミュニティには入れません。

 その性質上、連携プレーができないので、アギトやG3とも共闘しません。メインストーリーから外れた位置で、生き方を模索しました。最後は町の小さなバイクショップのアルバイトに雇われます。店長役は中屋敷哲也(本物の仮面ライダー!)。子犬を拾って、ふところに入れるのが最終回のラストシーン。
 子犬をふところに入れて夕日の中をオートバイで走る…これは幸福感いっぱいです。夢なんか無くても生きていけそうです。私は犬がいないので猫で代用してみましたがうまくいきませんでした。背中に乗せて爪で引っ掛けてジャンパーを被せてはさみこんだら安定したのですが、この型で単車に乗っても、動物霊を背負って走っているようで幸福感はありません。

 葦原涼役の友井雄亮は、年明けてから芸能ニュースでよく名前を見ます。     つづく

脅威のライダー


 さようなら平成特別企画「平成ライダーをふり返る」2回目。キョクギン・サキザザ(グロンギ語で驚異のライダー)ゴ・(ゴ集団の)バター・バ(バッタ男?)。

 クウガのデザインは当初から評判が良くて、洗練された美しい姿でした。現在も高い人気があります。しかし、私は好きになれなかったのです。仮面ライダー復活の目的の一、リアリズムを追及するなら、古代戦士クウガの外見は、もっとプリミティブでワイルドであるはずです。五代雄介のCTスキャンを撮ったら、解剖したグロンギ怪人と生体構造が相似していたという描写がありました。裸足で褌の怪人でなければなりません。
 聞くところによると、仮面ライダーシリーズをリアルタイムで見ていない子供に玩具売場でチョイスされるライダーが、ストロンガーだったそうです。クウガの体色構成はストロンガーが参考になりました。ソフビ人形にしたとき折れやすい触角もストロンガー式の板状になりました。クワガタ戦士という設定は、この角を選択したあたりでこじつけられたのだと思います。また人形で表現しにくいマフラーはオミットされました。玩具売場原理で逆算して出来上がったデザインを評価するのはむづかしい……そもそも石森章太郎先生が、最初の仮面ライダーをデザインされたときは…とかグズグズぼやくおっさんどもの前に、赤いマフラーをなびかせて、オートバイを駆るバッタ男が登場しました。「おまえらが見たかったのはこれか」「そお!」

 未確認生命体41号ゴ・バター・バの中身の人はプロのトライアルレーサー成田亮。未確認生命体4号クウガに入っているのはお兄さんの成田匠。二人とも全日本チャンピオン、世界レベルのトップランカーです。ご兄弟で、神技としか思えないオートバイチェイスを見せてくれました。階段なんか駆け上るし、駐車場の自動車は飛び越えるし、前輪で逆立ちして後輪で蹴飛ばします。オートバイでこんなことが出来るのかとびっくりしました。最近は危険なアクションはCGで処理されています。特撮を否定するようなことを言いますがCGは実技の感動に負けます。お気づきのように、最近は、ライダーと言いながらあまりオートバイに乗りません。いつの間にか、TAIYOとかHONDAのコマーシャルが入らなくなりました。

 ゴ・バター・バは改心して正義の味方になるのかと昭和派は期待したのですが、「クウガ」はそんなに甘くありません。オートバイに乗ったバッタ怪人は大爆発して死にました。昔の栄光を断ち切るのかとシュンとしたら、古いライダーファンにやさしいところもあります。沢渡桜子の古代遺跡研究室が城南大学にあったり、カブトムシ怪人の必殺武器が電撃だったり、重箱の隅みたいなところでくすぐってきます。
 平成最後の正月休みに「仮面ライダークウガ」を見直していますが、本放送当時より楽しめます。あの頃はハラハラして観ていました。残酷な場面も多く、設定が複雑過ぎます。平成生まれの子供が拒絶したら、仮面ライダーは永遠に途絶えてしまうのです。ところが、その心配は余計で、平成キッズのお母さんがたが協力なサポーターになったのでした。        つづく
プロフィール

ハヌマーン&さとる

Author:ハヌマーン&さとる
怪獣本・特撮書籍の蒐集。

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